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琴寧
38
#織田信長
常陸之介寛浩
173
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ーーーーー
~駿河・今川屋敷~
小笠原様と村上様との会談を終えた方円は、再び父の元へ帰って来ていた。
「うむ……帰ったか、方円」
「はい……」
父上は、私を見つめながら、わずかに眉を寄せる。
(はて……? 娘の気配が違うような……)
(いや、たしかに娘の気配なのだが……???)
「話は、既に終わりました」
私は、静かに口を開く。
「“元に戻す”ことを、始めてまいりましょう」
「前も聞いたが……元に戻すとは……。」
父上が尋ねる。
「簡単なことです」
私は、槍を撫で微笑みながら答えた。
「あの男が奪った全てを、小笠原様と村上様にお返しするのです。」
「だが……それだけでは、勝てぬのでは?」
「ご心配なく……」
私は、静かに首を横に振る。
「“協力者”によって、既に動き出しております」
そして、わずかに目を細めた。
「兄上は、卑の手を用いました」
静かに言う。
「ならば――」
………
「どのような手を使おうと、文句は言えませんわね。」
「……っ、おい、包円!」
父の声が荒れる。
だが、私は振り返らない。
「なに、問題はございません」
歩みを止めず、続ける。
「先程も言いましたが……」
「すでに、動き出しておりますので。」
肩越しに、わずかに笑う。
「まもなく、小笠原領は取り返せるでしょう」
一礼。
「では、失礼いたします。父上」
「……包円……!」
父の声は、もう届かない。
ーーーーーーー
???
正蛇の囁きが、夢の中で響いている。
「いいぞ! いいぞ!」
「それで良い……それでよい」
「正しさを求めよ!!!」
「我らこそが、“正しさ”」
「我らの動きこそが、“正義”なのだ」
「正しくないものは滅びろ!!」
「決して、あの男は逃がさぬ!!!」
「さあ!!! 今話している記憶も、“供物”として捧げよ!!」
「そうすれば、決してお前の計画が、あの男共に気づかれぬようにしてやろう!!」
「“協力者”も死なぬよう、守ってやろう!!」
ーーーーーーー
~小笠原領???~
「……ふむ」
腕を組み、周囲を見渡す。
「これは驚いた」
小笠原長時 が、低く笑う。
「このわしが――」
「ここまで領民に認められていたとはな」
集う兵。
ざわめく声。
そのすべてが、一つの流れを作っている。
「幾度も敗れたこの身のために」
「ここまで集まってくれるとは」
ゆっくりと、顔を上げる。
「包円殿」
小さく頷く。
「…… ”希望” を、与えてくださった」
「この恩――必ずやお返しいたしますぞ!」
「 ” 希望” 、ですか」
心の内で、そっと繰り返す。
ふふふ。
「ええ」
静かに微笑む。
「その通りにございますとも」
一歩、踏み出す。
「さあ――正しく戻しましょう」
「長時殿」
(⌒ - ⌒)
「――皆の者!」
小笠原様の声が、響く。
「反撃じゃ!!」