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永遠に届く声

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永遠に届く声

7 - sieben .

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2025年05月11日

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窓の外、空がかすかに青みを帯び始めていた。もうすぐ、朝が来る。

教師と王がそれぞれの仮面を被らねばならない時間が、また始まる。


ベッドに並ぶように座っていたふたりは、言葉少なに、ただ時の流れを感じていた。


「……夜が終わるのは、こんなにも早かったか」

ヴィクトールが呟くと、ハイネは微かに笑った。


「王様にとっては、誰よりも長い夜のはずでしょう?」


「……君がいると、すべてが一瞬だ。私の記憶も、時間も、感情さえも──君に飲まれてしまう」


ハイネはゆっくりと視線を上げた。

その瞳には、もはや揺らぎはなかった。


「貴方が夢に閉じ込めたいと思っていること、分かっています」


「……」


「でも私は……もう夢ではいられない。

ヴィクトール、私は、貴方を……」

そこまで言って、ハイネは言葉を止める。

唇を噛んで、ほんの少し震えたあと、穏やかな微笑みに変えた。


「……いいえ、やはり何も言いません。言ってしまえば、戻れなくなってしまいますから」


それは強がりでも、諦めでもなく、ただ深すぎる愛の選択だった。

伝えるよりも、貫く方を選んだ愛。

抱きしめるより、遠ざけることで守ろうとする愛。


ヴィクトールはその言葉を、ただ静かに受け止めるしかなかった。

腕を伸ばしかけて、やめる。

触れてしまえば、また夢が続いてしまうから。


「……さようなら、今夜の君」

「ええ。また、お会いしましょう。教師として」


微笑んで、ハイネは立ち上がる。

ゆっくりとドアへ向かう背中に、ヴィクトールはそっと目を伏せた。


閉じられた扉の向こうに、まだ“愛している”が残っていたとしても。

それはきっと、もう二度と口にされない。


──これは、永遠に覚めない“夢の記憶”として。

ふたりの胸に、そっと閉じ込められたままだった。

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