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第0章(下)
化け物と戦う者は、その過程で自らも化け物にならぬよう気をつけねばならない。深淵を覗き込むとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ──フリードリヒ・ニーチェ
〈3 インタールード壱〉
戦隊ヒーローでなくとも、正義の物語に悪はなくてはならないものだ。
悪意あってこその善意──
それは皮肉のように聞こえるだろう。
だが、ヒーローとはそう言うのものなのだ。
マイナスをゼロに戻す。
不破を正し、世界のバランスを取る。
そういった《波》を起こし、物語を緊張させるのが悪役だ。
つまり、悪役もとい《怪人》をあえて正義と相反するものにするとするならば、それは《分かりやすい悪》だ。
強大なパワーを有し、破壊の限りを尽くす。
手段を選ばず、躊躇なんてしない。
《迷いの無い悪》が一番恐いく
《迷いの無い正義》は一番優しい
──だが、あの紺色の制服に金色に輝く桜の代紋を掲げた青年に言わせると、しかしこれは違うらしい。
「あなたの意見は間違っている。しかし、その間違いにだけめを瞑れば、おおむね正解だ」
およそ国に忠義を誓う機関とは思えないような台詞を口にしたが、しかし、戯言とも受け取れる青年の言葉に、俺は共感せざるを得なかった。
「強大なパワーなんて要らないし、正しさなんてのはカンケー無い──そこに必要なのは、どんな悪にも決して屈することのない《最強の意思》だ」
諦めない姿は他者を鼓舞する──
それは、俺の理想の《英雄像》だった。