TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

その頃、同時刻 杏庵丁ー

法明和尚 四十歳

「法明和尚お師匠…、呪いが解けています!!」

林杏と鈴玉の部屋にいた水元が、部屋の外にいる俺に声を掛けた。

タタタタタタタッ!!

俺が部屋に入ると、林杏と鈴玉の体にあった浮き上がっていた文字がななり、骨化していた腕も元通りになっていた。

「江流が、がしゃどくろを倒したのでしょうか…。」

「式神を持たせて正解だったな。水元、聖水と布を持って来てくれ。体を清める。」

「分かりました!!」

水元はそう言って、部屋を出て行った。

おかしい。

牛魔王の血を飲んだがしゃどくろが簡単に倒せるのか…。

それに、闘技場から禍々しい妖気を感じる。

何かが起ころうとしている。

「和尚。」

天狗のお面をした鴉天狗が現れた。

「鴉(からす)、どうかしたのか。」

鴉は俺の式神で、式神札から勝手に出て来る。

「妖と人ならざる者がここに向かって来ている。和尚に用があるみたいだが、どうする。」

俺は錫杖を手に取り窓から外に飛び出た。

「法明和尚お師匠!?ど、どうかしましたか!?」

「水元!!そこから動くなよ。」

俺がそう言うと、金髪のふわふわな髪を靡かせた女が現れた。

「この女、かなりの強者だぞ和尚。」

「分かってる。」

俺は錫杖を構え女に尋ねた。

「何にしにここに来た?目的はなんだ?」

「女を渡して貰う。」

女はそう言って、太刀を構え振り下ろした。

ドゴォォォーン!!

振り下ろされた瞬間、店に向かって地割が起きた。

俺は札を素早くばら撒き指を動かした。

「封!!」

そう言うと、水元達のいる店全体に結界が張られ攻撃を防いだ。

「隊長ー、お待たせしました。」

女の隣に金髪の男が現れた。

「風鈴、女を連れて来い。」

「女?あー、鱗青の女ね。毘沙門天様の命令?」

「分かってて聞いてるだろ、お前。」

「まぁねー。了解しました。」

タッ!!

風鈴は一瞬にして結界の目の前まで距離を詰めた。

鴉が風を操り風鈴を結界から引き剥がすが、風鈴はビクともしなかった。

「あ、これさっき見た式神と一緒か。鴉天狗を従わせてるんだー。さすが三蔵のお師匠だねー。」

三蔵…?

「お前、何で三蔵の事を知ってる。」

「さっきまで一緒だったからね。がしゃどくろの呪いが解けたでしょ?あれ、三蔵の仕業だから。」

がしゃどくろを倒したのは三蔵だったか。

だが、何故か妙な胸騒ぎがする。

コイツ等は毘沙門天側の人間だと言うのは、会話を聞いて察した。

タッ!!

「和尚!!」

鴉が俺に向かって叫んだ。

すると、女が俺に向かって太刀を振り下ろして来た。

キィィィン!!

女の太刀を俺が用意していた鎖のお陰で動きを止めていた。

それと、同時に風鈴と女の体も拘束した。

「心配すんな、鴉。俺がこんなガキ達にやられる程、ヤワじゃねーよ。」

「隊長ー、馬鹿にされてますよ僕達ー。」

「風鈴。」

「良いんですかぁ?」

「やれ。」

鴉が男の体を斬り付けようとした時だった。

「おいで、蛇。」

ガブッ!!

ボォンッ!!

突然、巨大な蛇が鴉の頭をガブッと噛み付いた。

「鴉!!」

俺が叫ぶと、鴉は式神札に戻った。

「シャァァァァァァァ…。」

式神!?

「よーしよし、蛇ー。ついでにこの鎖を壊しちゃってー。」

「シャァァァァァァァ!!」

バキバキバキ!!

蛇は次々と鎖を喰い千切り女と男の拘束を解いて行った。

「な、何なんですか…。こ、この人達!?」

「コイツ等の狙いは林杏さんだ!!絶対に守れよ。」

「は、はい!!」

俺は水元に指示をし、霊魂銃を取り出した。

「風鈴、お前はあの店の中にいる男をやれ。」

「了解。」

タッ!!

女の指示を聞いた風鈴は、素早い動きで水元の元まで辿り着いた。

パンパンパンパンッ!!

俺は風鈴に向かって、銃弾を放った。

ブジャァ!!

風鈴の肩を銃弾が貫き地面に着地させる事が出来た。

「霊魂銃の弾って、こんなに破壊力があるんだ。」

グチャグチャ。

風鈴は肩に残った銃弾を抉(エグ)り出した。

女はそのまま俺に向かって走り出し、勢いを付け太刀を振り下ろした。

しまった!!

避けようにも太刀の刃が顔に当たりそうな瞬間だった。

「おらおらおらおら!!退きな、小僧!!」

頭上から女の声がした。

「は、はぁ?」

「さっさと退け!!お前の頭も斬り落とすぞ!!哪吒、貴様が哪吒か!!」

ドゴォォォーン!!

キィィィン!!!

鬼の角…、コイツは…。

「もしかして、羅刹天か?」

哪吒と呼ばれた女に羅刹天はかなり太い刀を振り下ろしていた。

「邪魔。」

「邪魔なのはテメーだよ、哪吒。悟空の役にも立てずに毘沙門天の言いなりか?」

羅刹天がそう言うと、哪吒の顔付きが険しくなった。

「あ?お前、毘沙門天のお人形なのに一丁前にヤキモチかっ!!!」

後ろから近付いて来ていた蛇を一刀両断した。

ブジャァァァァ!!

「グァァァァァァァアイァァア!!」

ボォンッ!!

巨大な蛇は悲鳴を上げながら札に戻って行った。

「おい、法明和尚!!何、ボサッとしてんだよ。」

「え、え?」

「観音菩薩のお気に入りなんだろ?なのに、なーにボサッとしてんだよ。あ?」

「いやいやいや!!状況が読めん!!何で、羅刹天がここにいるんだ?下界だぞ、ここは。」

「あ?わざわざ、展開から降りて来たんだろ?観音菩薩の頼みでな。」

「観音菩薩殿の…?」

天界でも何かあったのか…?

「天界でも、コイツ等の仲間が変な妖怪を呼び押せて、吉祥天の遺骨を持って行っちまったんだよ。観音菩薩がお前がいる白虎嶺に行ったんじゃないかって。俺を下界に落としたんだよ、あの野郎…。」

「吉祥天?!観音菩薩殿達が命懸けで封じていた遺骨を?!持ち出されたのか!?」

「毘沙門天が何百年も掛けて封印を解いていたんだと。ここの店の女を狙ってるんだよ.コイツ等。」

羅刹天はそう言って、哪吒達に視線を送る。

「女…って、林杏さんの事か?」

「理由は知らんが、碌(ロク)でも無い目的だろうな。おい、法明和尚。お前は俺様の邪魔にならないようにしていろ。」

「お、俺様…?じゃ、邪魔?」

「お前は何の為に今、戦ってんだ。」

何の為に…。

「毘沙門天を止める為に戦ってんじゃねーのか。俺はお前を守るように観音菩薩に言われてんだよ。」

「観音菩薩殿が?」

「アイツの直感はやたらと当たる。だから、お前の事も何か感じて俺を下界に降ろしたんだろ。」だから、タイミング良く羅刹天が到着したのか。

「退け!!」

ドンッ!!

羅刹天が俺の体を蹴り倒した。

「痛!?」

キィィィン!!

哪吒の太刀を羅刹天が受け止め斬り合いが始まっていた。

「ちょっと、本気出そうかなぁー。」

風鈴がそう言うと、蜂の式神を何百台も出していた。

「毘沙門天様の命令は絶対なんだよね。僕も毘沙門天様の作る世界は見たいからね。」

「アハハハ!!何?お前、舐めらてんじゃねーか!!」

風鈴の言葉を聞いた羅刹天はゲラゲラと笑い出した。

確かに、哪吒達は俺の事を舐めてる部分はあった。

おいおい、俺は江琉の師匠でもあり観音菩薩殿に認められてんだぞ。

こんなガキに本気になるのは大人気ないが、仕方ない。

俺は煙管を咥え、深く煙を吸い込む。

「悪いが、林杏さんを連れて行かせる事は出来ない。それにお前達には正しい教育が必要だ。」

俺はそう言って、式神札を取り出し式神を呼び出した。

ボンボンッ!!

現れたのは、口輪した獣人(ジュウジン)2体。

「「お呼びか、主人よ。」」

「へぇ、三蔵に渡してない式神もあったんだね。」

「あの式神は三蔵の物だ。だが、コイツ等も鴉も強いぞガキ。」

パサッ!!

グサッ!!

風鈴の肩にカラスの羽根が刺さった。

「すぐに出て来て大丈夫かー?鴉。」

俺の上を飛んでいる鴉に声を掛けた。

「平気じゃよ。この小僧に一泡吹かせてやらんと、気が済まぬ。」

ブゥゥゥゥン。

風鈴の出した式神の蜂が俺に向かって飛んで来た。

だが、獣人の式神達が刀で斬り落とし風鈴に向かって言った。

「おいで。」

ドゴォォォーン!!

再び地面から巨大な蛇が現れた。

「おいおい、また蛇を出したのかよ。」

「うん、僕も本気だって、言ったでしょ。緊縛。」

風鈴が指で銃を撃つようなポーズをした。

呪術か!!

俺は素早く手を叩き一喝した。

シュィィィィンッ!!!

「お前、呪術師か。」

「あれ?バレちゃった?」

半妖の者が呪術を使えるなんて、聞いた事ないぞ。

「悟空にお前は相応しく無い、下品な鬼め。」

哪吒がそう言うと、羅刹天から赤いオーラが出て来て、空気が重くなった。

額にある角も長くなっていた。

「あぁ?テメェ、何つった。」

「聞こえなかったのか?お前に悟空は相応しくない。」

「その言葉、そのまま返してやるよ半妖が。」

やばい、羅刹天がめっちゃ怒ってる!!

「決めた。お前は俺がぶっ倒す!!!」

ビュンッ!!!

羅刹天は物凄い速さで哪吒に斬り掛かった。

バンッ!!

ブジャァァァァ!!

哪吒の左腕が吹き飛んだ。

「次は足だ。」

羅刹天はそう言って、刀に付いた血を舐めた。


法明和尚と羅刹天が戦っている中、部屋の中に石と紫希が到着していた。

「ゔ!!」

ドサッ。

石が素早く水元の脇腹を殴り、水元が倒れた。

目を覚ました林杏は眠っている鈴玉を抱き締めていた。

「貴方にお伝えしたい事があります。」

「な、何なんですか?」

「アンタの男が危ないんだよねー。」

「え?」

紫希の言葉を聞いた林杏が顔を上げた。

「貴方の為に、彼は死のうとしています。我々を裏切り悪い妖の血を貴方に飲ませようとしている。呪いを解く為に。」

「彼に何をしたんですか。」

林杏はそう言って、石を睨み付けた。

「彼には貴方が必要だ。助けたいのなら、我々と一緒には来て下さい。その子供には危険があります。貴方だけに用があります。」

「…。鈴玉に手を出したら許さないから。」

「しないって言ってんでしょ。」

紫希は空間に歪みを作り扉を出した。

「さぁ、来て下さい我々と。」

「貴方達の為じゃない。鱗青を助ける為よ。」

差し出された石の手を取り、林杏は時空の扉の中に入った。

この作品はいかがでしたか?

33

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚