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###番犬くんと優等生###
<第五章> 支配下の奴隷
“覚醒と反抗の兆し”
龍崎の部屋に監禁されて数日が経った。最初は、極度の空腹や性的快感、そして何よりも龍崎の圧倒的な支配に抗えず、春夜は自身のすべてを明け渡す「奴隷」と化していった。彼の瞳からは、かつての獰猛な光は消え、ただ龍崎に従うだけの、従順な「番犬」の光が宿っていた。
だが、人間の精神は、そう簡単に屈服するものではない。特に、春夜のように強い意志を持つ者は。
ある日のことだった。龍崎が春夜に水を飲ませながら、いつものように甘く、しかし支配的な言葉を囁いていた。
「どうです?春夜君。僕が与えるものは、すべて美味しいでしょう?あなたは僕がいなければ、もう何も得られないんですよ」
春夜は無言で水を飲み干した。その時、窓の外から、遠くで聞こえる高校生たちの賑やかな声が、ふと春夜の耳に届いた。それは、彼がかつて享受していた「日常」の音。その瞬間、春夜の脳裏に、かつての自由な自分、友人と騒ぎ、喧嘩に明け暮れていた日々が、走馬灯のように蘇った。
(……おかしい……)
喉元まで出かかった「ああ」という返事は、そこで止まった。頭を撫でる龍崎の手の感触も、心地よいはずの支配の言葉も、その瞬間に、ひどく歪んで感じられた。なぜ、自分はこんな場所で、この男にすべてを管理されている?なぜ、こんなにも情けない姿になっている?身体の奥底で疼く快感とは裏腹に、春夜の心に、燃えるような怒りが静かに灯った。
その日を境に、春夜はわずかな変化を見せ始めた。それは、龍崎に悟られないように、慎重に、そして狡猾に実行されるものだった。彼の目には、かつての野生の光が、再び宿り始めていた。
トイレに行くふりをして、春夜はトイレの窓を観察した。龍崎はいつも彼を監視しているが、排泄の際は一時的に視線を外すことがあった。その一瞬の隙に、春夜は窓のサッシの構造や、鍵の有無を確認する。窓は頑丈で、簡単には開けられそうにない。だが、小さな通気口のような窓があることに気づいた。体の小さな人間なら通り抜けられるかもしれない、というほどの隙間だが、春夜の体では不可能だ。それでも、何か道具を使えば、外せるかもしれない。春夜は、その可能性を脳裏に刻み込んだ。
龍崎がシャワーを浴びている間や、食事を用意するために部屋を離れるわずかな時間。その一瞬一瞬が、春夜にとって脱出計画を練るための貴重な時間となった。彼は手錠の構造を徹底的に調べた。龍崎が手錠をかける様子を思い出し、どこにロックがかかっているのか、どうすれば外れるのかを、何百回となくシミュレーションした。手錠は非常に頑丈で、通常の力ではびくともしない。だが、何かをこじ開ける道具があれば……。春夜の視線は、部屋の隅々を巡り、使えそうなものを探した。引き出しの隙間、本棚の装飾、ベッドの金具。どんな小さなものでも、脱出の糸口になるかもしれない。
龍崎は、春夜の些細な変化には気づいていないようだった。春夜は、これまで以上に従順な「奴隷」を演じた。食事を与えられれば感謝を述べ、性的要求があれば甘えた声で応じる。龍崎の言葉に、以前よりも素直に頷くことさえあった。その完璧な演技に、龍崎は春夜の「調教」が成功したと確信し、満足げな笑みを浮かべていた。
しかし、龍崎が知らない春夜の心の内では、激しい炎が燃え上がっていた。
(見てろよ、龍崎……。必ずここから出て行ってやる。そして、今度は俺が、テメェを……)
春夜の瞳の奥には、憎しみと、そしてこの状況を逆転させてやるという、冷たい決意が宿っていた。彼の身体はまだ龍崎の支配下にあるが、その精神は、自由を求めて、静かに、しかし確実に反抗の機会をうかがっていた。
最近ほんとに暑い〜_;
♡ありがとうございます!
また次回もお楽しみに!
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