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前回同様
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不破目線
姫に水をかけられた俺は、水を拭くわけでもなく、ただただ黙って、残ったパスタを見つめていた。
姫の声が大きかったので、店内に響いてしまい、目立ってしまった。
周りの客はこっちをチラチラと見ながらヒソヒソと話している。
見せ物じゃねぇんだよと声を上げたかったが、そんなことする気力もなかった。
しかし、不幸中の幸いってやつか?、晴から俺が見えなくてよかった。
こんな惨めな姿見せたくないし、なにより俺が晴と社長のデートを見てたことを今バレたくない。
店を出る音がしたので振り返ると、
晴と社長が2人で店を出るのが見えた。
「そこは俺の居場所や、」
つい声が漏れる。
悲しいのか寂しいのか腹が立つのか分からない。これが嫉妬ってやつか?
とにかく家で晴を問い詰めるしかない。
水に濡れたままふらっと立ち上がり、金を払って店を後にした。
そして後ろから晴をつけることにした。
まずあいつらは服屋に行った。
社長が晴に服買うのですら許せなかったが、1番許せなかったのは、「ペアルック」とか言う、服をお揃いにするとか、俺とすらしたことない事をしやがったことだ。
「なんでや、」
ついつい声が漏れる。
そんなことも知らず晴は社長にキラキラとした綺麗な眼差しを向ける。
俺が付き合い始めた頃に見たような目。
憎しみと同時に懐かしく思えた。
心臓がバクバクする。 生きた心地がしない。
晴は俺から離れないと言う無駄な確信をしていたのがダメだったのか。
とはいえ浮気はどんな理由があってもおかしいだろ、そう思ったりもする。
心がぐちゃぐちゃになる。
そう考えてる内に晴と社長は歩き出していたので慌てて追った。
次は高そうなアクセサリーが売っているような、綺麗なお店だった。
今回はただただ社長が晴に貢ぐのかと思っていた。
社長が魅入ってるのは、晴の目と同じような、綺麗な宝石がついているネックレスだった。
社長がなにか晴に言っている。
何を言ってるかよく聞こえないが、その後に晴が顔を赤く染めたのは見逃さなかった。
「俺以外のやつに顔を赤らめるなんておかしいだろ、」
そしてあいつらはネックレスを 2つ買おうとしていた。
晴と社長は、俺が「観賞用」と「保存用」ってあのよくあるやつか?なんて馬鹿げた考えをしていたなんて知らず、
同じ、綺麗なネックレスをつけて2人で笑っていた。
晴ばっか見ていて、社長の顔はあまり見ていなかったが、すごく幸せそうで、好きな人に向けるような眼差しに見えた。
それは晴も一緒だった。
まるでカップルが見つめ合うかのような空間がすぐそこにあり、その中に俺の恋人が、他の男といる。
俺からしたら地獄の他にない。
気分が悪く、今にも吐きそうだ。
俺は耐えられずその場から離れ、外へ出た。
外は綺麗なオレンジ色が広がっていて、俺には眩しすぎた。
「もう夕方か」
誰にも届かない、独り言をぽつんと放った。
そして俺はホストクラブへと向かった。
好きでもない、強く甘い香水を纏った女に近寄られる。
その度に吐き気を催すが、仕事だからと割り切っている。
姫「湊く〜ん♡」
「ご指名ありがとうございます」
今日もそう言って作り笑顔を振り撒く
こいつもお金だと思えば、
そんな最低なことを考えるとも知らず姫達は俺に貢ぐ。
もはや笑いが込み上げてくる。
姫「聞いてよ湊ぉ〜♡」
「どうしたの可愛い姫♡」
姫「彼氏が全然構ってくれないから、喧嘩しちゃったんだよねぇ〜」
最初はぼ〜っと聞き流す予定だったが、喧嘩の話だったので興味が湧いた。
「それは大変だったね、大丈夫?」
姫「寂しさを埋めるためにホストに行ってるって何回も言ってるのに「浮気だ」って納得してくれないのー!!湊くんだったら納得してくれるよね!」
彼氏の言い分も姫の言い分も分かる
俺だったら、?
「納得するに決まってるじゃん✨」
嘘だ。納得なんてしない
晴が俺以外の男を見るなんて嫌だ。
嫌なのに、なんであいつは俺のことも考えずに、!
その後の話は覚えていない
適当に聞き流して、たまにリアクションを取っていた
気づいたら外で寝ていた。
「頭い”っだぁ”〜、」
飲みすぎてそのまま眠りについてしまってたらしい。
スマホを見ると午前3時、晴からの心配のLINEも最初の頃はあったはずがいつのまにか無くなっていった。
晴が慣れて良かったなんて甘い考えをしていた俺だったが、今ではちゃんと信用を無くしていることがはっきり分かる。
「帰るか〜、」
フラフラとした足取りで俺の大好きだった家に帰る。
そこには浮気した俺の憎くて大好きで大っ嫌いで誰よりも愛している晴が居る。
次回 最終話