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無陀野との会話を終え、鳴海や鬼國隊メンバーの元へとやってきた皇后崎。
その場にいる全員に対し、彼は覚悟を決めて言葉を発する。
「聞いてくれ!このままじゃ人質の乗った飛行船は落雷で墜落しちまう!」
「何か方法があるのか?」
「ある!お前らの大将の…風の力で飛行船を移動させる」
皇后崎の案に、鬼國隊の面々は目を見開いた。
ついさっきまで死闘を繰り広げ、命からがら脱出してきたのだ。
鳴海の治療がなければ、いつ死んでもおかしくない状態である。
そんな自分たちのリーダーに向かって何を言っているんだと、仲間たちは反対する。
だがそんな中で鳴海だけは、皇后崎の言葉を実現できるよう必死に手を動かしていた。
皇后崎と鬼國隊メンバーがやり取りを続ける中、優秀な援護部隊は等々力と向かい合う。
輸血をしながら、致命傷となっている内臓の損傷を治療していると、不意に患者の意識が覚醒した。
「……鳴海…?」
「颯ちゃん…!良かった」
「天使かと、思ったぞ…」
「馬鹿言ってるならまだ大丈夫そだね。虹の橋渡るのは少し待ってよね」
「うむ…そう、だな」
「颯ちゃん…俺のお願い聞いてくれる?」
「?」
「颯ちゃんの力貸してほしい」
「何を言うかと思えば…そんなの、いくらでも貸すに決まってるだろ…!だが、1人では無理だ…傍にいてくれるか?」
「もちろん!必ず守るよ」
「よし…やるぞ……今すぐやるぞぉぉぉぉ!」
鳴海の返事に微笑んだ等々力は、死にかけているとは思えないような声量で叫びながらガバッと体を起こした。
突然の大声に驚きながらも、鳴海はふらついている彼を慌てて支える。
リーダーの復活に喜んだ鬼國隊メンバーだったが、やはりこれ以上動くのは心配なようで…
「大将…!無理したら…」
「ここまで運んでくれてありがとう。お前らは皆凄い。俺の自慢の仲間だ。 そんなお前らは!ここで引き下がる軟弱者に付いてきたのか!?違うだろ!」
「回復は俺の部下が担当するから安心して!」
「乙原ぁ!限界まで俺の血を抜け!大将ぶっ倒れても、輸血できるようになぁ!」
「うちも」
「あーもう!なら俺は着陸した時に備えて、上で待機しとるわ!」
「まったく…お前は毎回先陣切って無茶しやがる…」
「すまんな」
「いや…それでこそ俺らの大将だよ…」
「フッ…」
「鳴海の力がすごいことは、俺が身をもって知ってる。俺らの大将のこと、任せたぞ」
「はい!」
強い眼差しを向けてくる鳴海の頭をポンと撫でると、鳥飼もまた動き始める。
彼を見送った鳴海は、1つ大きく息を吐いて今一度気合いを入れる。
そして、意識を失わないよう大声で皇后崎と会話をしている等々力の元へと駆け寄った。
鳴海が傍で待機する中、等々力は自身の力を発動する。
飛行船に向けて発生させた竜巻を操ると、その巨体を無事に森の中へと着陸させた。
普段であれば何てことのない作業だが、今の彼にとってはそうはいかない。
ほんの数分の発動だったにも関わらず、等々力は胸に手をあてながら苦しそうに呼吸をしていた。
「おい!大丈夫か!?」
「絶好調だ!」
「あと一機降ろせば終わりだ!」
「等々力さん、行けますか…?」
「あぁ!」
心配そうに顔を覗き込んでくる薬師に、そう元気よく言葉を返す等々力だったが、体はその実、言うことを聞いてくれなくて…
“すまん、少しだけ…”と言いながら、体を預けるように薬師の肩に頭を乗せた。
そんな彼の背中をさすりながら、僅かな時間ではあるが自身の血を使って輸血を施す薬師。
と、その時…!
もう1つの飛行船に特大の雷が直撃した。
当然の如くコントロールを失った船は、地上に向けて急降下していく。
「マズイ!堕ちる!おい!何とか落下を防いで下に…」
「やっている…!しかし…今の俺では浮力を失った飛行船を浮かせることは難しい…ゲホッ…」
「それってつまり…堕ちるしかないってことか…?」
「どうすればいい!?指示をくれ!」
「飛行船がもう少し小さかったらいいのに…」
ふらつく等々力を支える鳴海の呟きに刺激され、皇后崎の脳内が1つの案をはじき出す。
大きな飛行船を浮かせることは難しい。であれば、小さいものなら可能なのではないか。
「人質の入った檻は浮かせられるか!?」
「!? それならなんとかなるが…それがなんだ!?」
「人質の檻だけ外に落として救出する!」
皇后崎の作戦はこうだ。
対象の飛行船には自分たちと一緒に来た、娘を助けたい父親が乗っている。
その彼に乙原の能力で指示を出し、檻を外に落とさせた後、等々力の力で救助という流れだ。
鳥飼も加わって、皇后崎たちが作戦の準備を整えている間に、鳴海は再び大技への準備を行う。
本音を言えば血触解放して飛行船ごと包み込みたいが、残念なことにそんな時間はない。
今の指示を聞いて今するべきことは落ちてくる雷を避けること。
「鳴海!上に指示が飛んだ!もうすぐ檻が落ちてくる!」
「分かった!希星!」
「はぁーぃ!」
「鳴海…俺はいつでも、行けるぞ…!」
「颯ちゃん…ちゃんと治療ができなくてごめんね」
「何で謝るんだ?鳴海がいるから、俺は今皆の役に立ててる。ありがとう。もう少しだけ、俺に力をくれ」
「もち!雷は気にせず救助優先して!」
鳴海の手を借りて立ち上がった等々力は、落ちてくる檻を風で受け止め、安全な場所へと落とす。
2つ、3つ…と檻は順調に回収されていった。
そしていよいよ最後の1人、檻を落とし続けた父親を残すだけとなった。
だがそこへまた巨大な雷が直撃する。
空中に放り出された彼を助ける力は、最早等々力には残っていなかった。
「おい!何とかあいつを…!」
「颯ちゃん!」「大将!」
「(もうこれ以上は…)隊長」
「…うん、これ以上はダメ。隊長命令」
意識を失い倒れた等々力を診るなり、鳴海はそう断言した。
自由落下する男性を成す術なく見つめていた一同の目に、1台のバイクが映る。
その血蝕解放の持ち主を知っている鳴海は、パッと笑顔の花が咲く。
「あいつ…ずいぶん洒落た登場じゃねぇか…!」
「すごい!ナイスタイミング…!」
崖の上には、バイクに跨り、小脇に男性を抱えた矢颪の姿があった。
人質救出がひと段落し、全員がホッと胸を撫で下ろす。
男性と共に矢颪がバイクで到着し、その後すぐにデータ回収のために動いていた遊摺部も合流した。
残すはロケットのような研究施設に乗っている一ノ瀬だけ。
と、そのロケットから突如火の手が上がる。
中にいた桃の隊員たちが次々と脱出する中、その機体は真っ直ぐに研究所へと落下していった。
避難のため無陀野が崖の上に登るための坂を血で造り出すと、動ける者は自分で、動けぬ者は抱えられた状態で上を目指す。
そんな様子を後方で見守っていた無陀野は、1人動こうとしない人物を発見する。
「鳴海」
「…」
「鳴海!」
「! あ、無人くん…!」
「(相変わらずすごい集中力だな)一旦ストップだ。避難するぞ」
「…うん」
等々力が倒れてからずっと、部下に指示を飛ばし本人は雷が落ちる度に能力を使って下にいる仲間を守っていた鳴海。
この騒がしい環境でも、無陀野に声をかけられるまで周囲の状況に気づかないぐらい、本業中の彼は凄まじい集中力を見せるのだ。
百目鬼に背負われ運ばれて行く等々力を、鳴海は静かに見つめていた。
「俺がもっと早ければ良かったんだけど…」
「今自分にできることを全力でやったんだろ?」
「それは、もちろん…!」
「ならいい。それより…顔色が悪いな」
「え?そう?あ…なんか目眩が…」
「鳴海!!」
「(参ったなぁ…あの毒遅効性だったかぁ)」
口から泡を吹いて倒れた鳴海を無陀野は受け止めた。
軽々と鳴海を横抱きにすると、白目を向いて気絶している鳴海に構わず無陀野は猛スピードで坂を駆け上がった。
上に着くと、彼は鳴海を木の根元に寝かせると同時に薬師がやって来た。
「この人無理してまで雷回避に徹してたみたいですぅ…」
薬師の見解では遅効性ではあるが寝ていれば治るということなのでしばらく寝てもらうことに。
「(寝顔を見るのは2回目か。あの時と変わらない、年相応の顔だな)」
今までの緊張感あるものとは違い、どこか幼さの残るその表情。
無陀野は誰にも気づかれないよう優しく頬に触れると、”お疲れ” と小さく声をかけるのだった。