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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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 寝室に入るとオレンジ色の西日が窓から差し込み、なんとも卑猥な雰囲気を纏っているように見えた。

 二人並んでベッドに腰を下ろすと、松田くんは私の頭を右手で抱えゆっくりとベッドに私の背をつけた。下から見上げる松田くんを見てハッと我に帰り、自分はセカンドバージンな事を思い出してしまった。



(ど、どうしよう……今更断れないし……でも痛いかもしれないし……)



「あ、あの、わ、私、そ、その……」



「どうしました?」



「せ、せ、セカンドバージンなのっ!!!」



 勇気を振り絞り自分はセカンドバージンだと打ち明けたら松田くんは最初キョトンとした顔を見せ、直ぐに満面の笑みで「真紀が蕩けちゃうくらい優しく抱きますから」と私の額にチュッと軽くキスをした。



 それがすごく私の心を軽くして、安心させてくれた。



 緊張していた私を言葉の通りトロトロに蕩けさせ、ほぐすように全身にキスを落とし、私は完全に身体から力が抜け全てを松田くんに委ねた。



「真紀っ……くっ……」



「あっ……んッ、ま、つだくん……」



 何度も何度も私の名前を呼ぶ松田くんに何度も何度も私の心臓はドキン、ドキンと反応し途中からは何が何だか分からなくなるほど松田くんの余裕のない声に、熱く汗ばんだ肌に、グズズクに私は蕩け果てた。



 いつの間にか窓の外は暗くなり、少し視界が悪くなり助かった。

 これがいわゆる賢者モードってやつなのだろうか。冷静になると異常に恥ずかしくて松田くんの顔が見られない。布団に潜り込む。



「真紀、大丈夫?」



「ん、大丈夫」



「水持ってくるから待ってて下さい」



 松田くんが寝室から出て行った隙に急いで脱いだ、いや、脱がされた服を着直す。

 久しぶりすぎて痛いと思っていたのは考えすぎだったみたいで、痛みなんて一切なかった。むしろ気持ちが良い、それしかなく、もしかしたら松田くんがテクニシャンだっただけかもしれないが……



(そういえば初めてキスされたときも腰が抜けるかと思ったのよね)



 服を着終わると同時に寝室のドアが開きギリギリセーフで松田くんに裸を見られずにすみホッと胸を撫で下ろす。

 松田くんはまだ上半身裸だがいつの間にかスウェットは履いていたので、なんて早技だと感心してしまった。

 さっきは松田くんに食らい付いていくのに夢中でよく見ていなかったがやっぱり松田は引き締まった身体に程よい筋肉……

 いつものスーツ姿からは想像できない肉体美につい目がいってしまう。



「あの……水飲みます?」



「っあ、ごめん、飲みます飲みます!」



 隣に座った松田くんから水の入ったコップを受け取りゴクンと一口飲む。

 カラカラの喉に染み渡るように水が喉を通り潤いを取り戻した。

 ベッド横のサイドテーブルに置いてある時計を見ると夕方の六時。



「暗くなったと思ったらもう六時なのね」



「ですね~夜ご飯でまだ時間あるし……」



「え? ひゃあっ!」



 右耳をカプっと甘噛みされ変な声が出た。



「ちょっと! んんっ……」



 クイッと顎を上げられあっという間に唇を奪われた。まだ自分に余韻が残っていたのかキスをされただけでお腹の底がズクンと疼いてくる。



「真紀が可愛すぎて我慢できない……」



「えっ、ちょっと……あッ……」



 せっかく着直した服もあっという間に脱がされ下着姿になってしまった。グッと布団を引き寄せ身体を隠すも「見せて」と布団を剥ぎ取られ肌が露わになる。



「綺麗です……」



「っつ……見ないでよ……」



「もう一回全部見ちゃってますけどね」



「んなっ……」



 私の唇に落とされた松田くんの柔らかい唇がまたも蕩けてしまうほど気持ちが良い。

 松田の首に腕を回し自ら松田くんを求めてしまう。



「ねぇ、それ分かっててやってます? もう止められないですよ」



「……止めなくて……いい」



 お互いが吸い寄せられるように何度もキスをし、もう一度私達は身体を重ねた。




 ぼんやりと意識が戻る。いつの間にか寝てしまっていたのかゆっくりと瞼を開くと、カーテンの隙間からの月明かりが私たちを照らし、松田くんの表情がよく見えた。とても穏やかな顔で私の頭を撫でながら見つめていた。

 好き……その気持ちが更に大きく膨らんだ。



「起きました? もう八時になっちゃいました」



「……お腹すいた」



「ですね! 夜ご飯作ってますからゆっくり来てください」



 お言葉に甘えてゆっくり服を着てリビングに顔を出すと、もう既にいい匂いが鼻に通り抜けお腹がグゥ~っと鳴ってしまった。



「いい匂い! 何作ってるの~?」



「これはサイコロステーキ焼いてます、あとは野菜たっぷり味噌汁を煮込み中なのと、ご飯は急速炊飯中」



「最高ですっ!」



 ステーキが楽しみすぎてルンルンでダイニングテーブルを拭き、箸を置き、グラスを用意した。

「出来ましたよ~」と大根おろしがたっぷりのったサイコロステーキがテーブルに運ばれてきた。艶々の白米に野菜がたっぷり入ったお味噌汁。

 早く食べたくてまたお腹がグゥ~と鳴る。



「ははは、真紀のお腹の音可愛すぎ」



「聞こえた!? 仕方ないじゃない! 美味しそうなんだもん」



「さ、食べましょう」



 向かい合いテーブルに座り頂きますと手を合わせ、まずはお味噌汁、ホッと胃が温まり野菜の優しい味が口いっぱいに広がる。



「本当美味しい!」



「良かったです、お代わりありますから」



 わーい! なんて喜んでいたらピンポン、ピンポンと連続でインターホンが鳴る。嫌な予感。



「……誠」



(え……?)



 


 インターホンの画面に大きく誠が写り「開けて~」と言っているのが聞こえる。



 ――嫌な予感が当たった。



「開けてあげなよ」



 本当は嫌だけど……



「すいません……」



 松田くんが玄関に向かいドアを開けるとドタドタと勢い良く誠が入ってくる。



「あー!! 二人でご飯なんて食べちゃって! ずるい! 私も食べたいっ!」



「おい、ったく何勝手に入ってんだよ」



「いつも勝手に入ってるでしょ~、ねぇ私にもご飯ちょーだいっ」



「駄目だ、今日は彼女が来てるから帰ってくれ」



 誠は私の頭のてっぺんから爪先までジロリと見ると「初めまして誠です、大雅がお世話になってるみたいで」と明らかにワントーン低い声でぶっきらぼうに自己紹介をした。

 私も慌てて「水野真紀です」と名前だけ名乗ったがスルーされ、松田くんにべったりと寄り添い「私も一緒にご飯食べたい~」と猫のように甘えている。



 すいません、と私にアイコンタクトで訴えてくる松田くんに「一緒に食べましょう」と誠を受け入れた。



 ローテーブルに誠の分のご飯を運び三人でもう一度食べ直す。なんだか気まずいと感じているのは私だけだろうか……



「誠、今日はそれ食べたら帰れよ?」



「えー! 私今日泊まる気満々で来たんですけど?」



「今日は駄目、真紀が泊まるから」



 なんとなく、なんかすいませんと言う気持ちになる。



「三人で寝れば良いじゃん! ね? 真紀さんもいいですよね?」



 急に会話を振られ、いつの間にか私の事を真紀さんと呼んでいる誠に呆気を取られる。



「あー……そしたら私帰るよ?」



「は!? それは駄目ですよ! 誠が帰れ!」



「……酷いじゃん、今日は一緒にいて欲しかったのに……」



 ……!? いやもう彼女ですか? とツッコミたくなるような言い草に驚きと動揺を隠せない。

 男と分かっていながらも見た目は完全に可愛らしい女性なのでなんだか浮気現場を目撃しているような感じだ。



「……じゃあ今日は三人で」



 ガッと目を見開き冗談じゃない! と言いたげな驚いた顔で松田くんは私を見る。

 それに気づいていないのか「やった~! 真紀さんありがとう~」と大喜びで誠はご飯を食べ始めた。



 食べ終わったお皿は誠がお邪魔しちゃったお礼と言いながら洗ってくれている。

「ちょっと真紀来て」と松田くんに小声で呼ばれたので後をついていき寝室に入るとグイッと抱き寄せられた。



「も~、今日の夜は朝までイチャイチャする予定だったのに……」



「仕方ないよ、誠さんは大事な家族みたいな人でしょう?」



「そうだけど……じゃあちょっと充電させて?」



 ギュウッと抱きしめ合い静かにキスをした。

 ゆっくりと唇が離れてなんだか寂しい。



「……真紀の今の顔めっちゃエロい……」



「っえ!? 何言ってんのよ!」



「あー足りない」



 ――私もだ。



「もう! 戻るよ!」



 残念そうに肩を落としながらリビングに戻ると既に皿を洗い終えた誠がソファーにしかめっ面で座っていた。



「大雅、一緒にお風呂入っちゃおうよ」



 松田くんの有無を聞かずに腕を引っ張りお風呂場に連れ去られて行った。一人リビングに取り残され、フゥと一息ついてソファーに倒れ込んだ。



(多分誠さんは私に松田くんを取られたくなくて必死なのかもな……)



 女の勘って言うやつは大体当たる。

 でも私だって松田くんの事が好きだ。けれど誠は松田にとって家族同然、なんとか上手く付き合っていきたいと思ってはいるけど……。



(二人でお風呂って……なんか変な想像しちゃうよ……)

ここは会社なので求愛禁止です〜素直になれないアラサーなのに、年下イケメンに溺愛されてます〜

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