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ひとしきりお姉さんの柔らかさといい匂いを堪能した俺は、現実世界へと戻ってきていた。

「そうなんですね…」

「はい…弟の学費を稼ぐ為に…」

聞けばこのお姉さんは、弟の学費を払う為にこのオークションを運営しているグループに身売りしたようだ。

両親を早くに亡くし、町の食堂で働いて弟を養っていた。

しかし、弟にある才能が発見された。

「人より頭の良い弟は王都の学費が高い学校へ。ですがウチにはそんなお金は……」

「そこでお姉さんは弟さんの夢を叶える為に身売りを…」

「はぃ…」

な、なんて良い人なんや……

美人は性格もいいのか……

いや、それはないな。このお姉さんが良いだけだ。

俺は美人で悪魔を知っているからな!

「…いくらですか?」

「えっ!?まさか…セイ様…ダメですっ!」

「言ってみてください。言うのはタダですから」

俺は出来るだけ柔らかい表情を意識して伝える。

「はぃ…金貨150枚です」

くっ…ギリギリ出せる…ギリギリだが……

ジャラッ

「これを」

「だ、ダメです!そんな…」

「お姉さんを助けられるなら安いものです」

俺は金貨150枚が入った袋をお姉さんに握らせた。

「さあ。自由になってきてください」

「はいっ!必ずお返しします!」

そう言うと、お姉さんは立ち上がり俺のほっぺに……





「セイ様でございますね?」

俺は魂が抜けていた。

だって可愛い狐耳のナイスバディのお姉さんにチューされたんだぜ?

「は…はぃ。私はセイです」

「?…商品引き渡しの準備が整いました。残金も同時に返却なされますか?」

「はい…」

心ここに在らずだ。

「では、こちらが商品と残金です。お確かめください」

テーブルに置かれた魔法の鞄とオークションの預かり金の残高を受け取り、会場を後にする。




VIP席の利用者と落札者は防犯上の理由から一般参加者と出口が違う。

係の者に案内されながら、明かりに照らされた通路を歩いていく。

すると、前方に見覚えのある人がいた。

お姉さんだったらどれだけ嬉しかったか……

「おいっ!貴様っ!わしの魔法の鞄を横取りしおってからに!今すぐ差し出せば許してやらんこともないぞ!」

デブがブヒブヒ喚いているが生憎とこっちは人間だ。

流石の月の神様も豚の声は翻訳してくれない。

「ブヒブヒうるせぇな。豚小屋に帰れっ!」

「な、なぁあ!?貴様ぁあ!!死んだぞ!!」

お姉さんが待っていてくれているかもと期待したら豚だったので、機嫌が悪くなってつい口も悪くなってしまった。

心の声が漏れたとも言う。

「なぁ。豚が五月蝿いが、どうすればいい?」

「は、はい。オークションでは落とした方が正当な持ち主です。言いがかりでしょう」

もはや言葉を取り繕えない。狐耳のお姉さん……

「顔を覚えたからな!!朝日が拝めないと知れ!!」

豚は豚小屋へ帰った。

…まぁ通路の先に行ったんだけど。

「飼い主はちゃんとリードしとけよな…」

「ぷっ」

係の人は笑いを堪えられなかったようだ。






宿に帰った俺はお姉さんが来ることを期待して待っていた。

「態々宿を聞いたんだ。必ずきてくれるさ…」

夕食後、待ちに待った来客の報せを宿の人がもたらした。

「セイ様。お客様が…お越しです」

何故か言い淀む従業員だが……

ははぁん。

さてはお姉さんのグラマラスで可愛い姿に俺の客で間違いないか不安なんだな?

「わかった。下に降りるよ」

「…はい」

従業員の態度に釈然としないながらも、俺はすぐにでも駆け出したくなる気持ちを抑えながらゆっくりと階段を降りた。



「貴様がセイか?」


階段を降りた俺に声を掛けてきたのはお姉さんではなく、フルプレートアーマーに身を包んだ騎士だ。

「そうだが?あんたは?」

俺はお姉さんの姿をキョロキョロと探すが、見当たらない……

「捕らえろ!」

その騎士の号令により同じような輩が10人ほど宿に雪崩れ込んできた。

「神妙にブゲェラッ!?」

ガシャン

先頭の騎士を加減した力で蹴り飛ばす。

「わ、我等ブータメン子爵家騎士団に抵抗するかっ!?」

「ブータメン…?お前らまさか…あの豚の家畜か?」

家畜の家畜とはこれ如何に?

「騎士を愚弄するとはっ!構わん!やってしまえ!」

コイツら…上司が豚って言われてることは否定しないんだな……

というか、名前に悪意有りすぎだろっ!翻訳さんの仕業だなっ!?

遂に抜剣までしたコイツらに与える慈悲はない。



瞬く間に全員のしてやった。



「こちらですっ!!」

俺が奴らを倒してから宿は静まり返っていた。

そこに誰かの声が響いた。

どうやら騒ぎを通報されたようだ。

治安がいいこって。

「動くなっ!」

宿に入ってきた兵士はどうやらこの王都の衛兵らしく、街中で同じ装いの兵士を見たことがあった。

「こ、これは…ブータメン子爵家の…何があった?」

入ってきた衛兵の隊長格と思われる男が宿の人に話を聞く。

うーん。これはまずい流れか?






俺は明かり取りの窓から月明かりが差し込む石造りの建物の中にいた。

説明しよう!

ここは衛兵詰所の牢屋だ!

「はぁ。お姉さんはこないし…豚しかこないし…」

すでに日は沈み、かなりの時間が経っている。

面倒臭いことになりそうだったから一応身分は明かしたが、どうなることやら。

その日はそのまま寝た。

転移で帰れるし、なんなら脱獄なんて簡単だけど…身分明かしちゃったし、国際問題なんて俺にはわからんし…成り行きにある程度任せることにしよう。

宿題はギリギリまでしない主義だからなっ!





翌朝、まだ日が昇って間もない時刻。

牢屋の外が騒がしくて起きた。

することないから早く寝たしな……

カッカッカッカッカッ

靴音を鳴らしながら建物の中の気配が近づいてきた。

ガチャ

「おぉ…貴方様はバーランド国王様でお間違えないでしょうか?」

入ってきたトラの体毛を持つ獣人がこちらに聞いてきた。

トラ柄って大阪のおばちゃんじゃん……

「そうだ。ここを破壊して出ても良かったが、お忍びで来ている身でな。

貴国にも迷惑がかかる故、ここで待つことにしたのだ」

良かった…どうやら商人カードから商人組合で俺の個人情報を手に入れられたようだな。

「も、申し訳ございませんっ!!直ちにお出ししなさい!」

トラさんが兵士に指示を出し、俺は無事に牢屋を出た。

まぁ面倒なのはこれからなんだけど……

トラさんって言うとあの寅さんが……

おっと。誰か来たよう……







「此度は済まなかった。余の管理が甘かった」

ここは王都王城の一室。

俺がお忍びで来ていると伝えると、盛大な歓迎はやめて王族の私室へと通された。

俺に頭こそ下げないが謝罪の言葉を述べたのはアーメッド共王国国主『ブリリアント3世』だ。

「此方こそ貴国で勝手な行動を取り申し訳ない。ここはお互い水に流さないか?」

水に流してくれないと後で聖奈さんやミランに小言をもらってしまうんだっ…頼む!

「わかった。それはそうと詳細を教えてくれぬか?」

ブリリアント国王は普通の人。

どうやら獣人が多い国であっても、人がトップで問題ないらしい。

俺は初老に差し掛かり髪に白い物が混じり出している他国の王に経緯を説明した。

「なるほどのう。報告に上がった通りである。ブータメン子爵の処分はこちらに一任してもらえるか?」

「此方としては一度殴りたくはあるが、他国でのこと。この国の法と王に任せることに異論ない」

豚殴っても仕方ないしな。

豚を殴るのは豚カツでお肉を柔らかくする時だけだな。

「北西部地方で武勇が有名なバーランド王が殴ればこの世から消えてしまうが、それでは罰を与えずに済むからこちらとしては助かりもするな。はっはっはっ」

王族ジョークはイマイチわかんねーな。

俺は聖奈さん達にバレないことに安堵しつつ、城を後にした。



どうやら今回の件のように国の中で俺が暴れることによりうみを出す効果を見込んで、他国の王を放置するという普通ではあり得ない処置を取ってくれたようだ。


まぁ俺を害することが出来るのは聖奈さんくらいだし……

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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