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「…はぁ…ハズレだなー。今日もっ。」薄暗い部屋の窓際に座る健人は、両手を伸ばしながら欠伸をしている。
「今日はあいにくの雨だしさ〜、2軒目はやめにしなーい?」
「だめだ。」
俺はいつまでこいつの面倒を見なきゃならねぇんだ。
殺しの腕は一丁前だが、とにかく怠け癖が酷い。
「今日は必ず風呂に入れ。いいな。」
俺はため息をつきながら黒いビニール手袋を手から引き剥がしながら、血まみれになっている健人に言った。
「は~い。でも俺風呂キャン界隈だからさ〜。」
健人は返り血のついた顔を手で拭う。
「風呂も仕事のうちだ。ボロを出したら承知しねぇからな。そもそも、今風の単語に置き換えて、自分の怠惰を正当化してんじゃねぇよ。」
「はいはいっ、あー安見先輩こわーい。」
健人は死体の胸に刺さった小型ナイフを勢い良く抜いてくるりと手の中に収めて言った。
「はいは1回だ。さっさと片付けるぞ。」
態度は悪いが手際は良い。仕事さえキッチリやってくれるならどんな人間であろうが構わない。
健人はいつも通り鼻歌を歌いながら手際良くビニールシートに死体を転がせてロープを付け始めた。
コイツを飼って1年か、ようやく使いこなせてきた。その辺の人間とは違い信頼関係を築くまでこの手の奴は時間がかかる。だが、一度信頼したら死ぬまで裏切らないのが特徴だ。
ろくな親に育てられていない奴は飼い主を何度も試しにかかってくる。
時には傷を負ってでもお前を裏切らないと約束する態度を見せてやらねばならないし、そいつの異様な程の拘りも受け入れてやらねばならない。
コイツの拘りは人間以外の生物を殺さないところだ。人間はどこまでも無情に殺れるのに、蚊の一匹も殺さない。いや、俺の目から見ると殺せないように見える。
一度聞いたことがある「何故虫を殺さない。」
「味方だからだよ。」
健人は何故そんな当り前ことを聞くのかというような顔で言った。
それ以上は聞かなかった。
どちらにしてもこういう奴は俺にとっては手懐けるのは簡単だ。
この俺がそうだからだ。
それに、簡単に人を殺せる人間はこの世に数少ない。
少しでも殺す事に躊躇する人間は死体処理の際にもボロが出る。完璧にこなさなければすぐ下には地獄が待っている。
健人は崖スレスレを鼻歌を歌いながらスキップするような奴だ。
その反面、完璧な計画を立てて崖から落ちないようにするのが俺だ。
「おい、壁を触るなよ。掃除が面倒になる。」
血を吹きやすいように調合した薬品を床に吹きかけていく。臭いもなければ指紋も綺麗になる代物だ。
「ねー、足も切っていいー?コイツデカいからさー」
「あぁ、手早くやれよ。」
1軒目の仕事が無事終わる。
次は二軒目、厄介な案件が待っている。
俺はため息をついて助手席に座る健人にライターを渡した。