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イーサン・クロウは、
前日の事を考えないようにしていた。
考えたところで、
この施設は変わらない。
町も変わらない。
変わるのは、気付いてしまった人間だけだ。
その日の搬入は、 黒い袋が一つだけだった。
持ち上げた瞬間、軽すぎると分かった。
開けると、中身は骨だらけ。
洗浄済み。
種類ごとに分けられており、
折れたものは綺麗に切り揃えられている。
――途中まで、誰かがやっている
同僚のマークは、ちらりと見ただけで視線を
逸らした。
「昔はな、
こういうの来なかった。」
「グレイがいた頃は 」
イーサンは何を聞いても、
それ以上は話さない。
ただ名前を口にしただけだった。
それが人なのかも、
役職なのかも、
もう存在しない何かなのかも分からない。
作業の終わり、
イーサンは冷蔵庫の奥で
小さなタグを見つけた。
白いプラスチック。
黒い数字。
昨日ラジオで流れていた失踪者の番号と、
一致していた。
偶然じゃない。
すでにされていたんだ。
イーサンはタグの元の場所に戻し、
冷蔵庫を閉めた。
この施設は、
死体を処理する場所ではない。
「いなくなった事」にするための場所だ。
帰り際、
入り口のチェックリスト
見慣れない署名が増えているのに気付いた。
手書きの名前。
――g. gray
イーサンは、それを消さなかった。
この町では、
名前は消えるが、
役割だけが残るからだ。