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二階の窓の隙間から、ミエの笑い声と部屋の明かりが漏れている。
「ただいま」健太は力ない声と共に、ハーバー共和国の薄いドアを押し開けた。
「どうだった?」ミエとツヨシが玄関戸に走り寄ってきた。二人の間から、食卓の上にトランプが広がっているのが見えた。
「やっぱりキヨシ、ここに住まわせてあげれないかな」健太はGジャンを脱ぐと、食卓の四つある椅子のうちの一つに掛けた。
ミエが慌ててトランプを片付けている。
「泊まる所ないんだよアイツ。頼むよ」健太はサングラスをはずして、Tシャツの胸元に引っ掛けた。
ツヨシは腕を組んだままだ。
「三ヶ月だけでいいと言ってる。あとはホームスティを自分で探すそうだから」
「正直あまり気乗りがしないな」とツヨシは言った。
一ヶ月ならどうだと健太が聞くと、ツヨシは「俺からも実は頼みがある」と言った。
ミエが今月をもって、今の家を出るという。オーナーの娘が他州から実家に帰ってくるのがその理由で、どうせ引っ越すなら九月からここへ来たいのだという。
「ね、いいでしょ」ミエは微笑んだ。
それは構わないよと健太と言った。