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その頃、同時刻 杏庵丁ー
法明和尚 四十歳
「法明和尚お師匠…、呪いが解けています!!」
林杏と鈴玉の部屋にいた水元が、部屋の外にいる俺に声を掛けた。
タタタタタタタッ!!
俺が部屋に入ると、林杏と鈴玉の体にあった浮き上がっていた文字がななり、骨化していた腕も元通りになっていた。
「江流が、がしゃどくろを倒したのでしょうか…。」
「式神を持たせて正解だったな。水元、聖水と布を持って来てくれ。体を清める。」
「分かりました!!」
水元はそう言って、部屋を出て行った。
おかしい。
牛魔王の血を飲んだがしゃどくろが簡単に倒せるのか…。
それに、闘技場から禍々しい妖気を感じる。
何かが起ころうとしている。
「和尚。」
天狗のお面をした鴉天狗が現れた。
「鴉(からす)、どうかしたのか。」
鴉は俺の式神で、式神札から勝手に出て来る。
「妖と人ならざる者がここに向かって来ている。和尚に用があるみたいだが、どうする。」
俺は錫杖を手に取り窓から外に飛び出た。
「法明和尚お師匠!?ど、どうかしましたか!?」
「水元!!そこから動くなよ。」
俺がそう言うと、金髪のふわふわな髪を靡かせた女が現れた。
「この女、かなりの強者だぞ和尚。」
「分かってる。」
俺は錫杖を構え女に尋ねた。
「何にしにここに来た?目的はなんだ?」
「女を渡して貰う。」
女はそう言って、太刀を構え振り下ろした。
ドゴォォォーン!!
振り下ろされた瞬間、店に向かって地割が起きた。
俺は札を素早くばら撒き指を動かした。
「封!!」
そう言うと、水元達のいる店全体に結界が張られ攻撃を防いだ。
「隊長ー、お待たせしました。」
女の隣に金髪の男が現れた。
「風鈴、女を連れて来い。」
「女?あー、鱗青の女ね。毘沙門天様の命令?」
「分かってて聞いてるだろ、お前。」
「まぁねー。了解しました。」
タッ!!
風鈴は一瞬にして結界の目の前まで距離を詰めた。
鴉が風を操り風鈴を結界から引き剥がすが、風鈴はビクともしなかった。
「あ、これさっき見た式神と一緒か。鴉天狗を従わせてるんだー。さすが三蔵のお師匠だねー。」
三蔵…?
「お前、何で三蔵の事を知ってる。」
「さっきまで一緒だったからね。がしゃどくろの呪いが解けたでしょ?あれ、三蔵の仕業だから。」
がしゃどくろを倒したのは三蔵だったか。
だが、何故か妙な胸騒ぎがする。
コイツ等は毘沙門天側の人間だと言うのは、会話を聞いて察した。
タッ!!
「和尚!!」
鴉が俺に向かって叫んだ。
すると、女が俺に向かって太刀を振り下ろして来た。
キィィィン!!
女の太刀を俺が用意していた鎖のお陰で動きを止めていた。
それと、同時に風鈴と女の体も拘束した。
「心配すんな、鴉。俺がこんなガキ達にやられる程、ヤワじゃねーよ。」
「隊長ー、馬鹿にされてますよ僕達ー。」
「風鈴。」
「良いんですかぁ?」
「やれ。」
鴉が男の体を斬り付けようとした時だった。
「おいで、蛇。」
ガブッ!!
ボォンッ!!
突然、巨大な蛇が鴉の頭をガブッと噛み付いた。
「鴉!!」
俺が叫ぶと、鴉は式神札に戻った。
「シャァァァァァァァ…。」
式神!?
「よーしよし、蛇ー。ついでにこの鎖を壊しちゃってー。」
「シャァァァァァァァ!!」
バキバキバキ!!
蛇は次々と鎖を喰い千切り女と男の拘束を解いて行った。
「な、何なんですか…。こ、この人達!?」
「コイツ等の狙いは林杏さんだ!!絶対に守れよ。」
「は、はい!!」
俺は水元に指示をし、霊魂銃を取り出した。
「風鈴、お前はあの店の中にいる男をやれ。」
「了解。」
タッ!!
女の指示を聞いた風鈴は、素早い動きで水元の元まで辿り着いた。
パンパンパンパンッ!!
俺は風鈴に向かって、銃弾を放った。
ブジャァ!!
風鈴の肩を銃弾が貫き地面に着地させる事が出来た。
「霊魂銃の弾って、こんなに破壊力があるんだ。」
グチャグチャ。
風鈴は肩に残った銃弾を抉(エグ)り出した。
女はそのまま俺に向かって走り出し、勢いを付け太刀を振り下ろした。
しまった!!
避けようにも太刀の刃が顔に当たりそうな瞬間だった。
「おらおらおらおら!!退きな、小僧!!」
頭上から女の声がした。
「は、はぁ?」
「さっさと退け!!お前の頭も斬り落とすぞ!!哪吒、貴様が哪吒か!!」
ドゴォォォーン!!
キィィィン!!!
鬼の角…、コイツは…。
「もしかして、羅刹天か?」
哪吒と呼ばれた女に羅刹天はかなり太い刀を振り下ろしていた。
「邪魔。」
「邪魔なのはテメーだよ、哪吒。悟空の役にも立てずに毘沙門天の言いなりか?」
羅刹天がそう言うと、哪吒の顔付きが険しくなった。
「あ?お前、毘沙門天のお人形なのに一丁前にヤキモチかっ!!!」
後ろから近付いて来ていた蛇を一刀両断した。
ブジャァァァァ!!
「グァァァァァァァアイァァア!!」
ボォンッ!!
巨大な蛇は悲鳴を上げながら札に戻って行った。
「おい、法明和尚!!何、ボサッとしてんだよ。」
「え、え?」
「観音菩薩のお気に入りなんだろ?なのに、なーにボサッとしてんだよ。あ?」
「いやいやいや!!状況が読めん!!何で、羅刹天がここにいるんだ?下界だぞ、ここは。」
「あ?わざわざ、展開から降りて来たんだろ?観音菩薩の頼みでな。」
「観音菩薩殿の…?」
天界でも何かあったのか…?
「天界でも、コイツ等の仲間が変な妖怪を呼び押せて、吉祥天の遺骨を持って行っちまったんだよ。観音菩薩がお前がいる白虎嶺に行ったんじゃないかって。俺を下界に落としたんだよ、あの野郎…。」
「吉祥天?!観音菩薩殿達が命懸けで封じていた遺骨を?!持ち出されたのか!?」
「毘沙門天が何百年も掛けて封印を解いていたんだと。ここの店の女を狙ってるんだよ.コイツ等。」
羅刹天はそう言って、哪吒達に視線を送る。
「女…って、林杏さんの事か?」
「理由は知らんが、碌(ロク)でも無い目的だろうな。おい、法明和尚。お前は俺様の邪魔にならないようにしていろ。」
「お、俺様…?じゃ、邪魔?」
「お前は何の為に今、戦ってんだ。」
何の為に…。
「毘沙門天を止める為に戦ってんじゃねーのか。俺はお前を守るように観音菩薩に言われてんだよ。」
「観音菩薩殿が?」
「アイツの直感はやたらと当たる。だから、お前の事も何か感じて俺を下界に降ろしたんだろ。」だから、タイミング良く羅刹天が到着したのか。
「退け!!」
ドンッ!!
羅刹天が俺の体を蹴り倒した。
「痛!?」
キィィィン!!
哪吒の太刀を羅刹天が受け止め斬り合いが始まっていた。
「ちょっと、本気出そうかなぁー。」
風鈴がそう言うと、蜂の式神を何百台も出していた。
「毘沙門天様の命令は絶対なんだよね。僕も毘沙門天様の作る世界は見たいからね。」
「アハハハ!!何?お前、舐めらてんじゃねーか!!」
風鈴の言葉を聞いた羅刹天はゲラゲラと笑い出した。
確かに、哪吒達は俺の事を舐めてる部分はあった。
おいおい、俺は江琉の師匠でもあり観音菩薩殿に認められてんだぞ。
こんなガキに本気になるのは大人気ないが、仕方ない。
俺は煙管を咥え、深く煙を吸い込む。
「悪いが、林杏さんを連れて行かせる事は出来ない。それにお前達には正しい教育が必要だ。」
俺はそう言って、式神札を取り出し式神を呼び出した。
ボンボンッ!!
現れたのは、口輪した獣人(ジュウジン)2体。
「「お呼びか、主人よ。」」
「へぇ、三蔵に渡してない式神もあったんだね。」
「あの式神は三蔵の物だ。だが、コイツ等も鴉も強いぞガキ。」
パサッ!!
グサッ!!
風鈴の肩にカラスの羽根が刺さった。
「すぐに出て来て大丈夫かー?鴉。」
俺の上を飛んでいる鴉に声を掛けた。
「平気じゃよ。この小僧に一泡吹かせてやらんと、気が済まぬ。」
ブゥゥゥゥン。
風鈴の出した式神の蜂が俺に向かって飛んで来た。
だが、獣人の式神達が刀で斬り落とし風鈴に向かって言った。
「おいで。」
ドゴォォォーン!!
再び地面から巨大な蛇が現れた。
「おいおい、また蛇を出したのかよ。」
「うん、僕も本気だって、言ったでしょ。緊縛。」
風鈴が指で銃を撃つようなポーズをした。
呪術か!!
俺は素早く手を叩き一喝した。
シュィィィィンッ!!!
「お前、呪術師か。」
「あれ?バレちゃった?」
半妖の者が呪術を使えるなんて、聞いた事ないぞ。
「悟空にお前は相応しく無い、下品な鬼め。」
哪吒がそう言うと、羅刹天から赤いオーラが出て来て、空気が重くなった。
額にある角も長くなっていた。
「あぁ?テメェ、何つった。」
「聞こえなかったのか?お前に悟空は相応しくない。」
「その言葉、そのまま返してやるよ半妖が。」
やばい、羅刹天がめっちゃ怒ってる!!
「決めた。お前は俺がぶっ倒す!!!」
ビュンッ!!!
羅刹天は物凄い速さで哪吒に斬り掛かった。
バンッ!!
ブジャァァァァ!!
哪吒の左腕が吹き飛んだ。
「次は足だ。」
羅刹天はそう言って、刀に付いた血を舐めた。
法明和尚と羅刹天が戦っている中、部屋の中に石と紫希が到着していた。
「ゔ!!」
ドサッ。
石が素早く水元の脇腹を殴り、水元が倒れた。
目を覚ました林杏は眠っている鈴玉を抱き締めていた。
「貴方にお伝えしたい事があります。」
「な、何なんですか?」
「アンタの男が危ないんだよねー。」
「え?」
紫希の言葉を聞いた林杏が顔を上げた。
「貴方の為に、彼は死のうとしています。我々を裏切り悪い妖の血を貴方に飲ませようとしている。呪いを解く為に。」
「彼に何をしたんですか。」
林杏はそう言って、石を睨み付けた。
「彼には貴方が必要だ。助けたいのなら、我々と一緒には来て下さい。その子供には危険があります。貴方だけに用があります。」
「…。鈴玉に手を出したら許さないから。」
「しないって言ってんでしょ。」
紫希は空間に歪みを作り扉を出した。
「さぁ、来て下さい我々と。」
「貴方達の為じゃない。鱗青を助ける為よ。」
差し出された石の手を取り、林杏は時空の扉の中に入った。