テラーノベル
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彼が伏せていたハンドルから顔を上げ、私の方を窺う。
「なぁ……キスを忘れないでいろって言ったこと、憶えてるか?」
不意にそう訊かれた。
「どうして、今それを……」
彼女──麓華さんののことが散らついて、とっさには答えられなかった。
すると私の心の内を察したらしい彼が、「……わかっている」と、一言を発して、「あいつには、話をする。いずれしようとは思っていたんだ……」そう続けた。
「このまま俺の勝手であいつを縛りつけても、幸せにはしてやれないからな……」
彼が、自らを責めるようにも話して、
「……麗華も、きっともう俺とではうまく噛み合わないことを、わかってるはずだからな……」
後悔を滲ませるように、ギリッと歯を軋ませた。
短い沈黙が続いた後で、
「……答えろよ、憶えてるのか」
どこかぶっきらぼうに口にする彼に、
「憶えてることに、どんな意味があるの?」
尋ねた──互いの気持ちが知れてしまった今、本当はどんな意味かなんて聞かなくたって、彼がきっかけを求めて照れ隠しにつれない言い方をしていることくらいわかっていた。
ただ、どういうつもりで言っているのかが、彼の口から直接聞きたかった。
「俺は、おまえとのキスが忘れられない……」
吐かれた一言ともに、真っ直ぐに見つめられて、
「……おまえは、忘れないでいたのかよ?」
再び問いかけられる。
「忘れるわけな、ん……てっ……」
言葉の途中で、片手で顎がすくわれて、
「ずっと忘れられなくなればいい」
彼の唇が迫った──。
止められた車の中で唇が触れ合うと、彼の熱が直に伝わるようだった。
「付き合ってくれるか、俺と……」
唇が離れると、そう尋ねられて、
「どこへ……?」
一体どこへ付き合うって言うんだろうと、頭に?マークが浮かんだ。
「どこへ?」彼が繰り返して、「ああ、そっちの意味か……」と、呟いた。
R
23
#執着
さぶれ
1,448
「……そっちの意味?」
さらに頭の中にポポポポポンと、?マークがいくつも浮かび上がる。
「いや、いいんだ……そういうことにしておく」
「えっ……?」
何の話をしているのかよくわからないまま、鷹騰社長がエンジンをかけると、車内はスポーツカー特有の突き上げるような轟音に包まれた。
「俺の部屋に行く。いいよな?」
有無を言わせぬ強引な口ぶりに呑まれて、「うん……」と思わず返事をすると、(さっきのは部屋に付き合えっていう意味だったのかな……)と、ぼんやり考えた。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 「ずっと忘れられなくなればいい」って台詞、重くて熱くてやばかったです……。車内って閉じた空間がまたいいですよね、逃げ場なくて。鷹騰社長が「あいつ(麓華さん)とは話をする」って言ったところも、ちゃんとけじめをつけようとしてる感じがして、ただの強引なだけじゃないんだなって伝わってきました。 「どこへ?」って聞いちゃう麗華ちゃん、天然なのか緊張してるのか……でもその後の社長の反応が優しくて、にやけました🌙✨