ユーリは仕事が早めに終わり姉·ヨルの顔を見に行こうとルンルンな気持ちで向かっていた。
すると向かい側から見覚えのあるピンクの髪の少女が見えた。
「…チワワ娘?」
そうその少女と言うのは姪のアーニャであった。
しかしアーニャの様子がおかしい。
必死になにかから逃げているような感じだった。
そしてアーニャはこちらの存在に気づいたのかスピードをあげて向かってくる。
しかしアーニャは向かってくるなりユーリの後ろに隠れてしまったのだ。
「おいチワワ娘。どうしたんだ?」
そう問いただすも何も答えない。
なんなんだと思った時、目の前から声がした。
「アーニャちゃん走るの早いんだねぇ、」
誰だ?と思い前を向く。しかしユーリはこの男に見覚えは無い。
けれど姪のことは知っている。
ということはこいつの知り合いか?と思いユーリはさっきから後ろでガクガクと震えるアーニャに目をやると、服は少し乱れ、今にも泣きそうな顔をしていた。
その様子を見てユーリは察した。
アーニャはこの男に襲われかけたのだと。
完全に襲われる1歩手前でアーニャは逃げてきたのだと。
理解した瞬間物凄い怒りに震えた。その怒りをグッとこらえる。
「すみません。この子になにか?」
ユーリは男からアーニャを守りつつそう問う。
「アーニャちゃんにちょっと、ね」
「…この子はあなたをすごく怖がってるように見えますが?何があったのか説明して貰えます?」
「僕を怖がってる…?そ、そんなことないよな?なぁアーニャちゃん、」
男は焦ったようにアーニャに触れようとする。アーニャは途端に伸びてきた手に震えた。
その瞬間ユーリの怒りは頂点に達した。
パシンッ…!
ユーリは男の手をおもいきり払う。そして男に殺す勢いで食ってかかろうとした瞬間、服をクンッと引っ張られる。
アーニャがそれを阻止したのだ。
ユーリは仕方なく諦め、その代わり凄い形相で相手を睨む。
「仕方なく許してやる…次やったら処刑してやるからな」
男はヒッ…!と情けない声を出しユーリのすごい形相に負けて帰って行った。
そして未だに後ろで震える姪に声をかける。
「アーニャ」
ユーリはアーニャと目線が会うように屈み、手を伸ばす。しかしユーリはその手を止める。
「っ。大丈夫か?」
そう。なぜなら自分もさっき襲おうとしてた男と同じ性別。さっきのことがあって男性に対してアーニャが怖がらないわけないのだ。
しかしアーニャはその手を取る。
「だいじょぶ」
「…ボクもさっきのやつと同じ男だぞ?」
ユーリは自分の手を取られたことに驚きつつもそう言う。
「おじはさっきのやつとは違う。同じ男でもおじは優しい男。」
「ふ…っなんだそれ」
ユーリはその言葉に嬉しく思った。そして安心したのか腰が抜けたアーニャを抱え家へ向かう。
「嫌な思いをしたな。走って汗をかいただろ。家に帰ったら風呂に入ろう。服は少しダメになっているから捨てて新しいのを買おう。」
「……おじありがとう」
アーニャは満面の笑みでユーリにお礼を言う。そんなアーニャの姿にユーリはホッとした。
「…別に困っていたら助けるのが当然だろう。」
ユーリはぶっきらぼうに答えるも心の中では酷く安心しているのであった。
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