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「ふぁぁ…今日も…平和だな…」

そう言いながら今日の一日が始まる。

私の名前は神崎弓、今年で20歳になる。一応…男性のような見た目をしてるが女である。この見た目の理由は……まぁ…たくさんあるもんだ。

「さぁ〜てと…いつもの団子屋に行くかぁ…みたらし団子〜♪みたらし団子〜♪」

…私はまだこの頃は呑気に暮らしていた。背中の刺青なんかバレないだろうと浮かれていたからだ。でも違った…あの日、ついにバレそうになった。


いつもの団子屋によってみたらし団子を買った後、私はあまり人目につかないような場所に向かった。あまり食べる姿を見られたくないからだ。あれだ、よくある心理的なやつだ。私はあまり好まないからな…。

「んん〜!やっぱりあそこの団子屋は上手いなぁ…!いくら食べても飽きない。」

そう言いながら食べる。ちなみにあの団子屋は私の昔の親友が働いているところなんだがその親友とはまだ会えていない。というかむしろ私のほうが日時をずらしてわざと会わないようにしている。…すこし…訳ありだからだ…。

『……ん…?誰か…近づいてくる…』

不意に聞こえた足音に少し警戒する。人数は少ないが三人だ。かすかに銃が揺れる音も聞こえる。もしかして軍人なのか?仕方がない…相手するのは嫌だが平然なふりをしてなんとか乗り切るしかない。

「すまない、少しいいか?」

「どうされましたか?なにか…ありましたか?」

やはり予想通り軍人だった。でも軍人にしては珍しく少し身長の低い者と身長が少し高い二人がいた。特にこちらに敵意はない様子だ。少し…様子見だな。

「この刺青をした者を見たことがないか?」

そう言って身長の低い者がなにか布のような物を取り出して私に見せてくる。その布につけられた刺青を見て私は少し動揺してしまったと同時に警戒心を強めた。なぜならその布に彫られた刺青が私の背中に彫られた刺青と同じなのだ。やはり…こいつらも金塊狙いか…。

「いえ……見たことはないですね…。それが何かあるのですか?」

「いや、それならいい。それにしてもなぜこんな薄暗い所で歩いているんだ?」

「気分転換に違う道に行ったらこうなっただけですよ。それでは…失礼します。」

早く去ろう。こんな所にいつまでもいるとせっかく良くなった気分が台無しだ。それに変なことに巻き込まれたら嫌だからな。さ〜て、帰ったら昼寝でもするかな。

「すまないが…手荒に行かせてもらうぞ。」

「え?」

その瞬間何が起きたのかもわからないまま視界が暗くなり気絶した。


あれからどれだけ時間が経ったのだろうか…気がつくと知らない薄暗い部屋にいて椅子に座っていた。手足を動かそうとするが手は縛られ、足は椅子の足に縛られていたため動かせなかった。一人で少し混乱していると後ろのドアが開く音がした。そこから二人男性が入ってきた。一人はあのとき見た身長の低い者だったがもう一人は違った。助骨服を着て目元に火傷のような跡があり額当てをつけていた。多分あの額当ての素材はホーローだろう。いいものを使っている。そして助骨服を着た男性が私の正面に座る。

「やぁ、調子はどうかね?具合は悪くないかい?」

「あんたは誰だ?そしてここはどこなんだ?」

「ここは我々第七師団の拠点だ。そして私は第七師団に所属する鶴見篤四郎だ。階級は中尉だ。」

本当に私は運が悪い。なぜなら陸軍最強とも言われた第七師団に捕まったからだ。夢ならば今すぐにでも覚めてほしい。しかも中尉と来たら…私は本当に終わりなのかもな。

「…俺になんのようだ。道端で聞かれた刺青のことは知らないぞ。」

「それもあるが、もう一つ君に用事があるんだ。」

「なんだ?手短に済ませてくれ。早く家に帰って昼寝がしたいんだ。」

「君は…刺青人皮を持っているかい?」

「刺青人皮…?なんだそりゃ?」

「これなんだが…」

そう言ってその男が出したものは道端で聞かれたときに見せられたあの布のような物だった。私はここである一つの真実に気づいた。あの時に見た布のような物は……人皮だったのだ。つまりこいつらは私と同じく刺青を彫られた者の皮を剥いだわけだ。寒気がした…こいつらは正気の沙汰じゃねぇ。つまり私の刺青もバレてしまえば皮を剥がれてそのまま殺されちまう。そんなのはお断りだ。

「…そんなもの持ってるわけ無いだろう。持ってたのならあんたらに渡してるさ。」

「そうか…本当に持っていないのかね?」

「あぁ、本当だ。神にだって誓うぞ?」

何だこいつ…必要以上に執着してくる…。まさか…私が刺青人囚だということに気がついているのか?そうだというのであれば…いざとなればここを爆破させるか…?いや、そんなことをしたら余計目立ってしまう。

「そうか…ならば仕方がない。」

「全く…しつこいと嫌われるぞ。」

「あぁ、そうだな。君の機嫌を損ねてしまったのならばすまない。私から謝罪しよう。」

「謝罪はいい。俺は早く帰りたいだけだから。」

「ならば早めに終わらせよう。最後にもう一つ君に提案することがある。」

「提案?なんだそりゃ」

「君の父親は…神崎真太で…合ってるかな?」

「…は……?」

何だこいつ。なんで私の父親の名前を知ってんだ…?そもそもなんで私が父親の子供だということを知ってんだ?確かに第七師団に所属していたがほぼこいつとは関係が無かったぞ?急に…なんだかこいつが…恐ろしく見えてきた。

「あ…合ってるが…それがどうした…?」

「ほぉ…やはりか!どおりで目元が似ていると思った!君が彼の長男の神崎弓か!彼によく似ている」

「なっ…」

嘘だろ。こいつ私の名前さえも知っていやがった。信じられない。どんどん私の背筋が凍っていく。部屋の雰囲気が重くなっていく。逃げれない。私の逃げ道は完全に塞がれてしまった。

「そこでだ。君に提案しよう。私達に加わらないか?」

「は…?」

「君は運動神経がよく射撃にも優れていると聞いた。君の力が腐れてしまう前に私達のために使ってくれないだろうか?」

気持ち悪い。気味が悪すぎる。先程まで脅すかのような雰囲気だったのに急に優しく声をかけてきやがった。冷や汗も出てきた。目の前にいるこの男を例えるなら…死神がふさわしいだろう。この男は多分、このような手口で今までずっと他の奴らを騙してこの軍に誘っていたのだろう。でも…私は軍人になって死ぬよりかは自由に生きて死にたい。

「…断る。あんたらに協力しても私には利益がない。それに軍人の余生に未来はあるのか?私が見てきた中では職を失って大変な奴らしかいなかったぞ?」

「それを変えるために我々は動いているのだ。我々は軍資金を得てこの第七師団をのっとり、北海道を制圧する。資源開発を加速させ森を切り開き芥子を植える。そして戦争で父親を亡くした子供、働き手の息子を失った親、夫をなくした妻に安定した仕事を与える」

「…それで?」

「そしてゆくゆくは軍事政権を作る。無能な大本営のせいで無駄に失われていく戦友達をこれ以上増やさないためだ。君が先程言ったとおり戦場で命をかけて戦ったのに故郷へ帰れば放浪生活。だからこそ君の力が必要なんだ。わかってくれたかね?」

口が達者なことだ。さすがはあんな屈強な軍人を従わせるだけある。でも…私はそんなことで負けるわけがない。普通の奴らならばここで折れるだろう。私はそこら辺の奴らと一緒ではない。抵抗してやる。

「断る。」

「そうか…それならば仕方がない。月島。」

「はい。」

「ガハッッ!?」

月島という身長の低い軍人の拳が見事に私の腹にめり込んだ。その瞬間胃液が喉まで上がってきた。さすがは軍人だ。威力が半端ない。今にでも気絶してしまいそうだ。

「ガハッッ!ゲホッゲホッ!」

「君はこれでも断るというのかね?」

そう言いながら、鶴見は私の顎を少し持ち上げた。私はここで初めて自分が置かれている状況を理解した。ここで協力しないと言い続ければ何回も先程のように腹を殴られ続ける。これは一種の拷問だ。私は理解した途端体の全身の血の気が引いた。冷や汗が出まくり涙も出そうになった。それを感じ取ったのか鶴見はニヤリと口角を上げる。抵抗してやりたい。しかし今の私では力不足だ。ここは……。

「わ”かったッ…あんたらにッ…協力する…」

「君からそのことが聞けて嬉しいよ。」

死神が笑った。嗚呼…私は完全に死神の罠に落ちてしまった。鶴見は月島に嬉しそうにしながら私の縄を解くように言っていた。でもこれは一つのチャンスなのかもしれない。内側から私が第七師団を壊してしまえば鶴見の作戦は全て無駄になる。ならば…壊すしか道はない。今はその時を待とう。


ついに手に入れた。彼女をずっと待ちに待っていた。昔に会ったことはあったが幼い頃からあの才能とは…何を考えても恐ろしいものだ。

「どうして彼女だとわかったんだ?」

「緑太上等兵が見抜いたようです。」

「ほぉ…何故見抜けたのかね?」

「理由としては昔の友人だったからだそうです。」

「そうか…昔からの友人か。奇跡的な出会いもあるものだな。」

しかしここからが問題だ。如何に彼女をこちらに落とすか。彼女の性格からしてそう簡単には私達にはついてこない。私は特に警戒されている。さて…どうしたものなのか。

「月島、お前に一つ任務を任せる。」

「任務ですか、それは一体なんですか?」

「…彼女と信頼を築け。それが任務だ。」

「……つまり、こちら側に引き込むと。」

「そういう事だ。お前ならばできるだろう。他の者たちにもこのことは言っておく。くれぐれも…警戒心を持たれるなよ。」

彼女とて今は父親を亡くしたダメージが多くあんな性格になってしまったのだろう。ならば我々が優しく接してやれば嫌でも彼女は私達を信頼するであろう。これからが大変だ。


あれから私は軍服を着せられ部屋が与えられた。窓はあるが簡単に出られそうにはない。下の方に数人待ち構えているからだ。ここまでやられているとさすがの私でも無理だな。一応身体能力が高いため屋根にでも登れるんだが…目立ちすぎて無理だ。夜中でも多分見回りが来るだろうから無理だ。これからつまらない日常が続くのか…。その時部屋の扉がノックされる。

「…誰だ?」

「失礼する。」

「あぁ…さっきの…えっと…」

「月島だ。呼び方は好きにしてくれて構わない。」

「あぁ、月島か。えっと…あんたの階級は?」

「軍曹だ。」

「軍曹か、うちの父親が世話になりましたね。」

「…先程は…すまなかった。」

「え…あ…き、気にしやんな。上からん命令なんじゃっで仕方がなかやろうで…。」(翻訳、上からの命令なんだから仕方がないでしょうから)

「…」

「あっ…」

しまった…焦ったのと同様で地元の方弁が出てしまった。実は私の地元は鹿児島県で今でも中々癖が抜けなくてたまにこうして出てしまうのだ。

「あなた…鹿児島県出身なのですか?」

「は…はい…すんもはん…なかなか…こう…治らなくて…」

「それなら丁度いい。あなたと同じく鹿児島出身の方がいますよ。」

「ほ、本当じゃしか!?一体だいなんや?」(ほ、本当ですか!?一体誰なんです?)

「今から連れてきますよ。ただ…」

「ただ?」

「その人は私の上官です。失礼の無いようにお願いします。」

「わかりました…。」

この月島の上官…。とても厳しくとても強いやつなんだろう。さて…相手の気分を損ねないように最低限気をつけるか…。そして一人の男性が入ってくる。確かに凛々しいお顔だ。まだ若い。肌も少し焦げていてよほど外にいたのだろう。雰囲気からもやはり上の位のものだと感じる。そして…どこか薩摩を感じられるような強気な性格を感じる。

「お前が神崎弓か。」

「は…はい…。貴方様は?」

「私は第七師団所属の鯉登音之進だ。」

「鯉登…確か…海軍将校の息子さん…?」

「そうだ。よく知っているな。」

「えぇ…昔に聞いたことがありますから…。それで貴方様は鹿児島出身とお聞きしましたが…。」

「じゃっど。おいはかごんま出身じゃ。」(そうだ。俺は鹿児島出身だ。)

「…!」

本物みたいだ。どこかのエセ弁ではない。いやはや…ここで出会うとは…しかも私が昔少し憧れていた海軍将校の息子さんだとは…。嬉しいのか嬉しくないのか微妙な所だな。

「奇遇じゃなあ。あたいもかごんま出身じゃっど。中々かごんま出身ん方とは出会えんでお会い出来ただけでん嬉しか。」(奇遇ですね。私も鹿児島出身なんですよ。中々鹿児島出身の方とは出会えないのでお会い出来ただけでも嬉しいです。)

「こちらこそ嬉しか。そいにしてん…男装をしちょっごつ見ゆっどん。わいはおなごなんか?」(こちらこそ嬉しい。それにしても…男装をしているように見えるが。お前は女なのか?)

「……まぁ…そうですね…」

「ないごて男装をしちょっど?せんでんよかとじゃなかとか?」(何故男装をしているんだ?しなくてもいいんじゃないのか?)

「まぁ…色々とあっど。気にしやんな。」(まぁ…色々とあるんですよ。気にしないでください。)

そうして長々と鹿児島弁で話したあとなんだかんだ仲良くなった。むしろあちらの方から仲良くなろうと言ってきたのだ。まぁ…高い位の者に気に入られるのはいい事だ。いざとなった時に庇ってもらえるからな。そうして私の一日はドタバタして終わった。


次の日、私は通常と同じように5時に起床した。が…。やはりもう見張りの者たちはいた。多分朝から起きてるかもしくは交代で起きてるのだろうな。よほど私を逃したくないのだろう。さて…私はどうしたものか…外に出ることも許可されてないため暇でしかない。そしてまたドアがノックされる

「軍曹か、」

「ん、もう起きてたのか。」

「えぇ、まぁ…ずっと早起きだったのでね。」

「そうか。…」

「…?どうしたんです?」

「これを、渡したくてな。いらないならいい。」

「これ…あの団子屋のみたらし団子…!」

月島が渡してきたのは私のお気に入りのみたらし団子だった。しかもちょうどいい数の3本だ。意外とやるな…。

「ありがとうございます…!」

「喜んでもらえたのなら何よりだ。俺は部屋の外にいるから何かあったら声をかけてくれ。」

流石に離れてはくれないか…。でもまぁ…部屋の中でずっと監視されるよりかはマシだ。全く…こんな日常が続くなんて…。でも団子はうまい。流石だ。

「あの…」

「ん?なんだ?」

「ごちそうさまでした。ありがとうございます。」

ここで礼を言わないほど私も外道ではない。ちゃんと笑顔で言わないとな。どうせこの軍曹とも長い付き合いになりそうだから関係とかはなんとかしとかないとな。

「…そうか、」

「…」

この軍曹…ちゃんと微笑むんだ…。でも、普段は絶対そんな顔をしないんだろうな…。さて…ある程度信頼を大きくしたあと…どうやって逃げるか考えなければならないな…。明日は色々とありそうだし。明日にでも何かハプニングが起きて逃げれるような状況を作り出せれればなぁ…。


次の日私はいつものように起きた。しかし誰も来なかったため少し試しに廊下に出てみた。…広いな。それにしても…何かあったのだろうか。廊下が空っぽだ。まぁ…一つは予想図いた。それは外で少し爆発音がしたからだ。何かしらのテロリストが爆発させたかそれとも……昔に一緒に行動していた奴らが動き始めたか、それだけだろう。

「それにしても…意外と私の部屋ってきれいだったんだな…。まぁ…掃除してないから汚く見えるだろうけど。」

こういうところも私を引き込むためのポイントなのかもしれない。よくわからないけどな。でも…月島と鯉登とは仲良くなれた。私自身も少し仲良くなったと自覚してるぐらいだ、…二人がこの第七師団にいなければ私はずっと彼らの側にいたんだけどな。…すまないな…。


あの後一人の軍人がつれて来られた。こっそり聞いた話だがそのつれて来られたのがあの不死身の杉元だったのだ。最初は私も耳を疑ったあの不死身の杉元がこの第七師団にいたという事が判明したのだ。でも私は同時にチャンスが来たと確定した。なぜなら杉元はこのあと捕虜として違う部屋に連れて行かれ情報を聞き出されるであろう。それならば私が看守役として近くにいて、隙を見て部屋に入り杉元を開放して自分もそこに加われば一緒に逃げられるという事だ。早速その作戦を実行しようとするがあの二階堂兄弟が邪魔だ…。早くなんとかなってくれないかなぁ〜…。

そして案の定杉元と揉め合いになり二階堂達は止められ部屋から出される。そして杉元を縛り直して歩いてきた月島が私に近づいてきた。

「弓、危険だということは十分承知している。でも俺も手が離せない。杉元の監視を頼めるか?」

「任せてください。私も役に立ちたかったところです。」

「…!すまないな。くれぐれも何かあったらすぐに大声で私を呼べ。すぐに駆けつける。」

「わかりました。任せてください。」

なんて運がいいんだ、まさか月島から直々に任されるなんて。しかも相当信頼が深いのか月島の保証付きだ。まぁ…そんなことはさておき部屋に入るか。

「……」

「…おとなしくしといてくれよ…。」

分かってたことだ。警戒されるなんて当たり前だ。でもいざ無言で圧をかけられると怖いものは怖いな…。まぁ…多分何かしらが窓から来るであろうから窓のやつから見えないように暗いところで眠ったふりしとくか…。

そして予想通り誰かが窓から侵入してきた。…鉄格子をどうやってすり抜けたんだ…?化物か?まぁ…そんなことはいい。そろそろ逃げられる前に声をかけるか。

「…なぁ、そこのお二人さん。」

「…!」

「やべっ…!」

「安心してくれ、何もしない。銃を捨てろというのならば捨てるし渡せと言うなら渡す。服も脱げと言うなら脱ぐぞ。」

「何が目的だ」

「…あんたらに協力したいのさ。」

「協力?」

「あぁ、私はな無理やりここ第七師団に入隊させられたんだよ。親がここに所属しててそれで私の才能が優れていたからだろうけどな。でも脅されて入ったからな…不満が爆発しそうなんだ。だからこそあんたらに協力したいのさ。無茶苦茶にしてやりたいんだ。あいつらの計画すべてをな。」

「ど…どうするんだよ…杉元…」

「白石、お前はどうする、」

「…俺は…あいつに協力するさ。」

「なら…俺も協力する」

「ありがとう。恩に着るよ。そうだ、白石といったな?お前はこれを持っておけ。予備の軍服だけどな。」

「おっ、サンキュー」

「逃げるときに活躍するだろう。……!二階堂達が来た…!」

「まじかよっ…!」

「あんたはそこに隠れておきな。杉元は…大丈夫だろう?」

「あぁ、いける。」

「…健闘を祈っとくよ。」

その後私はドアの外で待ってた二階堂達に交代しろと言われ交代した。さぁ…これからが楽しい楽しい時間だ。何かあったら多分杉元は二階堂と殺し合いとなって重症をおって病院に行くだろう。そこがチャンスだ。この松明に火をつけて部屋に放り込めばすぐに燃え上がる。…駄目だ。楽しみすぎて口角が自然と上がってしまう。

「ッ…ハハッ…楽しみだなぁ…燃えていく姿が。」


そして数分後、案の定あばれまわったのか大変な騒ぎになっている。そして今杉元が運ばれていった。さぁ…終わらせよう。もう飽きたんだ。規律に守られた世界は。私が手を離し地面に松明が落ちた瞬間、一気に燃え始めた。私はすかさず現場に今来たかのような演技をして余計慌てさせる。

「大変だッ!!火事が起きたぞ!!」

「なんだって…!?」

「急げッ!!刺青人皮を早く持ち出せ!!」

いやぁ〜…物事がうまく行くというのはなんとも気持ちの良いものだ。先程まで平然としていた兵士たちが慌てて動き始めた。まるで敵が近くに来たときに逃げる虫のように。なんとも面白い光景だ。踏み潰せることなら踏み潰してやりたいぐらいだ。でもそんなことをしたら余計に目立ってしまうし。何より手慣れた私を見ればもしかしたら…私のことをよく知っていたものであれば死刑囚だということがバレてしまう。まぁ…大人しく逃げよう。変に捕まったら嫌だからな。

逃げる途中に白石が刺青人皮を探しているのが見えたが…私は既にここにはもう刺青人皮はないと考えている。なぜかって?あの死神がまるで服を着るように人皮を着ていやがったからだよ。私は見たんだ。一瞬だけなんだけどな…。お、もう人が集まったのか…早いなぁ…。全くあいつらはなんであんなに規律に従えれるのやら。まぁ…そんなことはどうでもいい。早くここからずらかって…

「軍曹殿!大変です!神崎上等兵が見当たりません!!」

「なんだとッ…!?誰もみてないのか!?」

あ〜…バレちゃったか…。早いなぁ…もう少しそっとしといてくれよ…。こういう時だけ環境把握がよくなるのが人なんだろうなぁ…。ちなみに今は屋根の上にいる。月明かりで見つかってしまうと思ったんだが運良く煙で月が隠れているため見つかる心配はない。あいつらは気にしなくていいんだから早く合流しないと…。

「今すぐに探せ!!絶対に探し出せ!!」

「はっ!!」

「弓ッ!弓ッ!!どこにいるんだ!!返事をしてくれ!!頼む…!!」

……なんでだよ…。なんで足が動かないんだよ…。なんであいつの声を聞くと足がすくむんだよ…。意味がわからねぇよ…。なんだ…この感情…。まさか…罪悪感か…?馬鹿馬鹿しい。なんでこんな感情を持たなきゃいけねぇんだよ。もう『あの時』に捨てただろうが。…これだから…私は人との友好関係を深めたくなかったんだよ…。でもまぁ…最後くらい手紙を送ってやるか。別れの挨拶のな。

「ん…?紙飛行機…?」

『Посмотрите вверх, сержант Цукишима.』(翻訳上を見てみなよ、月島軍曹)

「ロシア語…!?誰がこんな…ッ!!?」

「…さようなら、軍曹。」

「待てッ!!待ってくれッ!!!」

もう待たない。もう無理なんだ。規律に守られた世界なんて私はもう懲り懲りなんだ。じゃあな。狂った軍人共よ。


あれから私は走って小樽の街を出た。外は何もない、ただ自然が広がっている。こんな景色久しぶりだ。いやはや…やっぱり自然はいいね。さてと…あいつらはどこだろうか…?

「お〜い!杉元〜!白石〜!どこだ〜?」

「こっちだ〜!」

「そこか!」

やはり広いと見えないな。というかあれは…「クチャ」か、(クチャ…アイヌ語で狩小屋、仮小屋と言う)なんであいつら知ってるんだ…?誰か詳しいやつがいるのか…?まぁ…いいか。そう思いながら私はクチャへと近づき中に入る

「?こいつは誰だ?」

「紹介するよ、この人は…」

「待ってくれ…君……アシリパさん…?」

「…!?な、なんで私の名前を知ってるんだ…!?」

「…!本当にアシリパさんなんだね…!会えて嬉しいよ…!」

「アシリパさん…えっと…知り合い…?」

「いや…私の記憶には…」

「えっと…あ、これならわかるかな?」

そう言って私は服の中にしまっておいたマキリ(小刀)を取り出してアシリパに見せる

「まさか…お前は…!あの時の…!」

「ようやく思い出してくれたんだね…良かったぁ…。あ、自己紹介がまだだったね、俺の名前は神崎弓、よろしくな。」

「神崎弓…いい名前だな。私の名前はアシリパだ。そしてこっちが…」

「俺は杉元佐一だ。」

「俺は脱獄王、白石由竹様だ!」

「なるほど、個性豊かだなぁ…」

「あれっ俺脱獄王だよ…?驚かないの…?」

「それぐらい普通でしょう?」

「アレぇ〜…?」

「な〜んて、冗談ですよ、でもまさか…協力したお二人が不死身と脱獄王だったとは…俺はとんでもないものに協力しちまったなぁ…」

「ほら、弓、鍋食うか?まだ卵があったはずだ。」

「あいよ、」

「ありがとう。久々に鍋なんて食べるなぁ…」

「ん〜…ヒンナヒンナ、」

「おや杉元さん、よく知ってますね…」

「アシリパさんが教えてくれたんだ。ヒンナっていうのは感謝の言葉だろ?」

「そうですよ、ふふっ…ん〜!ヒンナヒンナ!やっぱり鍋は美味しいなぁ〜!」

こうしてここから私の奇妙で危険な旅が始まった。もう後戻りはできない。そんなこともうとっくの昔に知っている。私はただ進み続けるのみだ。母親も父親もいない、だからこそ私は心置きなく前にすすめる。それに…この三人といればなんだか地獄に落ちるのも怖くない気がする、どうしてもそう思うのだ。だから私はついていくことに決めた。覚悟はもうできている。さぁ、冒険の始まりだ。

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