ずっとずっと、胸が苦しい
私以外にそんな顔しないでよ
距離が近い。あなたは私のものなのに
自分でも信じられない嫉妬、独占欲
いつか溢れそうで、怖くて、最近は俯きがちになってしまった
きっと今の自分はビターに心配ばかりかけている
それなのに、気にかけてくれるのが嬉しいなんて、いつから自分はこんな人間になったのだろう
知って欲しい。気づいて欲しい
私を見て。あなたの1番になりたいだけなのに
ーー
閉店後のカフェ
この時間はいつも2人だけの空間
でも今日はどうしても気分が晴れなくて、カフェの片隅で座っていた
ビ「ショコラ」
聞きたい声。見たい姿
すぐそこにいる好きな人
ビ「最近元気がない」
ビ「心配だよ」
ビ「無理せずカフェを休むのも_」
シ「大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」
ビ「…ショコラ」
1度だけ、この恋を諦めようと、他の人との関係を考えてみたことがある
その人はいつも私を求めてくれたし、私に愛の言葉をくれた
でも彼から向けられる好意は、目に見えて分かる下心ばかり
キスをしたい。手を繋ぎたい
出会ってすぐ、体の関係を求められた
男性だし、そういう気持ちがあるのは理解できる。すぐに切り捨てては何も変わらない
“半年間”自分にルールを着せた
その中で手を繋ぐことはあっても、キスをしたり体の関係をもったことはない
深くいってハグまで
好きでもない人に性的な目を向けられて、体に触れる時にいやらしい手つきをされるのは地獄のような時間だった
飛び出しそうな拳を握りしめ、やっとの思いで半年間を耐え抜いた
ここはやはりというところで、何かと理由をつけてそういった行為を断っていると、相手の不満はたまっていく
無理やり襲われそうになった時には一撃くらわしてしまったが自業自得だろう
でも、もし相手がビターだったら?
この子に求められるのなら何でも差し出したいと思ってしまった
結局は逆効果。気持ちを加速させただけだった
むしろそういう目で私を見てほしい
そう思ってしまった時点で、この気持ちを消す方法なんて最初からなかったのだ
ーー
シ「ねぇビター」
シ「あなたに好きな人ができた時、その恋が叶わないなら諦める?」
ビ「…好きな人が幸せになれるなら、僕は身を引くよ」
シ「そう…、あなたらしい意見ね」
ビ「なんで、そんなこと聞くの?」
シ「…脈がない相手にずっと焦がれた想いを抱えたままなのもどうかと思って」
ビ「……」
ビ「だったら…僕でいいじゃん」
シ「……………は?」
ビターがぽつりと呟いた言葉に、私は顔を上げた
久しぶりに見たその顔は、みるみるうちに紅く染まっていく
ビ「その人より、僕の方がショコラのこと知ってるし」
ビ「…..好き、だから…」
耳まで真っ赤にしながら紡いでいく言葉は徐々に小さくなっていく
ビ「だから、…」
シ《ビターのこんな顔、初めて見た》
だんだんと私の体温も上がっていく気がする
ずっと悩んで、勝手に傷ついて、あんなに不安だった気持ちが、たった一瞬でこんな温かいものに変わるなんて
ビ「ショコラの、恋人に、なりたいで す」
シ「っ〜!?」ぶわっ
ビ「////」
シ「わ、私で、いいの?」
ビターは黙って、こくりと頷いた
本当に、これは現実かしら
_いや、そんなこと考えるなんて、ビターに失礼よね
ちゃんとビターと想いが通じていたのに、ずっと自分から心を閉ざしていたの?
嬉しさと、今まで溜めてきた気持ちが一気に上がってきて、視界が少し滲んだ
シ「…ばかね、私」
そう呟くと、ビターが不安そうに顔を上げた
ビ「え…..?」
私は小さく笑って、少し視線を逸らした
シ「ずっと脈がないと思っていたわ」
今ビターはきっと驚いた顔をしているだろう
シ「ただの姉で、家族で…..それ以上の関係なんてないんだって言い聞かせて、諦めていた」
シ「だから…、あなたがそんな顔するなんて想像もしていなかった」
そう言いながら視線を戻す。すっかり赤みの引いたいつもの顔
沈黙の中で、ビターがそっと私の手を握りしめた
ビ「ごめんね。たくさん、ショコラを傷つけた」
ビ「……離れたり、しないよ」
ビ「ずっとショコラの近くにいたい」
ーー誰よりも。
シ「…そう」
シ「じゃあ、お願いしようかしら」
ビ「…うん」
いつも通りの穏やかで、でも幸せそうな、そんな笑顔
その顔が、どうしようもなく愛おしくて
すれ違って、怖がって、遠回りして
たくさんの道を歩いてたどり着いた距離
案外、悪くないわね
私はそっとビターの手を握り返した
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