今回から日帝さんのキャラが非常に崩壊し始めます。
初心(?)できゃわわな帝国軍人ニキはもう居らんくなります。
前回とは打って変わってほぼ地の文です。
あれからのことだ。
あれほどだったアメリカの癇癪はすっと収まってしまった。
彼の言動から見るに日帝は晴れて自由になったと考えてよさそうだった。どうやら日帝は私のものであるとすっかり信じ込んでしまっているようだった。
それともう一つ、去り際に「日本に会ってやってほしい」だなんてことを言っていた。恐らく普段から会いたがっていたのだろうな。私の息子とはえらい違いだが、親に会えない理由が自分の上司だとは日本とやらもまぁ可哀想な奴だ。
アメリカの渡した番号は日本の携帯のもので、久しぶりに息子の声を聞けた日帝は感涙のあまりはじめまともに喋れていなかった。電話口から聞こえてくる声も心なしか震えていた。
ということで日帝の今夜、いやしばらくの宿は日本宅ということに決定した。
日帝「すみません先輩、イタ王も。わざわざ送ってくださるだなんて…。」
日帝は久しぶりに外に出た身なので我々が家までついていくことになったのだ。
イタ王「にってー今日謝ってばっかなんよ。」
日帝「当然だ。こんなに迷惑をかけてしまったのだから、謝るだけでは足りん。」
そもそも全ての元凶はアメリカなのだから謝る道理などないように感じるが、もとより日本は謝罪の国。好きにさせたほうが日帝も気が楽だろう。
日帝「記憶では、このあたりの筈なんですが…。」
と言い角を曲がれば何者かが日帝に抱きつく。
にゃぽん「久しぶり!父さん!!」
日帝「久しぶりだにゃぽん。大きくなったものだな。」
日帝もにひしと抱き返す。にゃぽんは心底嬉しそうに涙で溢れる目を細めた。
にゃぽん「えへへ、久しぶり、久しぶりだね。」
日帝「あぁ、今まで会えずすまなかった。」
にゃぽん「…お家帰ろ?いろいろ話したいけどここじゃ寒いでしょ?」
日帝「そうだな。」
イタ王「さて、感動の再会を邪魔しちゃいけないしio達も帰ろっか。」
ナチス「ああ。そうしよう。」
にゃぽん「あ、ちょっと待って。お友達さんたちも上がっていきなよ。」
ナチス・イタ王「え。」
何度か断りはしたが結局夕飯をご馳走になることになってしまった。
仕事から日本が帰って来ればまた互いに抱きしめ合って再会を喜び合ったのだが、我々は多分完全に邪魔でしかなかったと思う。せいぜい空気に徹することしかできなかった。
その後の夕食も思い出話や、それぞれの今までの話が交わされた。そこでも若干気まずい気はしたのだが、なぜか二人は私の話も聞きたいと言っていたので、ちゃんと会話に入ることはできた。
彼らからしても日帝を含め我々は、歴史に残る悪人という共通認識ではあるらしく、尚更エピソードを求められるのが不思議だ。
驚いたのは、日帝が今までどんな目に遭っていたか日本とにゃぽんがおおよそ知っていたことだ。
自分達の立場上救いたくても救えなかったことを謝罪していた。事実彼らの生殺与奪権はアメリカに握られているも同然なので仕様のないことだろう。
日帝も無謀な戦争を仕掛けたあまり多大な迷惑をかけたと謝っていた。それに関しては我々も頭を下げるしかなかった。
とはいえせっかくの再会の晩餐が謝罪ばかりでもつまらないのでそれなりに楽しい話もしていた。
とりわけサブカルチャーの話をするときは異様に2人の口ぶりに熱がこもっていた。日帝もはじめはそれに面食らっていたが、しばらくして「不埒」だの「弛んだ心意気」だのもごもご呟いていたのを私は知っている。
これはそのうち日帝から2人に鍛錬の課される布石なのかもしれない。
少々話が盛り上がりすぎたのかそのまま泊まらせてもらうことになってしまった。
さすがに風呂は体拭きシートで済ました。彼らの先に入るのも、JKの入ったあとの風呂に入るのも気が引けるからな。
私とイタ王は空き部屋(半分物置部屋だった)で寝ることになった。日帝らは三人で寝るらしい。
イタ王はすぐ眠りについたが、私はなかなか寝付けなかった。せっかく敷いてもらった布団だが、慣れないスタイルなのでどうしても眠りに入れないのだ。
ふと、リビングから日帝の足音が聞こえてきた。共に戦ってきた中で仲間の歩行音のクセは覚えてしまった。
…あぁ、思い出した。日帝には聞きたいことがあったのだ。
イタ王を起こさないように扉を開け、机に突っ伏す日帝の肩を突く。
日帝「先輩…これはお見苦しいところを…。」
ナチス「いや構わないさ。それより、一つ聞いてもいいか?」
日帝「?どうぞ。」
ナチス「さっきアメリカが癇癪を起こして泣いていただろう?その時に、見間違いかもしれないが、笑っていたような気がするんだ。」
日帝「……は」
そうだ。あの時、泣きむせぶアメリカを見つめる日帝は確かに笑顔だった。
最初は無表情そのものだったのが、次覗き込んだ時には喜びを讃えた表情に様変わりしていたのだ。
解放されることに対する喜びであるならまだ良いのだ。しかし邪推かもしれないがそうだとは思えなかった。
なにしろその時の日帝の笑顔はひどく歪んだものに見えた。不気味で、偏愛的で、どこか欲深さを感じさせる顔。
そう、彼が中国や東南アジアに進出すると言い出した時の、アメリカに攻撃を仕掛けると言った時のそれを想起させたのだ。
とはいえ、だ。ただの笑顔一つにここまで考察を巡らせるのも変な話だ。どうせ見間違いやそこらだろう。
ナチス「…少し気になっただけだ。私の勘違いかもしれないし、そこまで追求するつもりもない。」
日帝「先輩…。いえ、お話しましょう。させてください。」
日帝「私が、奴の…米国のことを好きになりかけているとお話したでしょう?その理由があのときわかった気がしたんです。」
ナチス「…お、おう。」
日帝「どうやら私は米国が苦しんでいるのを見るのが好きらしいんです。」
ナチス「…………えっ…と?」
日帝「喜ばしいことです。私は米国が好きなのではなく、奴の余裕そうな顔が歪むのが好きなだけなんです。」
……なるほどとはいえないが、確かにそうかも知れない。アメリカが日帝との行為の際に手に入れられるはずもない愛を欲していたのも、全て台無しになったと恥ずかしげもなく喚き散らしていたのも全てアメリカの苦しみだ。
そして件の大戦中ずっとアメリカに対して憎しみを燃やし続けた日帝のことだ。それを快と捉えてしまうのも無理ないだろう。
日帝「このことに早く気づいていれば先輩を巻き込まずに済んだのに…。」
ナチス「いや、済んだことは仕方ないさ。それに結果解放されたのだから良かっただろう?」
日帝「…いつか絶対お礼致します。」
ナチス「結構だ……いや、楽しみにしておくよ。」
返事のあとにふあ、とあくびが一つ聞こえてきた。
ナチス「眠いのだろう?」
日帝「……はい。」
ナチス「きっと明日も早いぞ。再開早々寝坊姿を見せる前に寝たまえ。」
日帝「…でしたら、おやすみなさい。」
ナチス「あぁ、おやすみ。」
結局、その夜は一睡たりともできなかった。
コメント
1件
最近見られていなくてすみません!とても良かったです!