テラーノベル
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『当たり前』
ー
『ねぇ、亮平』
『ん?』
『僕、もう疲れちゃったよ』
『え?』
『なんで?どうしたの?』
『いじめられてる』
『もう、居なくなりたい』
『亮平は、僕が死んだらやだ?』
『そりゃ嫌だよ 』
『やめて、死なないで』
『ごめんね』
『もう、だめかもしれない』
あの日、ラウールはそんな言葉を残して、
学校から、そして
世界から姿を消した。
それからは毎日が、音のない時間だった。
蝉の声も、クラスメイトの笑い声も、
阿部の耳には届かなかった。
ー
「……〇〇、お前だろ?」
「え?何が?笑」
阿部は、ある日屋上で〇〇に声をかけた。
夕焼けが、二人の影を長く伸ばしている。
「ラウールに、何してた? 」
「別に何もしてねぇけど 笑」
〇〇は笑っていたが、顔は青ざめていた。
「嘘だよね。」
ー
「…はっ、?笑」
「いや、証拠は?無いだろ?笑」
「全部、知ってるから。 」
ラウールからもらったスマホのスクショ。
廊下で隠れて撮られた動画。
〇〇がラウールに投げた言葉の記録。
全部、残っている。
「もうさ…隠さなくていいよ、」
「ラウールが居なくなったの、」
「お前のせいだよね。」
「……」
〇〇の唇が震えた。
阿部は、ゆっくり言葉を紡ぐ。
「人の命より重いものなんて無いって、ずっと思ってたけど。」
「でも、ラウールを壊したお前には、」
「その重み、分かんないだろ。」
〇〇は逃げようとしたが、阿部は動かない。
「大丈夫だよ、俺は手出さない。」
「でも、」
「お前はきっと、勝手に壊れてくよ。」
「だって、心って…簡単に壊れるから。」
ー
それは、曇りの空の日だった。
教室の空気が、異様に静かだった。
「〇〇が、居なくなったらしいよ。」
誰かが小さな声で言った。
「……え?」
「昨日の夜、って。」
「…事故?」
「…ううん、」
「自殺だって。」
その言葉に、クラスの空気がひやりと冷えた。
でも阿部は、何も言わなかった。
ー
昼休みになって、阿部は屋上に上がった。
ラウールが好きだった場所。
風が吹いて、シャツの裾が揺れた。
ポケットの中のスマホが重く感じる。
画面には、数日前〇〇に送ったメッセージの履歴が残っていた。
_『ラウールが居なくなったの、誰のせいだと思う?』
_『俺は忘れないよ。』
_『お前が殺したんだから。』
阿部は、フェンス越しに空を見上げた。
雲の隙間から、うっすらと光が差している。
ー
「…これで、終わり、?」
「〇〇は…俺のせいで、、」
「死んだの、?」
心の中でそう呟いた瞬間、
胸の奥から言葉がこぼれた。
「……ごめん。」
「ごめんなさい。」
ー
でもその声は、どこか上滑りしていた。
本当に謝っているのか、自分でも分からない。
少しだけ、涙が滲んだ。
でも、それもすぐに引っ込めた。
ー
「なんてね。」
「そんな訳無いじゃん 笑」
「ラウールを苦しめたやつに、
俺が同情する訳無くない?笑」
「嘘だよ 笑」
「ぜーんぶ嘘 笑」
ー
フェンスの向こう側、遠くの街を見下ろす。
「自分で選んだんだよ、〇〇は。」
「ラウールにした事と同じだよ、」
「だっさ、アイツ 笑」
「ラウールに平気でしてた事、
自分がされたらフツーに死ぬんかよ 笑」
阿部は、足元の影を見つめた。
「まぁ、死んで当たり前か 笑」
「俺はただ、
“同じ気持ち”を味わわせてあげただけ。」
胸の奥は、空っぽのままだった。
でも、それでいいと思った。
「ラウール。」
「これで、良かったよね 笑」
世界は静かだった。
誰も阿部の本心には気付かない。
それでいい。
だって、これは「祈り」なんかじゃない。
「俺は、後悔なんてしてないよ。笑」
ー
コメント
12件
最高かよ!!!!はちの作品まじで好き!!感動系はだいたい泣いてるよ😭😭😭 はちの作品は人の心をつかむよね!ほんとにすごい!!これからもたくさんみるぞぉぉぉぉ!
あべべのラウちゃん愛、好き
なんかはちさん最近、感動系しか作らないから大変な事があったのか心配...あっ、でもSixTONESのBL作ってたか...笑