テラーノベル
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「俺のせいでなんて、悪かったな……」
「ううん……」と、首を横に振る。
「……私だって、悪かったから……」
「……そう、か……」
「……うん……」
会話が止まり、沈黙が流れた。
「……俺がおまえを部屋に連れ込んだりしなければ、彼氏とうまくいってたんだよな?」
あの日の出来事を気づかう彼に、「そうだったのかもしれないけど……」と、返す。
「……悪かったな」
繰り返される言葉に、「…………違う」と、再び首を横に振った。
「違うって、何がだよ?」
彼が訊き返して、側道に車を寄せて停めた。
「話したいことがあるなら、俺に言ってみろよ?」
いたわるように聞こえる低く抑えられた声音に、「……うん、」と、口を開いた──。
「……彼とは、もうずっとくっついたり離れたりをくり返していて、だから今度も大丈夫だなんて、どこかで思っていて……。
でも、そんなのは私の虫のいい思い込みなだけだったって、気づかされたの……。私は、彼とは別のことばかりをずっと考えてて……」
「……別のことってなんだよ? はっきり言えって」
言葉尻が捉えられ、上目づかいにじっと鷹騰社長の顔を見つめた。
「……あなたのことを」
「……俺の?」と、彼が息を呑む。
「……私は、彼のことをちゃんと考えられなくて、あなたのことで頭がいっぱいになってて……。そうして気持ちの上でも彼を傷つけていたのに……なのに、彼とはまだやり直せるはずだなんて、そんな風に思ってた自分は、どこまでズルい女なんだろうって……」
胸の奥深くに押し込めていたはずの思いまで話してしまうと、止まっていた涙が零れた。
「……そう、か……」彼が頷いて、
「……おまえだけじゃない……俺も、そうだったからな…」
その先を私に期待させるような一言を、ふと口にした。
「……俺も、ってどういう意味で……?」
胸の高ぶりを隠せないまま、彼に真意を尋ねた──。
「そのままだ。俺も、おまえのことが気にかかっていて、会う度おまえが頭から離れなくてな。それで、彼女にも何度も言われたよ。『誰か他の人のことを考えてるでしょう?』って……」
告げられた彼の本心に、まさかという想いが込み上げる。
「それに俺も、仕事を引き合いに、彼女から逃げてばかりだったからな……。
それでもあいつは俺のそばにいてくれるはずだと、勝手に信じ込んでいて……」
彼がふうっーと息を吐くと、
「泣くなよ……だから、俺も同罪だ」
運転席から腕を伸ばし、温もりを感じさせる大きな手の平で、何度も私の頭を撫でると、「それと、これだけは言っておくが」と、つぶさに目を合わせた。
「俺はたとえ酔っていたとしても、気になってもいない女にキスなんてしない」
揺るぎない彼の言葉に「うん……」と応えて、「もう、泣かないから……」と返した後で、
「……。……麗華さんが、言ってました……いつも仕事が優先で、自分は後回しにされるって……」
彼女が話していたことを胸にとどめておくことはできなくて、彼に伝えた。
「……話したのか、あいつと……」
「……少しだけ。……寂しそうでした、彼女……」
「そうか……」と、口にして、
「悪いことをしたよな……麗華には……」
鷹騰社長は眉間に微かなしわを寄せ、両手でグッと握り締めたハンドルの上部に、額をすり付けるようにして顔を伏せた──。
コメント
1件
みぅだよ🤍 第36話、読んだよ。お互いに「自分だけじゃなかった」って気づく瞬間、すごく切なくて、でも少しだけ温かくて……。車の中っていう閉じた空間で、本音をぽつぽつ紡いでいく感じが、すごくリアルだった。 「気になってもいない女にキスなんてしない」って台詞、心臓がぎゅっとなった。彼なりの誠実さがにじんでて、好きです。麗華さんの話を聞いて「悪いことをした」って項垂れる姿も、人間らしくて苦しくなったよ……。 お互いが抱えてる罪悪感と、それでも離れられない引力。この関係、どこへ向かうんだろうね。次が気になる……🌙
R
23
#執着
さぶれ
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