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それにアトラスが言ったように、やっぱり身体が震えている。寒いから?それとも身体を強く打ったから? 額は切れて痛いが頭は痛くない。強く打っていないはずだが急に不安になる。
雨が止みそうにないけど、できれば早く城に戻って医師に診てもらいたいと焦ってきた。
リオの魔法は、打撲や切り傷、骨折などは治せる。しかし身体の中の傷や病は治せない。だから気分が悪い今の状態が、原因がわからなくてとても怖い。
リオが倒れたことで、ギデオンがすぐにリオを抱えて小屋から飛び出そうとした。それをアトラスが必死で止める。
「ギデオン様!こんな雨の中連れ出したら、もっと具合が悪くなります!無理をさせちゃダメです!」
「しかし、こんなに苦しそうにしている。何かあったらどうする!」
「わかりますけど!ほら!あちらの空が明るくなってきてます!せめて小雨になるまで待ちましょう!」
「くそっ!なぜここには消毒薬しかないのか。万能薬を常備しておくべきだ」
二人が騒がしく揉めているのを、リオは目を閉じて聞いていた。
ギデオンの焦った様子が珍しかった。いつも冷静沈着なのに。こんな風に焦ることもあるんだと可笑しかった。でも笑う気力がなくて、声をかけることもできなくて、静かに呼吸を繰り返していた。
そんなリオの顔を、アンが心配そうな声を出して何度も舐めた。
しばらく休んでいると、雨足が弱まってきたため、城に戻ることになった。
小屋に常備していた水を弾くマントで包まれ、再びギデオンに背負われて小屋を出る。
わざわざギデオンが背負わなくてもいいのにと思ったけど、アトラスが「ギデオン様、すいません。俺、力が弱いから…」と話しているのを聞いて納得した。
馬はアトラスが小屋の外に繋いでくれていた。崖の上から連れて来てくれていたのだ。
アトラスが騎乗しながら器用にリオの馬を引きく。
リオはアンと共にギデオンの馬に乗る。いつもは前を向いて乗っているけど、体調が悪く自分でしっかりと座れないために、向かい合った状態で乗る。
ギデオンがリオの腰を引き寄せる。
リオに抱きかかえられたアンが、リオとギデオンに挟まれて|窮屈《きゅうくつ》そうだ。
リオは、アンが|潰《つぶ》されないように、少し身体をずらせた。
「リオ、遠慮なく俺にもたれかかれ。しっかりと支えてはいるが、できればおまえも俺の背中に抱きついていろ」
「ん…わかった」
「では行くぞ」
「はい…」
リオがギデオンの肩に頭を寄せると、馬がゆっくりと歩き出した。