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それは、本当に突然だった。
買い出しから帰った、ほんの数分後。
玄関の向こうで、ノックの音が響いた。
こんな時間に誰かが来るはずがない。
すみれと私は、目を合わせたまま固まった。
「……開けないで」
「……わかってる」
けれど、ノックは止まなかった。
何度も、何度も、静かに、しかし確実に。
そのあと、管理人の声が聞こえた。
「すみません、この部屋、確認させてもらえますか?」
そして、すぐ後に、
知らない大人の声が混じった。
――警察です。
――お話、伺えますか。
その瞬間、
すみれが、私の手をぐっと握った。
「いやだ……いやだ、行かないで、絶対に」
「離れないで、私、外の世界に戻れない……」
私も返す言葉を持たなかった。