コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
十八歳になった頃。父から手紙でお呼び出しを食らった。その理由は聞いておらず、半信半疑で歩みを進める。
彼の寝室へ入り、椅子に座っている父に敬礼をした後。彼が真剣な表情で口を開く。
「ネテル、お前はもう結婚していい時期だ。女に慣れるために、隷女を引き取れ」
「しかし身分が違いますので、仲良くは」
「ああ、引き取るだけだ。恋をするのも、好意を寄せるのも禁止だ。本当は私の娘でもいいのだが、彼女たちは気難しくて私でも手が負えん。ネテルは異性と話すのが苦手だろ?まずは単純な思考を持つ隷女で慣れたら、私の娘と話してみろ。それから、血のつながらない女と話せ」
父マースティが言いそうにない正論を言われて、言葉が出なくなってしまう。
彼は確かに女好きではあるが、女の扱い方をよく分かっているからこそ付き合うことができている。それを息子のネテルにも覚えさせるつもりでいるのだろう。父の期待に応えるため、従わざるを得なかった。
しかし、アークよりも美しい顔をした隷女はいなかった。顔が不細工だったり、髪がゴワゴワしていたり。どれもしっくり来なくて、結局二十四歳になるまでは母親以外の女と話すことはなかった。
父は女に興味のない様子に怒りを覚えて、机に拳をぶつける。
「ネテル。お前は兄の代わりに次期国王になるのだぞ。子孫繁栄をするために、女と話せるようにしておけと言っただろ!」
「申し訳ありません」
お辞儀をして謝ったが、それでも怒りが収まらない。結局この日も違法の人身売買会場へ父から貰った仮面をつけて行くと、アークを見つけて引き取ったというわけだ。
ここまで思い出して、目を開ける。はあと大きなため息をついた。
父は自分がアークを好きになってしまったことを知らないのは充分承知している。今更女と付き合うことなどできるわけがない。付き合っても、アークの顔を思い浮かべてしまいそうだ。
父親のようなクズにはなりたくないので、浮気など絶対にしたくない。
ありったけのタバコを灰皿の中に入れてマッチを机の引き出しに入れ、横にある小さな引き出しから睡眠薬を取り出す。それを机の上に置いた。
ベランダの窓を閉め、コートを壁にかける。机の上に散らばった灰を濡れたタオルで拭き取り、薬の箱を持って部屋の外にある水汲み場へ向かう。
水汲み場のコップで水を組み、薬を飲んでから水で流し込む。王都の水は相変わらず不味くて、吐き出しそうだ。
帰る途中、廊下で忌々しい兄に出会った。柔らかい声で話しかけてくる。
「こんな夜中まで起きているのか?珍しいな。考え事か?」
「兄上には関係ありません。さよなら」
そのまま去ろうとしたら、背中に向けて声をかけられた。思わず立ち止まって、振り返ってしまう。
「もしかしてあの少年のことに関してか?父が話しているのを小耳に挟んだんだが、隣の国の姫と戦略結婚させられるんだってね。どうするつもりだい?」
「俺はあいつの他の息子を次期国王にして、逃げるつもりだ」
「へー、そうするんだ。でも難しいかもしれないね。父は他の息子に……特に庶民の間に作ってしまった息子に嫌悪感を抱いているんだ。身分的な問題でさ。自分が交わって作ったのに、ほんと無責任だよね。貴族の間で作った息子も二人いるが、どちらも病気もちで体調が優れないんだ。だからネテルか神父を辞めた僕が次期国王になるしか方法はないってこと」
神父が王様になることができないのは規則である。宗教関連の思想を植え付け、宗教思想が街の至る所に蔓延ってしまうからだ。
父は王様になってからなぜか悪魔を崇拝し始めたが、それは個人的に行っているだけであり、国家内に取り入れてはいない。だから、政治や貿易を行う者たちは権力が揺らぐため眼を瞑っている状態である。
しかも兄と父の関係が悪いことが重なり、王様になる確率は神父をやめない限り0%のままである。
「その情報は本当か?」
切羽詰まった表情で質問を返すが、レインは落ち着いた様子で質問に返す。
「もちろん。嘘だと思うなら、父に尋ねてみればいいんじゃない?激怒されると思うけどね。まあ……もう一つの可能性としては、父の弟に任せるのもありだとは思うが……」
「その手があったか!」
「ま、これも難しいよ。代々王様は長男がするという伝統がある。伝統を壊してまで弟にさせる意義はない」
「っ……」
色々考えてみたが、言葉に詰まってしまいこれ以上何も言えなかった。無言を貫く。
貴族の間に生まれた息子二人の病は彼曰く治せない難病で、20歳になることさえ難しいという。頭を悩ませてしまった。
もう娘を王様の代わりにしろよと自暴自棄になっていたら、レインは水を汲んでいる。これ以上、話したくないらしい。
ネテルは水汲み場から離れて、寝室に戻った。そしてベッドに座って考える。一度姫に出会い、結婚は断っておこうと。そして兄に王様になってもらうよう、作戦を練らなくてはいけない。