テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
300
さかな
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
Hayato × Jinto
Side.J
最近なにやら視線を感じることが多い。
例えば、メイク中だとか、 楽屋で一息をつている時だったり。
視線に気づいて当たりを見回してみても、 その眼とめは合わない。
ただ、見られている。という確信があるだけ。
人からジロジロと見られるのは得意ではない。
なにか自分が”普通”から外れているのではないか?と不安になるからだ。
なのに俺はこの視線が嫌いではない。
J「おはようございます」
ス「おはようございます〜!
みなさん30分後には揃うそうです」
J「じゃあセッティングとか手伝います」
たまたま前に仕事が入っていなかった俺が必然的に収録現場に一番最初に着いて、段取りを確認しながら収録の準備をはじめた。
YouTube撮影はテレビ収録などと違いそこまでしっかりとしたヘアメイク等も無く、時間を持て余してしまったのでイヤホンをつけてプレイリストを再生して目を閉じる。
うっすらとモヤのかかる視界に、今の俺より小さい男の子がいる。なんだろう。泣いているのかな。
まいご?怖くないよ。
いや、お兄さんもここがどこかわからないけど…。
ダンスの練習をしていたの?
実はね、お兄さんもダンスをやってるんだ。
君と同じ、昔みんなに夢を笑われて、それがすごく悔しくて…。
でもね、いま大きなステージでたくさんの光を浴びて踊ってるよ。
そこに辿り着くまで、すごく大変だったんだ。
でも…やって来たことは間違いじゃなかったって、肯定してくれる仲間や応援してくれる人がいる。
きみは何になりたい?
…できるよ。なれる。大丈夫。
だっておまえは
S「 じんと
そろそろ撮影だって … いけるか?」
聞きなれた声がして、目が覚めた。
時計を見ると収録予定から20分すぎた頃で、思った以上に眠っていたみたいだ。
J「…あ、ごめん。待たせた?」
S「いや、おれらも到着遅れてさ。
いま舜太がヘアメしてもらってて
そろそろ起きといた方がいいかと思って…」
と言いながら勇斗はおれにティッシュの箱を差し出してくる。おれは意味がわからなくて、きょとんと勇斗を見つめることしか出来ない。
なんで、そんな泣きそうな顔してんだこいつ。
S「泣くなよ、仁人」
俺がなかなか受け取らないからか、自ら数枚出してポンポンと目元を叩かれた。
なるほど、泣いていたのは俺なのか。
J「なんか、懐かしい夢?みた」
S「…鹿児島の実家の夢とか?」
J「あー…そんな感じ」
そんな感じってなんだよ。と笑いながら隼人は離れていく。
確かに他人事すぎたなって俺も笑ってしまった。
夢って起きたばかりは覚えてたりするのに、口に出した途端泡のように消えてしまうのは何なんだろう。
涙が出ていたとはいえ、メイクが落ちるレベルでは無かったのでパウダーだけ軽く直してもらって撮影に挑んだ。
収録は順調に終わり、今日は全員で車に乗って帰れるようだ。座席は柔太朗の隣にすわろうと手前に座るつもりが、後部座席から伸びてきた腕に引っ張られ強制的に席が決められた。
俺はバランスを崩してまあまあな勢いで座り込んだが、引っ張った張本人はしてやったり顔だ。
はらたつな。
J「なんですか?勇斗くん?」
S「いーえ?仁人くんが俺の隣がいいかなって」
J「絶対逆だろ」
俺が笑うと、否定も肯定もせず少し目を伏せ穏やかに笑うからおかしい。
そんな顔みせるの、絶対おれ相手じゃないだろ。
まちがってる。って言ってやりたいのに前に座る3人が騒がしいからって理由で何も言えなかった。
そこからは仕事の話を二人でして、真剣になると声のトーンが下がるせいでお互いの声が聞こえずらく自然と肩が触れ合うほどの近さになっていた。
話し終わって、少し離れようとした時ふいに手を繋がれ、びくりとか肩がはねる。
J「なっ…」
S「しーっ」
無理やりあたまを肩に持っていかれ、ドッドッと心拍数が上がるのがわかる。どうしよう。
そのタイミングで前に座っていた舜太がこちらを振り返った。
Sy「後ろ静かじゃない?」
S「あー、仁人寝ちゃった」
D「まじ?疲れとってんなあ」
Jy「じゃあ、仁ちゃん最後に送った方がいいね」
D「枕係の勇斗4番目な!」
S「えーーまじかよー」
Sy「残念だね(笑)まあおれ後でもいいけど…」
S「…いや、舜太も疲れてるだろ。
俺明日ちょっとゆっくりだしい良いよ」
勝手に送る順番が決められていくのを、おれは寝たフリをしながら聞く。
…いや、なんで寝たフリさせられてんだ。
べつに眠くなんか……
あ、また視界が霞んでる。
おれは結局寝てしまったのか。
そして、今回はさっきより少し背の高い男の子。
また泣いてるのかと思ったが涙は出ていなかった。
キミはどうしたの?
人との別れが怖いの?
あー…それすごくわかる、な。
ずっと一緒だと思っていた人が離れて行く虚しさ。
なんでココじゃだめなの?ってさ…。
キミの気持ちを100%は共感はできないけど、
同じような経験をしたから…。
その気持ちは無くならないし偶に思い出すけど
でも人間って前に進めるもんだよ。ね。
そうでしょう?
J「 はやと … 」
S「おはよう、じんと」
顔に布が当たる感触で目が覚め、微睡みのなか暖かい視線を元を辿ると勇斗がいた。
また泣いていたんだ、と思うと恥ずかしいというか情けないというか。でも勇斗はこういう時にいじってこないから良い。
S「また懐かしい夢?」
J「いや……」
S「?」
J「わすれた」
勇斗は、この一瞬で?なんて笑うけど、覚えてないものは覚えてない。懐かしいような気もしなかった。
J「てか、その目やめろ」
S「ばれてる?」
その言葉の意味は、視線のことなのか、はたまた…
J「…それだけじゃ、伝わんねぇよ」
S「ごめん」
J「お前ってそんなに弱かったっけ?」
S「そうだよ。おれ、よえーの。」
J「うん」
S「仁人」
J「はい」
S「結婚しよう」
J「ばか」
俺たちはグループの最年長とリーダーで
俺たちはアイドルだ。
そして性別も一緒で
この二人を祝福してくれる人は少ない。
守ってくれる法律もない。
でも俺たちはそこまで弱くない。
ばかだけど。大丈夫。
差し出された指輪を受け取って、頷いた。
もう視界が歪んで何も見えないけど、未来は真っ暗じゃないのかもしれない。
〜
J「てかマネージャーは?」
目を覚ましたときから勇斗の家の前に着いていてメンバーが全員降りているのは気付いていたが、マネージャーが居ないのには今気づいた。
S「俺が頼んでちょっと外れてもらってる」
J「おい、マネージャーも疲れてんだから…」
S「向こうから提案してくれたから、甘えちった」
多忙を極める俺たちがオフが被る日も少なく、ふたりの時間が少ないのを勇斗がマネージャーに零していたらしい。
うちの会社の人間は勇斗に甘い。
J「だから最近マネージャーからもやけに視線を感じるわけだ」
S「だっておまえ、意外と乙女だからタイミングが難しいんだって」
J「はあ?んなこと…いや、うん、王道プロポーズとか憧れるけど」
S「オシャレなホテルとかいく時間なくてごめんな」
ちょっと不貞腐れながら、王道シチュエーションをあげていく勇斗がおもしろい。
たぶん勇斗もそういうのしたかったタイプだ。
J「10年後、記念日に連れていって?」
S「俺らの夢が全部かなったら 、仁人の夢全部叶えるから」
10年前のおれへ。
諦めなくていい、捨てなくていい、ぜんぶ叶うよ。