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夏休み前と変わった点があるとすれば、朝のフェスティバにツヨシ、キヨシに加えてミエも乗り込んで出発したことくらいだった。
授業が終わった夕方、この同じメンバーでスーパーに寄り、ハーバー通りに戻ってきた。
ビデオデッキにカセットをつめて健太に映画のウンチクを傾け出すはずのツヨシが、今日は珍しくキヨシと食卓にいる。この二人が隣どうしに座っているのを見るのは初めてた。
夕食の準備の、始まる様子がない。台所をそわそわ歩いていたミエが、歩を止めて「さて、」と言った。
「みんな聞いて。私から一つ提案があります。私がハーバー共和国の住民になるからには、食事は当番制にしたいと思います。法律改正の審議をお願いします」
は~い、賛成、とツヨシが唐突に手を挙げた。
健太は首を傾げた。
「これまでの共和国は、いや、ここに引っ越してくる前のマラソンのアパートの頃から、当番は自然に決まってたのが伝統だよ」
「でも、それだと私が作らなきゃならなくなる。どうせ、健太君やツヨシさんは作らないでしょ」とミエは語気を強めた「これまでって、私やキヨシさんがここに住んでもいないのに作ってたよね どう、ツヨシさん」
ツヨシはウンと言った。
「だから」ミエは続けた「これまでのやり方って、平等って言わないと思う」
「俺は、人それぞれ能力や適性は違うと思ってる。自分のできることで貢献するのが、この国の平等だよ」と健太は言ってツヨシを見た。
ツヨシは声を出さずにうなずいた。
「俺は移動で貢献して、ツヨシは会計で貢献して、食事は今まで、キヨシとミエが作ってくれていた。それぞれのできることをやってうまく行ってきた」キヨシは横目でツヨシの顔を見ている。
「黙ってないで何か言えよキヨシ」
「いや、俺はどっちでもいいと思いますよ。どっちでも」キヨシは背筋を伸ばした。