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「あぁ〜…ダリィ〜…」
朱灯穂(ゆうほ)がイスの背もたれに後頭部を乗せるように、全身脱力しながら言う。
星之光高校はお昼ご飯の時間。午前の授業が終わり、まだここから午後の授業が待っており
星之光高校はそこからさらに自分の選択した専門コースの授業も待ち受けている。
「マジダリィ〜…」
「お昼食べよ」
翔歩人(かあと)がお弁当を取り出す。
「かーとー。なんか食わしてー」
「出た。朱灯穂の口癖」
と笑いながら言う誉繁(よはん)。
「いやぁ〜。かーとの作るやつは愛(ねっとりと強調した言い方)が込もってるから」
「朱灯穂のお母さんの作るお弁当も愛込もってるでしょ」
「あぁ〜?あれの愛入っててもなぁ〜」
と言う朱灯穂。
「大事だよぉ〜。僕たち地方組は母の愛もらえないんだからぁ〜」
と言う涼鈴(すず)。
「そうだよ?」
と言う翔歩人。
「涼鈴とかーとがそれ言う?お母さんも「私より料理うまいのになんで私が作らないといけないの!!
なんなら私の昼も作ってって」って言うだろ」
なんて朱灯穂が言っていると
「なんで2年でオレだけクラス違うんだよ」
とぶつぶつ文句を言いながら教室に来て翔歩人たちに合流する庵(あん)。
「おぉ〜庵〜、相変わらずクラスでボッチかぁ〜」
と相変わらずイスの背もたれに後頭部を乗せている朱灯穂が笑いながら言う。
「うるせぇ」
1年生の頃、庵と翔歩人と朱灯穂と誉繁は同じクラスで
涼鈴は違うクラスだったが、翔歩人と同じ料理人コースで仲良くなり
一緒に過ごすようになって、5人がいつメン(いつものメンバー)となった。
そして2年生になってクラス替え。翔歩人と朱灯穂と誉繁は奇跡的に同じクラスで
そこに1年生のとき違うクラスだった涼鈴が同じクラスになった。
その代わり、1年生のとき同じクラスだった庵だけが別のクラスになったのだ。
「意味わかんねぇ。なんで涼鈴が同じクラスになったのに、オレが追い出されんだよ」
ぶつくさ文句を言いながら近くのイスを借りて座る庵。
「神様が文句の多い庵に試練を与えたんでしょ、うん」
と祈りのポーズをしながら言う朱灯穂。
「最悪すぎる。マンガとかアニメではないからね。いつメンが離れるって。
意味わかんないもん。いつメンだよ?そこでストーリーが生まれるのよ?日常ものって。
もし仮に神様がヲタクで、オレたちのストーリーを描いてるんだとしたら、マジでセンスないわ」
「いや、逆にセンスあるだろ。…庵だけ…別クラスって…」
笑いを押し殺しながら喋る朱灯穂。
「おい」
「ごめんごめん…」
「でも別のクラスにしたからこそ生まれるストーリーもあるかもよ?」
と誉繁が言う。
「あぁ、河野さんと石川くんみたいな?」
「誰だよ」
「また作品の話でしょ」
「まあ、そう考えると確かにね?同じクラスの吉川さんが実は石川くんを…みたいなね?
でも石川くんは吉川さんにも河野さんにも心揺れてて
河野さんはクラス違うから、クラスでの石川くんを知らなくて…みたいなね?
まあ、恋愛面においてはいろいろいいかもしれないよね。
…でも今思うと河野さんが成就せずに傷ついて終わったんだよなぁ〜。
河野さん応援派もいたはずだけど、やっぱ作者様が神様だからね。
神様が作り出す世界だから、あーだこーだ言うのはさすがにね。作者様には作者様の構成があるんだろうし。
ただ…やっぱ傷つけなくてもよかったんじゃない?とは思っちゃうよねぇ〜。
2、1(にーいち(女子2人に対して男子1人のこと))でもそう思うんだから
やっぱ世の中のハーレムものって、控えめに言ってクソだよね」
と庵の二次元評論を受け流しながらそれぞれ話しをしてお昼ご飯を食べ終えた。
「あぁ〜…。マジダルい。午後の授業消えてくんねぇかなぁ〜…」
と言う朱灯穂に
「わかる」
と同意する誉繁。
「な。午後の授業すっとばして実習(専門コースの授業のこと)行きてぇわ」
「それな。オレもゲーム作り早くしたい」
「ま、正味オレのこの才能なら?練習なんぞせんでもいけると思うけどな」
「歌手コースってなにやんの?」
「喉のウォームアップ、音程の調整、あとは高い声とか低い声出したい人はその練習
アコギ、もしくはキーボードの練習、あとは流行ってる曲の、人の心を掴むポイントを勉強したり
それを踏まえて作詞作曲してみたり、かな」
「めっちゃ必要じゃん」
「ま、オレレベルだと?喉のウォームアップだけで充分よ」
「あ、そういえば今日特別講師来るって言ってたな」
と庵が呟く。
「特別講師?漫画家?イラストレーター?アニメーター?小説家?」
「なんで小説家とかアニメーター出てくんの。ふつーに漫画家でしょ。去年もそうだったし」
「よかったじゃぁ〜ん。憧れのマンガ家様!に会えるってわけだ」
と「マンガ家様!」と言うときに拝むようなポーズをしながら言う朱灯穂。
「まあぁ〜…。人によるかな。ハーレムもの描いてる人は全然ありがたくない。
今だとぉ〜…。あれだな。「本末くんっ!!転倒しすぎですっ!!」の作者様のマッキー様か
「猫に異常にモテる椏旅くん!!」の作者様の華橋(かきょう)様かな。
あ、「猫モテ(「猫に異常にモテる椏旅くん!!」の略称)」は少女漫画なんだけど
少女漫画脳のバカみたいなストーリーじゃなくて
どちらかといえば日常ラブコメのような、なんとかくんシリーズのような
マンガ、アニメ、二次元という媒体の良さ
少しばかり非現実的な出来事をおもしろおかしくストーリーに組み込みつつ
ディテール、ピアスだったり服だったり、髪のブリーチ、カラーリングの大変さとか
そういう細かいところはしっかりしてる珍しいタイプの少女漫画。
やっぱ少女漫画もさ?ディテールとか大事じゃん?
そもそもの話の根本にリアリティーなかったら、3話切りどころか、1話冒頭切りじゃん?
だから最近は転生もの、異世界ものとかが多いんだよ。異世界ならどんなんでも
その世界ではそういうのが当たり前な世界って設定で通せるから。
なんか推しのアイドルのハウスキーパーだったとか?ないないないない!
よく考えたらわかることじゃん?推しのアイドルが幼馴染とかはまだあるじゃん?
隣に引っ越してきた人が推しだったとかも…まあ、あるかもじゃん?可能性低杉晋助だけど。
女性アイドルのハウスキーパーを若い男子、しかも高校生がする?ないないないない!
普通は事務所サイドが同性の、少し年齢高めの人にしてくださいってお願いするって。
その反対の男性アイドルのハウスキーパーを若い女性がするもない。
家上がり込んで、2人っきりでなんか間違いあったら終わりでしょ。
男子なんて性欲強いんだから。女性アイドル襲ってThe(ジ)end(エンド)だって。
エロマンガかっての。エロマンガならありだわその設定。
あと最近流行りの「お試しで付き合う」とか。どんな世界だよ。
ま、オレが知らないだけで、陽キャの世界では当たり前なのかもしれんけど。
だから「少女漫画脳」なんてバカにされた言い方されるんだよ。
だからちゃんとしてる漫画家が特別講師なら最高に嬉しい」
庵の長い講演を傍目に各自いろいろ話しているとお昼の時間が終わり
「マジなんでオレだけ別のクラスなんだよ」
と文句を言いながら庵だけ教室を出て、自分の教室に戻っていった。午後1発目の授業、翔歩人はスマホを
机の教科書などを入れる部分、先生からは見えない太ももの上でいじる。
すると翔歩人の彼女である真夜衣からLIMEが届いていた。
真夜衣「今日も遅い?」
なんか同棲しているような感じの文にドキッっとする翔歩人。朱灯穂はその表情を見逃さなかった。
真夜衣からのメッセージに返信しようとすると、スマホの画面の上に朱灯穂からのメッセージが届いた。
朱灯穂「彼女かー」
パッっと朱灯穂のほうを見た。
すると朱灯穂はワイヤレスイヤホンを右耳だけにつけて音楽を聴きながら翔歩人を見てニヤッっと笑った。
翔歩人「まあね」
と送って朱灯穂見ると、朱灯穂は教科書の下にスマホを隠しており
教科書を少しズラしてメッセージが来たのを確認して
スマホを教科書とノート挟むようにして、スマホは筆箱で隠れるようにして
ペンを持って、まるでノートに文字を書くようにスマホをいじる。
メッセージを確認した朱灯穂は翔歩人のほうを見て
片眉を下げた、おちょけた感じの「は?」という表情をしながら舌を出す。
それを見て笑う翔歩人。真夜衣に返信をする。
翔歩人「うん。今日も実習あるからちょっと遅い」
というメッセージを受け取った真夜衣。真夜衣も翔歩人と同じように
机の教科書などを入れる部分、先生からは見えない太ももの上でいじっていた。
遅いのか
と思い、右の頬に空気を含んで右の頬だけを膨らませる真夜衣。
するとスマホの上部に通知が届く。同じ中学だった紗夜(さや)からだった。
紗夜「暇すぎる。電話してい?」
というメッセージに
いいわけないだろ
と思う真夜衣。なので逆にかけてやった。すぐに切られた。そして
紗夜「バカじゃね?」
と来た。なので
真夜衣「かけてくるって言うからかけてやった」
と送った。
紗夜「冗談に決まってね?」
と来たので、それには返さず、翔歩人に返信することにした。
真夜衣「何時くらいに終わりそ?」
と送った。しかし翔歩人は割りかし真面目な部類の生徒なので
授業の最初にスマホを確認しただけで、5時間の授業が終わるまで返信が返ってくることはなかった。
5時間目の授業が終わってすぐに翔歩人に朱灯穂が絡んでくる。
「こぉ〜いつぅ〜」
その様子に誉繁は
「あぁ。もしかして彼女?」
と察する。
「そぉ〜。こいつ授業中に彼女とLIMEしてやがんの」
「あら。悪い子だ」
「そ。しかもめっちゃ幸せそう」
「幸せです」
とどこか少し照れながら言う翔歩人に
「マジこいつぅ〜」
と戯れ付く朱灯穂。
「でもあんなギャルとかーとが付き合うとはな。マジで意外すぎたわ」
「たまたま好きになった人がギャルだったってだけで。
しかもオレがあんま恋愛してこなかったからリードしてもらってる感じ」
「なんそれ。エロいんだけど」
「どこがよ」
なんて話して、6時間の授業の準備をする。そして授業が始まってメッセージを確認する。すると真夜衣から
真夜衣「何時くらいに終わりそ?」
と来ていたのでそれに返信した。星之光高校も達磨ノ目高校も午後の授業が終わり、帰りのホームルームへ。
帰りのホームルームも終わって、星之光高校の生徒たちは、帰るわけではなく
専門コースの授業、実習と呼ばれるものへと向かう。
しかし寮に住んでいる者は一旦帰れるくらいの時間はある。
なので翔歩人も涼鈴も庵も一度寮に戻って荷物を置く。
そのときなぜか朱灯穂も誉繁もついてくるのが定番となっている。
「なるほどぉ〜。かーとはここで彼女とあんなことやこんなことを」
と朱灯穂が翔歩人の部屋に入って呟く。
「してないし、基本的に異性が入るのも厳しいし、泊まることなんてまあ無理」
「そうなんだ?」
「朱灯穂も寮入るとき、毎回うち(星之光高校)の学生証提示求められるでしょ」
「あぁ」
「うち(星之光高校)の生徒だからあれだけど
部外者が寮に入るときは、基本的に名前と電話番号書かないといけないんだからね」
「ガチ?」
「ガチ」
「うぅ〜わ。そりゃー彼女呼べんな」
「そうなのさ」
「せっかく一人暮らしみたいなもんなのに」
「…一人暮らしかな?真隣とか真正面に知り合いいまくりなんだけど」
星之光高校の寮は1人1部屋が割り当てられており、その代わり1部屋がそこそこ狭い。
もちろん男子寮、女子寮と別れているため、男女のあれやこれやは難しい環境なのだ。
「うぅ〜わ。寮って若干憧れてたけど、寮は寮で大変だな」
「そうだよ」
「へぇ〜。じゃあさ」
と朱灯穂が下ネタを話し始めたので、達磨ノ目高校の真夜衣のほうへと移ります。
「まあぁ〜よ」
とルビーが真夜衣の席に近づいてくる。
「ん?」
「今日ちょっと残れーる?」
「入れとこ、エ○エール。みたいに言うなよ」
「うまいねぇ〜」
「ま、多少は」
「今日も彼ぴっぴと会うの?」
「うん。でも遅くなるらしいから、少しなら残れるけど」
「なんか今の言い方、新婚の夫婦のそれよね」
「そお?で?どしたん?」
「いやぁ〜、うち(達磨ノ目高校)も祭りが近くなってきたじゃないですかぁ〜」
「あぁ。体育祭ね」
「んでさぁ〜あ?円んとこのクラスの旗のデザイン偵察してきてほしいのよ」
「なんで私」
「大ギャル小ギャルコンビの仲じゃん」
「“だった”だけどね」
「去年はまどまよコンビの旗だったじゃん?今年は2人クラス違うし
うち(のクラス)はどうしようかなってさ。だから参考がてら敵城視察に」
と言うルビーに
「しゃーない。ルビー様のおおせのままに」
と言って立ち上がる真夜衣。
「いいね、「ルビー様のおおせのままに」。なんかマンガタイトルっぽい」
「出た、ルビーの二次元病」
と真夜衣が言うと
「いやぁ〜、ありがとうございます」
と照れながら、後頭部を掻きながら笑うルビー。
「褒めてはないけど」
「え?ヲタクに「ヲタクですね」は褒め言葉よ?」
「あ、そうなん」
と真夜衣は他クラスの敵城視察に向かった。
一方、星之光高校はそれぞれの専門コースの授業が始まっており
翔歩人と涼鈴は調理室で料理について学んでおり、朱灯穂は同じ歌手コースのみんなの前で歌っていた。
誉繁はゲーム作りをチームで行っており、アイデアを書いた紙を忘れたと言って寮に取りに戻った。
寮に戻る道中、中庭に庵を発見した。寮には行かず、中庭に出る誉繁。
「あーん」
「お、誉繁。どしたん」
「いやいや。こっちのセリフ」
「あぁ。バカ姉が言うところの「いやいや、Me too」だ」
「…うん。わからんけどそれ。どしたん?今日特別講師が来てくれるんでしょ?てか今よゆーで実習中でしょ」
「うん。よゆーで実習中」
「なおさらどうしたん?」
「…」
ため息までいかないが、息を吐き
「それがさ?」
と話し始めた。
庵の専門コース、マンガ・イラストコースで、今回はマンガ家志望とイラストレーター志望で別れ
イラストレーター志望の生徒たちは、いつもと変わらずイラストを描く実習
そしてマンガ家志望の生徒たちはスクリーンのあるちょっとした多目的室に集められた。
そして教室を暗くして、スクリーンに映し出されたのはその人の代表作の1巻の表紙だった。
タイトルは「陰キャのオレに惚れた陽キャな彼女たち」。庵は
うぅ〜っわ
と思った。「陰キャのオレに惚れた陽キャな彼女たち」を軽く説明すると
タイトルの通り、陰キャラの主人公がひょんなことから同じクラスのカースト上位の女の子や他クラスのギャル
はたまた他校の子まで、陽キャラの女の子たちと関わり合い持つことになる。
そして陽キャラの彼女たちが陰キャラである主人公に惚れるというハーレムマンガである。
「陰オレ陽カノ」という略され方をされ、アニメ化もされており
アニメ放送期には「陰オレ陽カノ」がポツッターのトレンドになるほどの人気作。
さらにアニメは第二期の制作も決まっている。教室内は
「えぇ〜!?」
「マジ!?」
「きゃぁ〜!!」
などの黄色い歓声が上がっていた。庵は1人苦い顔をしていた。
作者である「雲街ハト」さんが通話でいろいろ教えてくれる。という特別授業だった。
「あっ、あっ…。えぇ〜。星之光高校のマンガ家コースの皆さん初めまして。
マンガ家をさせてもらってます、雲街ハトと申します。
ありがたいことに、恐縮ながら特別講師としてお声がけしていただき
本日、特別講師として招いていただきました。
マンガ家を目指す皆さんの助けになればと思います。よろしくお願いします」
と雲街ハトが言うと
「「よろしくお願いします」」
と教室内の生徒、そして先生も声を揃えて言う。
庵は言っているのか言っていないのかわからなくらいぼそっっと言った。
できる限り質問には答えてくれるということだったので、庵は手を挙げ質問をすることにした。
「質問です。先生は自分が生み出した可愛い子たちを不幸せにして楽しいですか?」
「…え?」
教室内も少し騒ついた。
「自分で生み出したキャラクターたちは可愛いと思ってますか?」
「え、えぇ。はい、もちろん。可愛いと思ってます」
「じゃあなんでそんな可愛い子たちをハーレムとかいうクソみたいなコンテンツで
傷つけることを選んだんですか?」
「クs…いや…えぇ〜…」
「自分ヲタク歴短いほうだと思います。ただハーレムものの主人公に毎回腹立ってるんですよね。
先生も高校生だったときありますよね?だったらわかるはずです。
高校って3年間しかないんですよ。ま、留年とかあるならもっとありますけど。
とにかく学生の時間って限られてるんですよ。それを主人公に惚れた女の子がたくさんいて?
主人公は受け入れもしない、フりもしない、ただただ女の子が好きっていう状況を続けて
女の子たちの貴重な時間をただただ浪費してるだけなんですよ。
主人公、控えめにいってクソみたいな男ですよ」
「…あ…」
「自分も陰キャですけど、基本的にマンガ家は陰キャだと自分は思ってるんです。
間違ってたら申し訳ないです。陰キャが理想の世界をマンガとして描(えが)くってのは別にいいと思うんです。
ただ、ハーレムだとかは異世界でやればいいじゃないですか?なんでわざわざ現世に近い世界で描くんですか?
「あぁ〜、萌えぇ〜」とかいうヲタクのほうが今は少ないんですよ。
いいですよ?現世に近い、別の世界で描くのは。マンガタイムさららとかそうですからね?
心がぴょんぴょんするあの作品も、緊張したら案山子になってしまうあの作品も
現世にありそうな世界だけど、別の、ファンシーな世界の日常譚なんですよ。
ま、最近はバンドをテーマにした作品なんかは、動画投稿サイトに投稿した動画が伸びすぎてて
「現実味無さすぎ」「バカじゃね?」とかネタにされがちのあの作品は
下牙沢(しもきばざわ)とかを舞台にしてますし
キャンプをテーマにした一世風靡して、映画までやったら
映画は全然ゆるくない、“ガチすぎて”不評だった作品とかも山梨を舞台にしてますし
同じ作者様のカメラ&映画?なのかな?をテーマにした作品も山梨を舞台にしてますからね。
ま、マンガ家志望の身としては、マンガ家としてとんとん拍子で進んでる感じは気に食わないんですけど
あ、勘違いしないでほしいんですけど、カメラ&映画をテーマにしてる作品も
同じ作者様のキャンプをテーマにした作品も好きなんです。
あとマンガ家志望の子が旅に出るって作品も、あれも、なんか簡単にアシの仕事とかほざいてるし
十代で新人賞を獲ったことを軽く描いてて好きじゃないんですけど
あれも基本東京ベースに各地を旅するっていう、現世を舞台にしてますけどね?
でも一概に言えるのが、現世を舞台にしてるのに
ディテールに拘ってないと、こちら側(読者、もしくは視聴者)も一気に冷めるってことです。
雲街さんの「陰オレ陽カノ(「陰キャのオレに惚れた陽キャな彼女たち」の略称)に出てくるギャルの子
ピアスしてますよね?」
「え、あ、はい」
「あの耳たぶのピアスデカすぎじゃないですか?」
「デカすぎ、ですか」
「少し考えたらわかりません?わかりますよ?
陰キャでピアスにもギャルにも縁がないからよくわかんないっての。自分もそうですから。
でも、それでも耳たぶにあんなデカいピアスしたら顔の輪郭
顎のエラ部分にあたるってのは少し考えたらわかることですよね?大きくても耳たぶの幅
縦にすれば手前も奥行きもあるから大きなリングピアスとかもできるんでしょうけどね?
ピアスの位置だって「激痛!!ピアスくん」と「激痛!!ピアスちゃん」読んだら
不自然な位置にピアスしてるマンガが多すぎるって言ってましたし。
「激痛!!ピアスくん」と「激痛!!ピアスちゃん」の作者様も言ってましたよ?無理してピアス描くなって。
陰キャが知りもしないのに背伸びして描くなってことですよ。
我々ヲタクが最も好きじゃないことじゃないですか?知ったかぶりで語ること。
ヲタクが最も好きじゃないのが“ニワカ”じゃないですか。それをやってるんですよ。
髪のブリーチとかカラーの大変さも知らない。ブリーチしたら頭皮痛いこと。
ブリーチも重ねれば痛みに慣れること。ブリーチ剤の臭いが数日残ること。
ブリーチ剤についてるコンディショナーの匂いとか髪の元の色素によっては色が抜けづらいこと。
二次元の世界って白髪キャラとかよゆーでいるじゃないですか?いいんですよ?別に。キャラの個性として。
でもストーリーの中で髪の色に触れちゃダメですよ。
白髪にする大変さとかいうリアリティーを我々陰キャラは知らないんですから。
だからあくまでもその世界でのそのキャラクターはその髪色なんだっていう“大前提”での上で
当たり前のように、髪色に触れずにストーリー進行していけばいいんですよ。
青髪のキャラもいますよね?それも先程言ったように、髪色に触れなきゃいいんですよ。
触れたらダメです。青が色落ち激しいこととか。緑っぽくなっちゃうこととか知らないでしょ?
インナーカラーとか描きたががるけど、セルフでやる場合の、ブロッキングの大変さとか
微妙な拘りがあるとか知らないでしょ?そりゃーそうですよ。
だって髪ブリーチしたことも染めたこともない陰キャなんですから。自分もそうですよ。
自分はありがたいことに、同じ高校の友達に陽キャ(朱灯穂)いるので
そーゆーカラーやブリーチの大変さとか聞けますけど
マンガを描くので精一杯な先生たちは、そーゆーの教えてくれる陽キャラの友達とかいないでしょ?
だったら無理に描くなって話なんですよ。じゃあ、なにを描けって?
背伸びしない、身の丈に合った面白いマンガを描けばいいんですよ。
たっくさんありますよ?天然の上司に出会った会社員の話とか
田舎から出てきた女の子が、その純粋さと素朴さで、無意識に良いことを言いまくって
都会っ子のイケメン男子が惚れるスキップしたくなる話だったり。
あとは純粋にスポ根ですかね。ま、スポ根は描写とかルール把握とか
それこそリアリティー出すのとか、いろいろ大変でしょうけど。
ハーレムものとか描いてる人が一番やらない、調べるってことを徹底してやってる
変態ですけど尊敬できるマンガ家様ですからね、スポーツマンガ描いてる漫画家様って。
それが無理なら異世界転生とかバトルものとかにすればいいんじゃないですか?
ま、あれも描くの大変でしょうけどね。設定とか忘れたりしたら話の繋がりめちゃくちゃになりますし
伏線張って回収するところを考えて描かないといけないんですから。
それができないって逃げで描くのがハーレムなんですよ。
あとはバカな釣りエロが多いラノベ原作のやつ。パンチラとか胸チラとか。アホでしょ。
なんでキャンプでパンツ見せて「キャー」って。いる?あのシーンいる?って心の底から思いましたもん。
せっかくその先のストーリー面白いのに「うぅ〜っわ。クソ釣りエロだ」って離脱した人多いっすよ?
自分も「キンモッ」って思って離脱しそうになりましたもん。目瞑って見続けましたけど。
そしたらおもしろいんですよ。なおさら第1話冒頭の釣りエロ、ガチでいらないなって腹立ちましたけど。
しかも、あんなパンチラとか胸チラとかする軽い女子、メダカどころかオタマジャクシすら惚れませんよ?
ただのビ○チ認定で、隙多すぎてヤンキーに目つけられてヤリ捨てされるだけでしょ。
バカでしょ?「ウッホ。パンツだぁ〜」とかいうヲタクのほうが少ないんですよ。
…いや、ヲタクもマンガ家もだいたい陰キャだからパンツとか谷間で興奮して見るのか。
でも、そんなん見るくらいなら普通にエロマンガ読みますけどね。
日常譚とかラブコメ、ましてはキャンプとかそういう、ジャンルに焦点あてるマンガに
エロはマッ、ジッ、で、いらないんすよ。クソ邪魔です。
安易な釣りのためだけに入れるエロはマジで今後、後悔することになります。
わかりますけどね?読んでもらいたい一心で、エロ要素入れちゃう気持ち。ただ、せっかくの良いストーリーが
ほんの一瞬の気の迷いで入れた釣りエロのせいで残念なことになってしまうんですよ。
だから、ギャル描きたいならギャルについて調べる。ピアスについて調べる。
ファッションについて調べる。それが面倒なら異世界にしてください。
異世界ならバカな釣りエロも、この世界では当たり前なのかな?って流せるんで。
ピアスが不自然な位置にあっても、この世界ではそうなのかな?って思うんで。
ハーレムでも、海外で一夫多妻制度があるように
この世界では女の子にたくさん言い寄られても、全員と付き合えて
全員と結婚できるんだ。傷つく子いないんだ。あぁ〜ハッピーってなるんで。
もしかして雲街さんは、自分が生み出した可愛い子が精神的に傷つくことで興奮するんですか?
オ○ニーじゃないですか。それをマンガにして見てもらって金も貰って、アニメ化もされてんすか?
ヤバすぎでしょ。「これだからヲタクは」とか言われんすよ。少女漫画もそうっすよ。
バカな設定とか、少し考えれば「ないよな」っていう設定なのに、それで突き進んで後悔する。
だから「少女漫画脳」とかバカにされんすよ。今のヲタクバカにしないほうがいいですよ?
だからそれを理解してる漫画家様は、異世界ものや転生ものを描くんですよ。
あれならリアリティーなくて現実味なくても「そりゃーそうでしょ。別の世界なんだから」って言えますし
読者、視聴者側も納得して読める、見れるんで。そんな陰キャが無理して、背伸びして
ディテール拘ってない作品ばっか描くから二次元離れが深刻化していくんですよ。
もっといないんすか?マッキー様とか華僑様のような、現世での日常、ラブコメを
リアリティーを持ってが現実味がある、「あぁ〜、もしかしたら数時間前にあのキャラたちが
ここであんな日常を繰り広げていたのかもしれない!」って陰キャのオレたちが
現世界に希望を抱ける作品を描ける漫画家様は」
というところで先生が庵の近くへ来て「今日はもう帰っていいよ」頑張って作った、引き攣った笑顔で言われて
寮に帰る途中、中庭に行ったのだ。
「って感じでさ」
とだいたいのことをおおまかに話した庵。
「おぉ…。それは喰らっただろうね。雲街さん?だっけ?」
「そ」
庵はタブレットで「陰キャなオレに惚れた陽キャな彼女たち」を検索して、1巻の表紙絵を涼鈴に見せた。
「この人」
「へぇ〜。知らない」
「だろうね。萌え豚御用達みたいなマンガだし」
と言いながら、検索履歴から「陰オレ陽カノ」を消す庵。庵の発言を聞いて思わず笑う涼鈴。
「なっ、なに」
「いや、ごめんごめん。庵の口の悪さがおもしろくなっちゃって」
「…。ま、直さないとは思うんだけどね」
と庵が言うと
「え、別にいいんじゃない?」
と言う涼鈴。そして続ける。
「オレたち、庵の口悪いとこも好きだし、ってかオレたちには悪口言わないしね。
それにそんだけ熱を入れられるくらい好きってことでしょ?」
「…まあぁ〜…」
「それに、そこまで言うってことは
今活躍してるマンガ家をあっと言わせる、めっちゃいいマンガ描くってことだもんね?」
と言う涼鈴に
「うっ…。まあ…そうね…」
と言う庵。
「オレもそうだもん。あ、いや、オレの場合は庵と違って、lどこのゲーム会社に文句もないんだけどね?」
と焦って否定する涼鈴。
「ただオレの場合、配信者サイドに文句があってさ?
たとえば、ま、もちろん制作会社の対応が悪いケースもあるんだけど
大概さ?ゲーム作りのいろはも知らない配信者がさ?バグとか
OP(OverPower(ゲームバランスを壊すような強キャラや強武器や強アイテムのこと)の略)とか
そういうのを見つけては、ま、見つけることはいいことなんだけどね?
だけどすぐ「おい、運営しっかりしろよ」とか「テストしたんか?」とか言ってるけど
修正するのだって大変なんだよ?そのパッチの大変さを知らない上に
ゲーム会社はそのゲームしか作ってないと思ってるけど
何百本ものゲームを抱えて、常に新しいゲームを作ろうとしてて
その上で、今まで世に出した何百本のゲームのアップデートとかパッチのために働かなくちゃいけない。
ま、もちろんゲームクリエイターはそれも仕事だけど
その大変さを理解してないのに文句ばっか言うなって思う。
しかも配信者なんてさ?ゲームして金貰ってんだよ?
お前うちのゲームきっかけで有名になったくせに、文句ばっか言うなよって。
ま、いまだにプレイし続けてくれてる+課金してくれてるんだから、なんとも言えないんだけどね。
だからオレはそんな大変さを理解した上で、ゲームのありがたみを噛み締めてゲームしたいし
オレの頭の中のアイデアをゲームとして世に出したい。
無数のおもしろいゲームあるけどさ?ドストライクゲームがないのよ。
キャラが良くてもシステムが「うぅ〜ん」だったり、システムが刺さっても「キャラが…」だったりとか。
だからドストライクのゲームを作るんだ。ま、自己満だけどね」
と笑う涼鈴。
「やっぱなにかを生み出す人って、どんなジャンルでも似た思考になるのかもね。
自己満足の世界というか。自分が求めているものが世界にないから創り出すって」
「たしかに…。うっし」
と言って立ち上がる庵。
「オレ、マンガ業界変える!庵時代といってもいいくらい、ディテールに拘った
背伸びしない、でもおもしろいマンガを描きまくってやる!」
「おっ!よく言った」
と涼鈴が座りながら、庵を見上げながら手を叩く。
そんなことがあって、実習と呼ばれる専門コースの授業が終わり
達磨ノ目高校の真夜衣も、他クラスの敵城視察が失敗に終わり
「んじゃ。そろ(そろそろ)行くわ」
と真夜衣が帰る準備をする。
「んー。じゃ、また明日のー」
とルビーが言う。
「まよちゃん、また明日ね」
と詩衣も言う。
「ん。ルビーもうたいーもまたね」
と教室を出ていく寸前に
「あ、彼ぴっぴによろしくー」
とルビーが言う。
「知らんでしょ。ま、言っとくわ」
と笑いながら言って教室を出た。
真夜衣が星之光高校に向かうと、星之光高校の正門の前に翔歩人が立っていた。
「あ、ごめん。お待たせ」
「いや。全然」
「そ?じゃ、ファミレスでいい?」
「うん。行こっか」
という2人を教室から見ていた庵、朱灯穂、涼鈴、誉繁。
「くそっ。あぁ〜。オレも彼女ほしいぃ〜」
と嘆く朱灯穂。
「朱灯穂ならすぐ作れんじゃないの?」
と言う誉繁。
「まあなぁ〜」
と笑顔で言う朱灯穂。
「陽キャだ…」
と呟く庵。
「朱に交われば赤くなる、だよ?」
と庵に言う誉繁。
「無理無理無理無理。な?涼鈴」
「ん〜?なにがぁ〜?」
ぽわぽわしている涼鈴。
「朱(朱灯穂)に交わればオレ(朱灯穂)色になるってな?」
と全員をまとめるように、笑顔で全員の肩に腕を回す朱灯穂。
翔歩人と真夜衣はファミレスに着き、席について注文を済ませた。
ドリンクバーも頼んでおり、真夜衣が飲み物を取りに行って
真夜衣が帰ってきてから翔歩人が飲み物を取りに行った。
頼んでいたフライドポテトも届き、しばし2人の時間を過ごす。
今日の出来事、真夜衣は相変わらず授業がちんぷんかんぷんだったこと
体育祭に向けて旗作りが始まったことなどを話し
翔歩人は友達のこと、庵が好きなもの(二次元)に相変わらず文句を言っていたこと
朱灯穂が自分のお弁当を食べること、涼鈴が料理上手だということ
誉繁が今日もイケメンだったということを話した。
「翔歩人は?」
「ん?」
「友達の話ばっかじゃん。翔歩人はどんな1日だったの?」
「オレ?オレはぁ〜…。そんなみんなと楽しく過ごした?みたいな」
と言う翔歩人にクスッっと
「なんだそれ」
笑った。
「てかさ、前も聞いたけどさ?寮に私は入れないの?」
「入れないこともないんだけど…」
「うん。たしか前も聞いた気がする。でもダメな理由はなんなの?」
「真夜衣もオレも生きた心地しないと思うんだよね…」
「ん?どゆこと?」
「いや、うちの高校入るときも名前とか書いたでしょ?あの、去年の文化祭準備のとき」
「懐(なつ)ー。翔歩人と出会ったときだ」
「うん。まあ、正確にいえば中学一緒だから中学で出会ってるんだけどね」
「あぁ。ま、そうね。あぁ〜。うん。書いた書いた」
「寮に入るときも、もちろん書かされるの」
真夜衣はフライドポテトを食べながら
「…うん…。だろうね…」
と言う。
「で、きっちり17時…だっけな。18時かな?には出ていかないといけないんだよね」
「あへぇ〜。門限あんだ?あ、帰るんじゃなくて出るんだから逆門限か」
とフライドポテトを持ちながら言う真夜衣に
「そうだね」
と笑いながら言う翔歩人。
「へもさ(訳:でもさ)〜」
フライドポテトを咥えながら言う真夜衣。そして咥えていたフライドポテトを右手に持って
「ふつーじゃん?ま、そこまで厳しいとは知らんかったけど、寮なんだし」
と言う。
「でもさ?考えてみてよ」
と言う翔歩人にフライドポテトを食べる真夜衣。
「ん?」
「男子寮に女子が、しかも可愛い女子が来たら」
さりげなく「可愛い」と言う翔歩人に喰らい、不覚にもドキッっとする真夜衣。
「ひはあ(来たら)?」
「ドアの前にみんな張り付く」
「あぁ〜…」
と斜め上を見ながら言う真夜衣。
「だから、ま、入れるっちゃ入れるけど、なにもできないよ?」
と言う翔歩人に
「なにかする気だったのか」
とあまり表情は変わらないが、ニヤッっとする真夜衣。
「えっ、あ、いや…そんなことは…」
とドギマギして視線が泳ぎまくる翔歩人。
そんなこんなでファミレスでしばし話して、真夜衣を家まで送り届けた。
「いつもありがとね」
と真夜衣が翔歩人に言う。
「あ、いや。これくらいしかできないし」
「充分しょ」
「いや…。オレさ?今まで生きてきて、小学校、中学校と恋愛経験なくて。
ま、小学生のときは、ま、恋愛なんて気にする歳じゃ…。あ、でもクラスにはいたな。
なんか付き合ってるだのなんだのって子」
「私の小学校にもいたよ」
「ま、でも、オレは恋愛とかそういうのには縁がない小学生だったから。
で、中学生で東京に来て、寮で生活してて、中学のときからうち(星之光高校)の調理室とか使わせてもらってて
先輩とかに料理教わったりしてたから、中学でも恋愛とかに縁なくて
真夜衣が初めての彼女で。もっとカッコよくリードできたらいいんだけど…。
だから…ごめんね?真夜衣にリードされっぱなしの情けない彼氏で」
と言う翔歩人にそっっと抱きつく真夜衣。
「料理一筋だったから出会えたんでしょ。
それに私はリードしてるからカッコ良いとか、されてるからカッコ悪いとか思わないよ」
と胸元で言う真夜衣を
「…ありがとう」
と言って抱きしめる翔歩人。
「…。心臓はっや」
と笑う真夜衣。
「…言わないで」
照れる翔歩人。離れる2人。なんとなく気まずい。
「じゃ、また。LIMEする」
と言う真夜衣。
「あ、あぁ。うん。待ってる?」
と言う翔歩人にクスッっと笑って
「待ってて」
と言う真夜衣。そして真夜衣が家に帰って、翔歩人も寮に帰った。
寮に帰った翔歩人を待ち受けていたのは、庵と涼鈴と朱灯穂(電話)と誉繁(電話)による事情聴取だった。
そして夜ご飯を食べ終え、自分の部屋に戻り、電話をかける真夜衣。
「もっしぃ〜。どったん?てか授業中に電話してくんのやめろや」
相手は真夜衣の中学からの親友、紗夜(さや)だった。
「いや、電話したいって言ったの紗夜じゃん」
「冗談すぎるだろあんなん。で?どないしたん?」
「…。今日も言えなかった…」
と言いながら大きめのクッションを、あぐらをかく太ももの間で挟むようにする真夜衣。
「ん?言えんかっ、あぁ。まよが実は処女だって?」
「処女言うな」
「事実じゃん」
「せめて恋愛処女と言って」
「あぁ〜…。でもその言い方ビ○チ臭くね?」
「…たしかに…」
「でも言う必要ある?まよが恋愛処女だって」
「…。なんか騙してるみたいじゃん?」
「そお?…名前なんだっけ。ほ、ほ…」
「堀野里(ほりのり)翔歩人ね。同中(おなちゅう(同じ中学の略)なんだから覚えとけよ」
「まよも覚えてなかったくせにぃ〜」
「…うるさいな…」
「ま、将来のまよの苗字だもんね?覚えておかねば…」
「…」
ローテンションギャル、ダイナー系と呼ばれる類いの真夜衣はツッコみはしない。
「その堀野里きゅんが勘違いしてるだけなんだし、騙してるとは違うっしょ」
「…。まあぁ…そうなんだけどさ?…なんか…男子って元カレのこととか気にするって言うじゃん?」
「じゃん?って言われても。どこ情報?」
「ネット」
「あーね」
「言わないととは思うんだけどさぁ〜?…あぁ〜…なんで中学のとき恋愛の1つでもしなかったんだ、私は」
とクッションに頭をつける真夜衣。
「したかったん?」
「いや。今となっては翔歩人が初カレでよかったとは思うけどさ?」
「惚気かよ」
「中学のときは紗夜とのこと遊ぶのが楽しすぎたからなぁ〜」
「うーわっ。のこなっつ。…のこなっつだって。ココナッツみたいじゃね?」
と笑う紗夜。
「まのさんな」
「まのさん」とは中学のとき仲良かった3人の名前の頭文字
真夜衣の「ま」、のこの「の」、紗夜の「さ」に3人の「3(さん)」を組み合わせたもの。
「まのさん!なっつ!のこ元気にしてんかな?」
「さあ?連絡してないの?」
「してない。まよこそしてないん?」
「してない」
「ひさしぶりにまのさん集まるか。連絡してみよー」
「集まるかな。のこ腰重いし。…てかまのさんで彼氏いたののこだけじゃね?」
「あぁ〜。いたなぁ〜。お祝いしたなぁ〜」
「そーいや、のこの元カレの夏元、今同クラ(同じクラス)だわ」
「ガチ!?」
「んな驚くことか?」
「いやぁ〜。え、夏元くんどんな感じ?」
「中学と変わらん。陽キャって感じ」
「クラスの中心だ?」
「まあ。中学の頃からクラスの中心で、全員から人気だったからな」
「それがのこと…」
「のこふつーに可愛いし」
「まあぁね?でも、のこって顔はいいけど、ドオタだからな」
「あー、ね」
「今高校で仲良いやつもドオタなんだよなぁ〜」
「誰?」
「夜瑠(よる)。小木樽(おぎだる)夜瑠(よる)。覚えてる?」
「覚えてる覚えてる。へぇ〜。オタって感じしなかったけど」
「のこもじゃね?」
「そおか?」
「うちらはもう「のこ=オタ」って認識してるからっしょ」
「それか」
「先入観」
「おぉ。先入観なんて言葉使えるようになったんか。頭良(あたまよ)」
「ん?バカにしてる?」
なんて話していた。