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コメント
4件
楽しみィ
また神作作ってるぅ!!!タイトルがいっつも神なんよ!どっから出てくるんだ……
プロローグ:焦点の合わない夏休み
若井side
夏休み初日だというのに、俺の心は妙に落ち着かなかった。
部室の窓から差し込む真夏の光は、埃っぽい空間を明るく照らしていたけれど、俺の視界はどこか薄暗いままだった。
手にしているのは、愛用のフィルムカメラ。
ずっしりした重さが、逆に俺の焦燥感を強調しているようだった。
「さて、どうしたもんか…」
写真部の夏休みの課題は、自由。ただ「何か撮ってこい」とだけ部長は言った。
例年通りなら、風景、ポートレート、スナップなどテーマを絞って取り組むのが普通だ。
だが、今の俺にはそのテーマが見つからない。
風景を撮れば、誰かの真似のように平凡になる気がした。
ストリートスナップは、今の気分じゃない。呆然のシャッターを切りたい衝動はあるのに、いざファインダーを覗くと、目の前の景色がただの記号にしか見えないのだ。
人からは多分、「クールで真面目な写真部のやつ」と見られているだろう。
確かに、技術には自信があるし、写真に対する情熱も持っているつもりだ。
けれど、この夏、俺が進路を決めるための大きな一歩を踏み出すべき時期だと考えると、急に撮りたいものがすべて「虚ろ」に見えてきてしまった。
椅子にもたれかかり、天井を見上げた。ぼんやりと霞む蛍光灯の光が、まるで先の見えない俺の将来みたいで、ため息が出そうになる。
その時、部室の扉が、外の眩しい光を背負って勢いよく開いた。
「わ、若井ー!いたいた!」
現れたのは、藤澤涼架だった。俺とはクラスは違うが、なぜかよく俺の周りをうろついている。いつも上の空で、掴みどころのない、ふわふわした雰囲気のやつだ。
俺とは正反対で、深く物事を考えなさそうな天然の空気を纏っている。
「なんだ、涼架か。急にでかい声出すなよ。俺は忙しいんだ」
俺は少し冷たく突き放すように言った。涼架の暢気さが、今の俺の焦燥感を刺激したからだ。
涼架は俺の言葉に全く動じることなく、いつものようにふにゃっと笑った。
「ごめんごめん!でも、若井にすっごい良いお知らせがあるんだよ!」
そう言って、涼架は部室に入ってくるなり、俺の目の前に汗で少し湿った顔を近づけた。太陽の匂いがする。
次回予告
[予期せぬ誘い]
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