「さて問題です!」
紅瞳の彼は水面に映った鯉から視線を変え「こちら」を見る。
勢いの凄い彼の行動に少し不気味さを覚える。
「読んでいるそこの貴方、貴方…程々に気になっているんじゃないでしょうかぁ?私と言う存在に」
紅瞳の方向が、少しズレる。
「では問題へ…」
彼は自分の胸へと手を当て、目を閉じる。
「「私」は誰でしょうか」
池の水面に、赤い何かが零れる。
ピチャ_____
黄色い彼の案内によって、三人の場所へと誘導された。
背中を向けた三色が目の前にいる。
自身が殺めてしまった彼らが目の前にいる事への嬉しさ。
また、それとは反対に襲ってくる罪悪感や恐怖の全てがジワジワと空間と共に心を蝕んでいく。
「連れてきたで」
黄色い彼の一言で振り返る三色。
2つずつ取り付けられている透き通るような瞳が、僕の真っ暗な姿を映し出す。
あぁ……、逃げ出したい…w
会えた事自体はとても嬉しい。
だが、反対に罪悪感に押しつぶされそうだ。
「らっだぁ」
前に立っていた黄色い彼が僕の名前を呼ぶ。
いや、本当は、本当の名前は違う。
けど、
「なに?きょーさん」
「言うこと…、あるやろ?」
月色の瞳が薄く笑みを浮かべた気がした。
その瞬間、やはり恨まれていたのだと、憎まれているのだという確信が持てた。
確信を持てたことがとても、とても嬉しく感じた。
思考とは反対に、唇が震える。
「…ごめ、なs」
「違うでしょ?ねぇ皆んな?」
顔にマスクではなく布を被せた「あの頃の」コンちゃんが言う。
背丈が戻ったその容姿は、確実に、間違いなくあの頃と同じ姿だった。
違う…?謝罪じゃなかったら何が…
「言う言葉があるでしょ?」
布の上で笑う彼の瞳。
だがその上に位置する眉毛は下がっていた。
「…無い?」
隠れるが少し見えるその眉毛から、しょうがないと笑っていたあの頃の彼が連想される。
懐かしい。
そんな感情が、自分の心に空いた大きな穴を埋めていく。
あぁ、そうか。
彼らが望んでいる言葉は…
「…おかえり?」
何が正解か。
何が間違いか。
そんな事、彼らには関係ないのに。
あぁ、「俺」は何を考えていたのだろう。
ずっと、ずっと…、嬉しさで踏み潰れてしまえば良かったのに。
フワリと浮かぶ感覚と共に、体が宙に浮かんでいるということを実感する。
突然近づく天井に驚きよりも笑いが込み上げてきた。
「…おかえりっ」
嗚咽と共に出る言葉は、
決して綺麗に聞こえる物ではなかった。
でも、いつも、
「俺が大好きな彼ら」なら…
「「「「ただいま!らっだぁ!」」」」
返事を返してくれるんだ。
コメント
5件
泣いてもいいですかね?😭😭 私は誰でしょう?お前はぐちつぼじゃないんか
『おかえり』って言葉のセンスがもう凄い。
招待…何となく、わかった気がしなくも無いけど( ; ˘-ω-) 「おかえり」と「ただいま」ってめっちゃいい言葉っすよね…😊