なんとか心理学の言うところによると、この世には“人の行動を裏付ける原因”なんてのは存在しないらしい。どうしてそうなったかなんて理由や原因には本当は全く意味がなくて、大切なのは目的だけ。人はみんな自分が“こうしたい”と思う目的のために、もっともらしい原因を後付けするだけなんだって。
「…で、何が言いたいの」
目黒は目を丸くして困ったような顔で可愛らしく首を傾げた。並んでうつ伏せに寝転がったベッドの上、頬杖をついてこちらを見ている彼の、ふっくらした唇に思わず目がいく。ああ、キスが、したい。一瞬そんなことを考えてから、気を取り直して目黒の瞳を覗き込む。
「だから、めめは自分のせいなんて思わないでいいからね」
そう。責任なんて、感じてほしくない。熱を分け合ったのは、俺がしたかったから、なんだから。目黒の瞳が、唇が、手のひらが、俺を必死で求めてきたからでは決してないのだから。
「俺がしたかったから、しただけだから」
好きだよって甘い声で言われて、いい気になって、そのまま流されるみたいに身体を開いて、気持ちよくなったわけじゃないのだから。俺が、目黒に抱かれることを選んだのだから。自分の行動のイニシアチブは、いつだって自分自身で握っていたかった。
「でもさ、阿部ちゃん…」
言いながら、少しなにか考えた仕草のあと、目黒がチラリと俺の目を見つめた。
「あなたのせいでこうなったんだから、責任とってよ! って言われるのも、俺は結構、良いと思うんだけどね」
「……っ、」
まさか、彼からそんな言葉が出てくるなんて。目を丸くするのは、今度は俺の番だった。
目黒は照れたように笑ってから、歌うような口ぶりでまた「好きだよ阿部ちゃん」と、何度目かの告白を口にした。
「ほんと…ああ、もう…っ」
腕の間に顔を埋め、シーツに頬を押し付けて、急速に上がった熱をどうにか静めようとする。
本当は、色々考えてたんだ。らしくないけど、少しばかり不安にもなった。抱かれたら最後、幻滅されるんじゃないかって。だって、どう転んだって俺は男だから。やっぱり無理だった、って、言われたらどうしようかって。そうなったら耐えられないと思った。だから、俺がしたかったから抱いてもらったんだって。もしもこれっきりだったとしても、いい思いができたって、そう思えたら良いと思って…。
「ほんと、めめにはかなわない…」
腕の間から、そっと目黒を見上げる。視線の先には、相変わらず、かっこよく微笑む顔面国宝さま。
「だからさ、言ってよ、阿部ちゃん」
「………」
ここぞとばかりに勝ち気な眼差しで俺の顔を覗き込んでくるのは、絶対わかってやってるんだ、この目黒蓮という男は。
俺は唇を尖らせてしばらく黙ったあと、さっきの自分の欲望を叶えるべく、顔を上げて、すぐ目の前にある目黒のふっくら柔らかい唇を奪ってやった。
「じゃあ、責任とって幸せにしてね、めめ」
コメント
3件
ほんとにめめあべっていい… 慎重になっちゃうあべちゃんとそれを包み込むめめの感じが…好きです🖤💚
いつだって、主様の文章は色っぽい…
傷つかないように理由付けと逃げ道を用意しまくってる阿部ちゃんと、真っ直ぐなめめ。責任とってもらった後もなんやかんや相性いいんだろうなぁと思ってしまいます😊