テラーノベル
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「っ、トラゾーお前…どこ行ったんだよ…?」
───男達3人は、そう言って羅生門の幕を閉じ、新たな幕を開こうとしている。そして、今まで頑張ってきたものが崩れる音がするのだ。自分と、仲間を救うためにやってきたそれは、仲間を救えずじまいになるかもしれない。
───でも、少し…羨ましい。 だからって妥協なんてするもんか。
この明晰夢は───俺がいなくてもいい物語。
…………………………
日常組加入直後、どんなコメントが来ていたかなんて覚えていない。多分、コメントを見ることが怖かった。何万人という人から見られた自分。もちろんみんなから好かれるなんて思っちゃいないが、俺のことが嫌いな人の言葉を見ることはすごく怖かった。
ぺいんとがそういうのは削除したりするけど、そんなんじゃぺいんとの精神がもたなくなる。
───だったら、俺は・・・
「トラゾー!明晰夢の撮影するんだからスタンバイしとけよ!」
「あっ、お、おぉ。」
俺───トラゾーの名前を呼んだのは、ぺいんとだった。
彼はひどく夢見がちだ。到底叶わないような夢を見、その夢を叶えるために必死に努力し、たくさんの人に夢と希望を与えるようなやつ。
───物語に必須。
「トラゾーさんの反応(笑)」
そう言いながら笑ったのは、しにがみさんだった。
彼はひどく臆病だ。それでも時にはやる男で、強いものに挑戦する力を持ち、みんなの役に立つことを願い、みんなを笑顔にするために努力するような人。
───物語に必須。
「(笑) トラゾーがんばれ〜!」
笑顔で俺を応援したのは、クロノアさんだった。
彼はひどく勇敢で、どんな強敵が現れようともまっすぐ冷静に立ち向かう。その上現実主義で、そこまでぺいんとのように夢見ないけれど仲間との意見の言い合いができる役に立つような人。
───物語に必須。
「わかったわかった!!(笑)」
そう笑ったのは、俺。トラゾーだった。
勇敢でも、臆病でもないが筋肉が取り柄。ボケもツッコミもできないけれど、他の人との連絡だったり裏方に役立つような人。
───物語に不必要。
というか、主人公になる気もないやつがこの物語に必須だと思うはずがない。それはごく当たり前のことなのだ。
この物語───明晰夢では、俺を救うこともそうだが、とち狂ってしまった世界を救うことも題材となっている。…ただ、どちらかと言うととち狂った世界を救う方が主要となっている。
───つまり、俺はこの物語のおまけ。逆に、世界を救えても俺を救えないエンドも用意している。……いや、というか…
(逆にそのエンドに行って欲しいなんて、どうかしてるかな。)
俺はそのエンドを、true endと呼んでいる。そして、みんなを救えたらhappy end。逆にみんなが他界してしまった場合は、もう力は使えないためbad endとなる。
3つのエンドが存在する中で、彼らの導くエンドはどうなるかわからない。それでも、俺はtrue endを望んでいる。
だって、俺はおまけなのだから。
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