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三葉 (meiru)
第一話 お別れと、新しい街
「らぴす、向こうに行っても元気でな! 勉強も運動も、手ぇ抜いたらあかんで!」
「わかってる。お前らこそ、俺がいないからって部活サボるなよ」
中学の卒業式が終わり、春休みの風が吹き抜ける関西の駅のホーム。白ノ瀬らぴすは、部活の仲間たちから手荒い見送りを受けていた。
父親の仕事の都合で、高校からは縁もゆかりもない関東の街へと引っ越すことが決まっていた。
何をやらせても人並み以上にできてしまうらぴすにとって、地元を離れる寂しさはあったものの、新しい環境への不安はそれほどなかった。
(まぁ、向こうに行ってもやることは変わらない。適当に勉強して、適当にスポーツして、退屈しないように過ごすだけ。)
新幹線に揺られながら、らぴすは窓の外を流れる景色を眺めていた。
自分の器用さに少しだけ退屈さを感じていた彼は、この時まだ知る由もなかった。引っ越し先の街で、自分の常識やペースを木っ端微塵に掻き乱す、とんでもなくおっちょこちょいな男の子と出会うことになるなんて。
荷解きが終わった新しい部屋で、らぴすは買ってもらったばかりの新しい制服に袖を通してみる。
鏡に映る自分を見て、ぽつりと言葉を溢した。
「……関東の奴らって、やっぱり標準語なんよな。俺の言葉、通じるんかな。 」
ほんの少しの、本当に少しだけの緊張を胸に、らぴすは新しい手帳の「入学式」の文字を見つめていた。
しおんside
「お母さん! 俺のローファーどこ!? あと、制服のネクタイが上手く結べないんだけど!」
「もう、しおん! 自分のことでしょ、落ち着きなさい!」
同じ頃、関東の住宅街にある紫桜の家では、朝からちょっとした嵐が起きていた。
紫桜しおんは、生まれつきの「おっちょこちょい」だった。何もないところで転ぶのは日常茶飯事、買い物を頼まれれば必ず一つは買い忘れる。
そんなしおんにとって、高校入学という一大イベントは、期待よりも恐怖の方が勝っていた。
「高校生になったら、俺、絶対にカッコいい大人になるんだ。自分のことは自分で完璧にできる、クールな男になるの!」
鏡の前で、不恰好に曲がったネクタイを引っ張りながら、しおんはそう言った。
中学時代は周りの友達に助けられてばかりだった。だからこそ、高校では「しっかりした俺」をデビューさせるつもり満々だったのである。
入学式の前日。しおんは念入りにリュックの中身を確認した。
教科書、提出書類、ハンカチ。よし、完璧。
「ふふん、これで明日、忘れ物で恥をかくことは絶対にないね!」
満足げに笑い、ベッドに飛び込むしおん。
しかし、彼は気づいていなかった。机の上にポツンと取り残された、お気に入りのペンギン柄の筆箱の存在に。
四月。桜の花びらが舞い散る中、二人はそれぞれの思いを胸に、同じ高校の門をくぐった。
掲示板に張り出されたクラス分け。
「1年3組、1年3組……あ、あった!」と自分の名前を見つけて喜ぶしおんのすぐ後ろに、「……3組か」と静かに名前を確認するらぴすが立っていた。この時はまだ、お互いの顔も知らない。
教室に入り、指定された席に座る。
偶然にも、二人の席は窓際の一番後ろとその隣だった。
「ふぅ……よし、席に着くまで一回も転ばなかったぞ。幸先いいかも!」
しおんは胸を撫で下ろし、前の席の男子が話しかけてくれたので、さっそく笑顔で応じた。
「あ、俺? 俺は紫桜しおん。よろしくね! ……うん、高校生活がんばろうね。あ、そうだ、ちょっと待ってね、今連絡先メモするから……」
そう言って、しおんは意気揚々とリュックを開けた。
ガサゴソと中身を漁る。教科書、書類、ハンカチ……。
「……あれ?」
いくら手を突っ込んでも、目的の長方形の物体に触れない。
リュックの底までひっくり返さんばかりに探すが、入っているのは空気だけだった。
(嘘……。筆箱、ない。俺、筆箱忘れた……!?)
頭の中が真っ白になる。
クールな高校生デビューどころか、初日の最初の時間に筆記用具を忘れるという、人生最大のピンチ。周りの席の生徒たちが楽しそうに話している中、しおんはみるみるうちに顔を青ざめさせ、机に突っ伏した。
「終わった……俺の高校生活、初日から終わった……」
今にもシクシクと泣き出しそうな、隣の席の頼りない男の子。
その姿を、机に頬杖をつきながら
「なんやこいつ……」
と眺めていたらぴすは、呆れ半分、放っておけない気持ち半分で、カバンから自分の筆箱を取り出した。
「しゃあないな。これ使って。俺、シャーペン3本持ってるから一本貸す。」
変なとこで終わってしまい
すみませn(((((((殴
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