TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

ロゼッタは必死の思いで言葉を絞り出す。

そして、ガ―レットから距離を取ろうと試みた。

しかし、彼の腕を振り払うことができない。むしろ、その逆だった。

まるで、自ら彼を求めているかのように思えてしまう。

自分が自分ではなくなってしまったような感覚に襲われるロゼッタ…

「(目の前の男が…愛おしくてしょうがない…ッ!こんな…こんな…!)」

理性と本能が激しくぶつかり合う。

このままでは本当に取り返しのつかないことになるかもしれない。

そう思うのだが、ロゼッタの心は彼の言葉に逆らえない。

身体も、既に言うことを聞かない状態だった。

彼女が出来ることはただ一つだけ。

心を強く持ち続ける事だけだった。

「ああ…そうだ。それでいいんだ」

「はぁ…はぁ…」

「俺のことをもっと求めろ。俺のことしか考えられないくらいに…!」

「ぐ…く…」

「お前はもう俺のものだ。誰にも渡さない…!」

「くっ…!」

ロゼッタは最後の力を振り絞り、懐に仕込んでいた刃物を取り出した。

魔法杖の中に仕込んだ、仕込み刀だ。

それをガ―レットに突き立てる。

しかし…

「おいおい、刺せるのかお前に?」

「くッ…」

「俺は、お前の『愛する人』なんだぜ?」

「う…あ…ッ」

仕込み刀を持つ手が震えている。

とてもじゃないが、まともに使える状態ではない。

ロゼッタの心に迷いが生じる。

「(私は…私は…!)」

「ははは!もう堕ちろよ!楽になれよ!何もかも忘れて、快楽に身を任せよォ!!」

「あ、あ…ああ…」

彼女の心が完全に屈服するまで、あと一歩というところまで迫っていた。

このままではいけない。

そう分かっていても、ロゼッタにはどうすることもできなかった。

彼女の心は折れかかっていたのだ。

だが…

「くッ…!」

今の自分に、目の前の『愛する人』であるガ―レットを指すことは不可能。

ロゼッタはそう考えた。

彼女は最後の賭けに出た。

それは…

「ずあッ!」

「なに!?」

ロゼッタは勢いよく仕込み刀を突き刺した。

ガ―レットにでは無い。

ロゼッタ自身の身体に、だ。

刀が肉を裂き、深々と突き刺さる。

痛みを感じないわけではないが、それでもまだ耐えられるレベルだ。

だが…

「(これで良い…。これなら…!)」

仕込み刀を自らに突き立てたまま、ロゼッタは再び意識を強く持つ。

先ほどまで、自身の頭の中を覆っていた霧が晴れていく。

そんな感覚だ。

「(なんとか…ギリギリで踏み留まることができたようね…)」

ロゼッタは安堵のため息をつく。

だが、それも束の間のことだった。

自身の身体を指したのだ、当然激しい痛みが彼女を襲う。

「うああああああああああああ!」

出せる限りの大声を上げるロゼッタ。

刃が肉を裂く痛み、それを全て込めた叫びだ。

彼女の声の大きさに思わず怯むガ―レット。

その隙を突き、ガ―レットと距離をとるロゼッタ。

それだけでは無い。

ロゼッタの叫びは、この場にとあるものを呼び寄せた。

「こっちで女の叫び声が!」

街の人の声がする。

おそらく騒ぎを聞きつけ、様子を見に来たのだろう。

「チィ!面倒な連中め…!ここはひとまず退くか…!」

そう言いながらその場を離れるガ―レット。

血を流した女性と一緒にいる、どう考えても言い訳できぬ状況。

そして逃げようとするロゼッタだったが、既に満身創痍の状態。

足下もおぼつかず、立つことすらやっとの状態だった。

「はぁ…はぁ…」

ロゼッタはその場に膝をつき、荒い呼吸を整えることに専念することにした。

しばらくして、ようやく落ち着いてきた頃。

ロゼッタの元へやってきたのは、数人の兵士だった。

彼らはロゼッタに駆け寄り、安否の確認をする。

「ひどい怪我だ、一体誰にやられた?」

「う、ううぅ…」

詳しく話しても、兵士たちには何もできないだろう。

むしろ無駄に被害を増やすことになりかねない。

ロゼッタは、通り魔か何かに襲われ怪我を負った。

そう言うことにしておいた。

「すぐに手当てをしてもらいましょう。立てますか?私がおぶります」

「あ、ありがとうございます…」

そう言ってロゼッタをおぶる兵士。

そのままロゼッタは街にある病院へと連れていかれたのだった。


一方その頃、図書館にて…

「ロゼッタさんが行方不明…?」

修行場からの帰路、アリスたちのいる図書館へと寄ったリオンとシルヴィ。

二人は、そこで驚くべき事実をアリスから聞くこととなった。

ロゼッタが行方不明になったというのだ。

「はい、昼ごろから…」

「どこに行くとか、言っていなかったか?」

「それが…私にも分からないんです…」

詳しい行先をロゼッタは言っていなかった。

不安そうな表情を浮かべるリオンとアリス。

そんな二人に対し、シルヴィが明るく振る舞うように言った。

「きっと大丈夫だ。ロゼッタさんのことだ。ひょっこり帰ってくるさ」

「だと良いんだけどな…」

「そうだ、ボクたちは信じて待とう」

「そうだな」

こうして三人は、ロゼッタの帰りを待つことになった。

とはいえ、何もせずに待つだけというのも心配だ。

街の兵士に事情を話し、捜索の協力をお願いすることにした。

そしてリオンも街にロゼッタを探しに行った。


病院で治療を受けた後、ロゼッタはそのまま入院することとなった。

幸いにも命に関わるような傷は無く、数日休んでいれば退院できるとのことだ。

しかし、問題はその後の事であった。

「まさか…こんな事になるなんて…」

ベッドの上で横になりながら、ため息をつくロゼッタ。

今回の件は、完全に自分の油断が原因だと彼女は考えていた。

まんまと罠にかかり、結果大けがを負うこととなった。

その上、ガ―レットを逃す結果となったのだ。

自分のせいで、多くの人が危険に晒されることになるかもしれない。

そう思うと、どうしても気分が落ち込んでしまう。

「はぁ…私は何をしていたんだろうか…?」

ガ―レットの言葉を思い出す。

自分は彼のことを愛してしまったのだろうか?

答えはすぐに出た。

「いや、違う…」

彼は愛してはいけない存在なのだ。

愛などと言う感情を持って接してはならない。

そうしなければ、また同じ過ちを繰り返してしまうことになる。

絶対的な意思を持ち、立ち向かわなければいけない。

「あの占い師が言ってたのってこういうことなのか?」

あの占い師の言葉は、こういうことだったのか?

よくはわからないが、そのような気もする。

それとあのガ―レットの『眼』だ。

逆に言えば、あの『眼』さえなければ…

どうやって封じる?

「しかし…アリスくんには悪いことをしてしまったな…」

休憩中にそのまま出てきて今回の騒動に巻き込まれてしまったのだ。

アリスは何も知らず、心配しているに違いない。

なんとか連絡をとらないといけない。

誰かに頼むか、そう考えるロゼッタ。

「後で…誰かに…」

そう呟き、目を閉じるロゼッタ。

眠りにつくまで、さほど時間はかからなかった。

「すこし…休もうか…」

寝取られ追放から始まる、最強の成り上がりハーレム~追放後、自由気ままに第二の人生を楽しむことにした~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

33

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚