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とある快晴の日の昼下がり。私はかなり離れたところにある樹海に来ていた。

何度改良しようと努力しても一向に成果が見られない。そんな息が詰まるような空間から一時的に抜け出すべく、気分転換にいつもと違う場所へ来て気分転換を試みた。

日光の光と自身が放つ光が合い、目の前はかなり眩しく感じられたがかなり深いところまで来てしまった為かいつもよりマシだ。

地面に散乱した枝や落ち葉、はたまた折れ曲がった木など、普通の人間ならば通ろうと思うことすら無いだろう。


かなり茂みが荒れてきており、羽や服に引っかかるようになってきた。これでは気分転換すらままならない。仕方なく帰ろうと思った矢先の出来事だ。


ギィー、、ギギ、、


何かが軋むような不愉快な音が聞こえてくる。好奇心に駆られた私は音の音源を探し、樹海内を探っていた。すると


「、、これは、人間の遺体、?」


太い木の幹から伸びている梢の部分にロープがかかり、そのロープを首に吊るしているようだ。先程の音はこのロープの重さで木が軋む音だったようだ。

人間はこのような遺体を「首吊り遺体」や「自殺体」などと呼んでいるのだそう。言葉には聞いていたが直視するのは初めてだ。

女性のものだろうか。背丈が低く、若いように見える。20歳にも満たない子供だろう。こんなに小さな子供が自信を死に追いやるなど、なんて惨いのだろうか。

血液が脳に回らないのか顔が赤紫で、首も閉まっている。そして眼球、下が飛び出し、涎などの体液も垂れ流しの状態だ。人間なら山になるほど消し炭にした私でも見るに耐えることが出来なさそうだ。

こういうのを「グロい」などと人間は言葉を括り付けるのだろうか。そんな無駄なことを考えている自分に呆れながらも更に好奇心が増してくる。

また翌日、ここへ来よう。流石に夜は少し怖い。



翌日。

日が昇ると私は仕事のフリをしてあの遺体を見に行くことにした。虫の寄り付き具合や腐敗状況からしても死に至ったのはかなり最近だろう。

改めてあの遺体の前に立つとやはり刺激的だ。すると昨日は気が付かなかったが彼女の手には何かが握られているようだ。

紙、のようなものだ。まだ新しい。私が来る前にここに人が来て握らせたという可能性は低い。ならこれは彼女の遺書のようなものだろうか。


『これを読んでいる名前も知らない貴方へ

これを読んでいるということは私は恐らく天へ旅立った後でしょう。

名前も知らない貴方、厚かましいことは承知ですがどうか最後までお読み下さい。

私はいつも人に囲まれ生きてきました。家族、友人、親戚、、ずっと誰かに頼られ、頼り続けていた人生でした。私の人生はいつ以下なる時でも狂いはありませんでした。


しかしながら、人生はそんなに簡単ではありませんでした。私はある日を境に全てが変わり果ててしまいました。

私が愛していた男性が殺されました。

殺したのは天使。あの人は私を守るために光となって消えてしまったのです。どんなに地盤が固くても弱いところを削られると一瞬で崩れてしまうのです。それを15歳ながらに痛感しました。

その時はどんなに励まされても、私には響きませんでした。ただとにかく辛く、苦しく、もういっそ消えてしまいたい想いでした。

ただの自分語りですが、私はこのような理由で首を吊ります。どんなに頑張ってもこの苦しみからは抜け出せません。ならばあの人の所へ行きたい。


これを読んでいる貴方、どうか大切な人と幸せな人生を送って下さい。』


遺書にはそう書かれていた。あまりに乱雑な字で、彼女がどれだけ追い詰められていたかが分かる。しかし天使に愛するものを奪われ、そして遺体の第一発見者が私だとは、、運がない子だ。

心做しか、この遺体の顔も私に向かって睨みつけているようにも見える。


『どうか大切な人と幸せな人生を送って下さい』

そう書かれていたが、私に大切な人と呼べる存在は居ない。この子の願いは叶わなさそうだ。せっかくだからどこか人目が着くところに置いておこう。それにしても人間の絶望は声や表情のみで判断していたが、彼女の文字の絶望っぷりは読み手の私にも感じられた。これが人間の絶望なのだと実感する。


この事は2人には秘密にしておこう。言ってもどうせ「だから?」しか帰ってこないだろうしね。


そう思って私はこの遺体をロープに付けたまま、人目が着くような樹海の中にそっと置いた。こういう時は手を合わせるんだっけ。

私は意味もなく、遺体に手を合わせた後、翼を広げ空へと戻った。

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