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#おにロリ
もな
182
リシェ
27
羽海汐遠
16,054
ノベル試し書きです。一話読み切り。
1950年代頃をイメージして書いております。
おにロリです。(カップリングではない)
書きたいところまで書けなかったので、解説作って「こうしたかった」とか話すかもしれません
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私が10、11歳のころの話です。何十年前のことでしょうか。
その日、私はそろばん教室から家に帰っていました。
もうすぐ、誕生日になります。ですが
私は夕日に照らされながら、辺りが田んぼしかない、いつも通りで、つまらないあぜ道を歩いていました。
そんな道に、一人の人が。
煙草を吸いながらこちらのほうへと歩いてくる。男の人か区別がしずらい、というのが本心です。
身長も低いですし、髪もそこそこ長い。
ですが、骨格的に男なんだろうと見当がつきました。
私は正直、驚きました。
こんな道に、私以外で来る人がいるのだな、と。
その人は煙草をぽいっ、と捨てて、足で踏みつぶす。
その過程をじっ、とみていると、あちらのほうから声をかけてきたのです。
「魅せもんじゃねえぞ」
「わかってます」
魅せ物ではないことなど、わかりきってはいたのですが、ここらへんで煙草を踏みつぶして、恨まれても仕方ない。そう心の隅で思っておりました。
芥がたんぼに入ると、何かと大変なのです。
「じゃあおめえはなんで見てんだよ」
と言われますと、罰当たりな人だなと思って、としか言いようがなくなってしまいます。
それも理解した上での発言なのでしょうか、今の私にも、よくわかりません。
「だんまりか、まあいい。俺は餓鬼なんぞに興味はねえからな」
そう言って、その人は私とは逆方向に歩いていきました。
そっちの道は、人が多くなる。
きっとこの人も、その人混みに溶けて行ってしまうのだろうと。
私とは、ほど遠い人だったのかもしれません。
ですが、この時の少しの会話に、運命を感じた私がいました。
実際、この後、この人にいろいろ教えてもらえたりしましたし、その感は、間違ってはいなかったのかもしれません。
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あれから、三日ほどたったある日のことです。
その日もそろばん教室があり、そこから帰っていました。
今日は私の誕生日ですが、そのころ、私に欲しいものなど、勿論ありません。
お菓子を駄菓子屋さんで買えないほどの時代ではありませんし、けえきも着々と全国に広まってきた時代ですから、お菓子を買ってもらって、けえきを家族全員、机で囲って食べるというのが普通でしょう。
私はそこまでけえきが好きではありませんでしたし(くりいむが重くて苦手でした)、誕生日にお菓子を買ってもらうというほど、菓子が好きではありませんでした。学校で食べる、くじらの竜田揚げのほうが好きだったのですから。
私にとってお菓子は、空腹を紛らわす救済措置でしかなかったのです。
当時、本当に欲しかったのは、形あるものではなかったのかもしれません。
それを、あの男は、くれたのでした。
いつものあぜ道で、夕日に照らされていると、一昨日の男を見つけます。
その男は、昨日とは違い、地面に座り、煙草ではなく、随分と使い古されたスケッチブックに絵の具で何かを描きながら、田んぼを見たり、描いたり、と目線は忙しそうでした。
それを私は、数分ほど眺めておりました。
ですが、数分ともなれば、その人も気づくようで。
「どうした、一昨日の餓鬼だよな」
「なにしてるのかなと思って」
正直に答えると、「ふーん、つまんねえ」とでも言いたそうな顔をした後、すぐにさっきの作業へと戻ってしまいました。
男はもうそこに私がいないかのように、手元の作業に集中し始めました。
私はそれも気にせず、彼が描いているその絵をのぞき込んでみました。
じわっ。
紙に絵の具が染み込んでいきます。
他の色と混ざりそうで混ざらなくて、かといってその色は最初に置いてあった色の中に自然と同化していく。
夕日に照らされて黄金に輝くあぜ道。田んぼの水の反射。
色彩が、そのころの私にとっては、衝撃的でした。それでいて、その幻想的な色彩に、私は目を奪われ、惹かれたのです。
「……綺麗」
思わず思ったことを小さく口にすると、彼の筆を動かす動きが止まりました。
男は私のほうを見ずに、ははっと小さく鼻で笑い、左手で持っていた絵の具の色を見せてきました。
「黄色も勿論有るが、そんな綺麗じゃねえよ」
そのパレットの色は、私に衝撃を与えてくれました。黄色や赤、そして最初に目に入る、黒。
黒といっても、青らしい黒もあれば、赤らしい黒、いろんな黒がパレットにちりばめられていました。
そのパレットの色は、お世辞にも綺麗とは言えず。
「なんで、この色から綺麗な絵が出来るの」
私はそう、問いていたのでした。
パレットの色と絵に見える色とでは、価値が違うよう、というより、明らかに同じ色なのですが、見える色が違うように見える、そんな気がしたのです。
「じゃあ聞くが、太陽は何色だ?田んぼは何色だ?」
「太陽は赤。田んぼは緑と茶色」
私は、学校で教わったことをそのまま言いました。授業では、太陽はこの色で、田んぼはこの色で。そんなことを教わった記憶がありました。
そう素直に言うと、男はふん、と鼻で笑い、また筆を持ち、パレットの絵の具に筆を浸しました。
「よく見てみろ。夕日に照らされた水面は、本当に緑か? 泥の茶色か? 影の中には青もあれば、紫もある。お前が綺麗だと言ったあの黄金色はな、パレットの汚ねえ黒や赤が混ざり合って、初めて眩しく見えるんだよ。お前の目で、そこにある『光』を見ろ」
その言葉にひかれ、私はもう一回風景を見ました。
いつもと変わらないあぜ道。
ですが、男に言われた通り、よく見ると、茶色、緑、赤といった色だけではなく、深く沈み込むような濃い紫色の影、田んぼの水に反射し、燃えるように光るオレンジの夕日。
学校のクレヨンにはない、名前のついない色が、そこには無限に広がっていたのです。
「光……」
ぽつりとつぶやいたその言葉。それを気にしようともせず、彼はスケッチブックを閉じ、絵の具のパレットも閉じ、その場に立ちました。
帰ろうとしている。その時の私でも、十分にわかる動作です。
「ま、待って!!」
「ああ?なんか言いたいことでもあんのか」
大声で呼び止めても、別に何も気にしない様子で、こちらを見ずにそう答える。
風が突き抜けて、私の髪を揺らした。彼の長い髪も一緒に揺れて、同じことを風にされていた。
「なまえ、は?」
コメント
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読み終えたわ…。夕日に照らされたあぜ道、煙草を踏みつける男の人の不器用さと、パレットの“汚い色”から生まれる美しさを教えるシーン、すごく刺さった。誕生日に「形のないもの」をもらう話、いいな。続きが気になるけど、この一話だけでも胸に残る空気感があった。作者さん、ありがとう!