落とし所がわからなくなってしまった。
⛄️のお友達の彼が登場します。解像度低いけど許してください。
世間的に見た三十代がどんなものかわからないけれど、変化は確実に訪れているのだけはわかっていた。老いをというか変化を否定するわけじゃなくて、たとえば胃もたれしたりとか、疲れが取れにくかったりと、十年前はあまりなかった影響が身体に出ているのは確かだ。
元貴と若井とは、三つしか離れていない。三つしか、と捉えるか、三つも、と捉えるかはともかくとして、やっぱ二十代だからそんな元気なの? と思うことが最近増えてきた。
いちばんそれを感じるのは、二人と愛し合った翌日だ。
とにかく疲れが取れない。身体のあちこち痛いし、重だるい感じがずっと抜けない。それに反して二人はなんかイキイキしているわけですよ。
これは年齢のせいなんだろうかと思い悩んだ結果、僕と同い年で歌番組での共演をきっかけに仲良くしてくれている、阿部亮平くんに相談に乗ってもらった。
亮平くんには二人との関係を打ち明けているし、受け入れてくれてもいる。もちろん信用できる人たちにしか言っていないけれど、元貴と共演した菊池さんや二宮さんなど、某アイドル事務所の方々は知っている人が多い。
むしろ、あれで付き合ってない方がこわいし信じられない、とまで言われるから、ありがたい話である。
数日前、そんなにお高くないけれど個室で静かな居酒屋さんで亮平くんと乾杯し、適度にお酒を入れた頃に率直に切り出した。
赤裸々に語るのは恥ずかしさもあったけど、そうも言っていられないくらいには悩んでいた。
真面目な顔で真剣に相談に乗ってくれた亮平くんは、少し考えた後、
「それって、単純に回数が多いだけじゃないの?」
と答えた。
回数、と、繰り返して、ここ最近の回数を思い浮かべる。
ありがたいことに忙しくさせてもらっているから、週に一回あるかないかだ。
「そんなことないと思うけどなぁ……」
「だって、二人一緒に相手にするんでしょ? 大森くんと若井くんは一回ずつかもしれないけど、涼架くんは最低でも二回やることになるよね? 一回出すのって五十メートル走を全力疾走したくらいの疲労感らしいよ」
「そうなの!?」
衝撃の事実だった。さすが頭いいだけあって、いろんなことを知っているなぁ。
元貴も若井も僕を気持ち良くしようとしてくれるから、元貴達に比べて僕は達する回数が多い。下手したら三倍近い回数かもしれない。
そりゃぁ疲れるわけだと思わず納得する僕に、亮平くんは目を細めた。
「でも、贅沢な悩みで安心した」
「ぜいたく?」
「うん。愛されすぎて困ってます、って話でしょ?」
亮平くんがやわらかく微笑む。
愛されすぎ……ってなんか恥ずかしいけど、確かにそうなのかもしれない。
そうかもしれないけど、しんどいのもまた確かで。
微妙な顔をする僕に亮平くんは苦笑する。
「素直に減らしてってお願いしたら? それか一人ずつにしてもらうとか」
「あー……それはそれで問題が起こると言いますか……」
「起こるんだ」
ふは、と笑って、亮平くんはひとくちお酒を飲んだ。他人事だと思って……。
問題がね、起こるんですよこれが。問題というか、障害というか。
僕らの中で一番忙しいのは当然元貴だから、時間を合わせようとすると絶対的に元貴との予定が合わない。
そうすると不公平だよね、と元貴が真顔で言った。
決して僕らが暇だってわけじゃないんだけど、若井のレギュラー番組と元貴単独の仕事以外だと、大体三人でのお仕事になるから、結局は三人で、と言う流れになる。僕もたまに一人でお仕事するけど、圧倒的に少ないから。
以前、若井とは予定が合わせやすかったのと、若井が我慢できません、とごねるから、仕方ない元貴抜きでってなったことがある。
一応伝えておこうと元貴にいうと、怒るでも拗ねるでもなく、ただほろほろと涙を流した。そして、静かに頬を濡らしたまま、やだ……と消えそうな声で言った。
元貴があまりに儚くて僕は固まった。
若井にとって元貴も特別だから、ふわりと笑って、わかった、って元貴を抱き締めた。
ありがと、と泣きながら言う元貴に、しかたないやつだな、って頭を撫でてあげる姿は愛おしい光景だった。
素晴らしい友情物語を見せてもらった。
そんなわけで、三人で愛し合うって言うのが僕らの定番になっている。
「じゃあ、出す回数を減らす? とか?」
「どうやって?」
「ちょっと調べてみよう」
その後亮平くんと二人でスマホを使って色々検索し、これだ! って方法を見つけて、二人に減らしてってお願いした後帰ってもらって、今夜はそれを試してみようと思っていたんだけど。
元貴と若井が泊まるっていうから寝室に用意してあるそれの出番は、今日じゃないみたいだ。
水を吹き出してむせる元貴と、飲み込むのに失敗したらしく咳き込む若井に大丈夫? と問い掛ける。
涙目になった二人が苦しそうに僕を見る。
そんな変なこと言ったかな?
「な、なんで? なんで急にそんなこと言うの?」
「何か気に入らないことあった? なおすから教えて?」
さっきまで不機嫌だったのに、なんでそんなに焦ってんのよ元貴。
若井もなんでそんな不安そうにきいてくるの?
別に僕怒ってるわけじゃないんだけど。困ってはいるけど。
「しんどいんだよね、単純に。回数多いせいじゃないかって言われてさ、そうかもなーって思って」
ランニングしているから体力には自信があったのに、その自信さえ無くなりそうだ。
はぁ、と溜息を吐く。これが歳ってやつかなぁとは口にしない。悲しくなるから。
「……は?」
空気をゆらりとふるわせた低い声に顔を上げると、二人の目が真っ直ぐに僕を見ていた。
温度を感じさせない眼差しに、びくりと肩が揺れた。
「……え、なに……?」
あまりの真剣さにびっくりして、声が上擦ってしまった。
「誰に言われたの? それ」
にっこりと笑った元貴に訊かれ、本能が名前を言ってはいけないと告げる。
「ぇ、ぁ、と、友だち……」
「……へーぇ、そういう相談する友達がいるんだ。知らなかったわ」
意味ありげに呟いて食事を再開する元貴と、無言でぱくぱくとご飯を口に放り込む若井。
「友だちくらいいるからね、俺にも」
ムッとして反論して、同じようにご飯を食べる。
夜のあれこれを話してしまったのは申し訳ないけれど、悩んでいたのだってもとはと言えば二人のせいだ。
「そういえばさ、なんで今日泊まるの嫌がったの?」
食べ終えた若井がごちそうさまを告げ、ゴミをまとめながら思い出したように訊いてきた。
素直に言えるわけもないから、回答に困る。あと別に嫌がってないからね?
「な、なんとなく」
「なんとなく、ねぇ……。涼ちゃんさ、嘘が下手なの自覚した方がいいよ」
「へ?」
ゴミを買ってきたときの袋に入れて、若井が愉快そうに笑う。
「ねぇ、何を隠してんの? お風呂場? ベッド?」
「っ」
「……ベッドか」
すっと立ち上がった若井が真っ直ぐに寝室へと向かう。
え、ちょっと待って待って待って!
箱から出したっけ? 出してないっけ!?
慌てて追いかけようとしたら元貴にすごい力で腕を掴まれる。
「俺たちの間に隠し事はなし、でしょ?」
その笑顔こわすぎるんですけど!
自分でも何書いているのか分からなくなってきている。
コメント
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何を隠してるんだ藤澤さん... 泣く程2人でやってたら嫌なんですね。愛が伝わってきました 続き、楽しみにしてます😆
☃️の💚くんと💛ちゃん、めちゃ好きな絡みなので、嬉しすぎます〜🤤 結末がまだと聞くと、なんだか私もソワソワ。笑 どんな結末でも🫶
なんか…❤️さんが泣くほど1人ずつがイヤだったなんて😱 変なリクエストして❤️さんごめんなさーい🤣 それはさておき、続きめちゃくちゃ気になります🤭