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「ひ、ぃ…ぅ、あッ……」
ぐちゃぐちゃと乱暴に中をかき混ぜられる。男の爪が引っかかって、傷付いていくのが分かる。いたくて、きもちわるい。


「あれ、元貴くんのナカ濡れてきたね…感じてるの?」


ちがう、これは血が垂れてるだけ。濡れてなんかない。それでも、感じてるように思わせないと。こいつに手を出されるのは俺だけでいいんだ。男に抱きついて、媚びた声を出す。


「や、ぁ…も、ぅいいからッ……なか、いれてッ…」

「我慢できなくなっちゃったの?かわいいね」


声もだしたくなくて、必死に頷く。きもちわるい。男の声も、気配も、俺も。熱くかたくなったものが宛てがわれた。



side:wki


涼ちゃんと局内の廊下を走る。すれ違ったスタッフさん達に走らないでと声をあげられるが構っていられない。あとで謝りに行くから、今は許してほしい。一番近くのお手洗いには誰もいなかった。どこまで行ったのか、無事なのか。焦りだけが増していく。


「若井、これっ…!」

「元貴の、ネックレス……?」


人通りのない暗い廊下で、嫌なくらい光って目に付いた。廊下の先には、使われていないであろう倉庫。ここだ、ここに元貴がいる。涼ちゃんもそう思ったのか、目を合わせるとコクリと頷く。


バンッと大きな音を立てながら扉を開ける。

大粒の涙を零す元貴と、ニヤけた顔で今にも挿れようとしているプロデューサーの男。目の前が真っ赤に染まる。男に殴りかかろうと一歩踏み出したところで、涼ちゃんに止められる。


「それは元貴が望んでない」


低い低い声。涼ちゃんから出たものだと一瞬分からなかった。瞳が真っ黒で、その奥には怒りが渦巻いている。きっと、俺も同じ目をしている。

元貴と男がゆるりとこちらを見る。目を見開く元貴と、顔を醜く歪ませるプロデューサー。ああ、ほんと気持ち悪い。


「わ、かい…りょーちゃ……」

「あぁ、元貴くんのとこの…今いい所だからさ、出てってくんない?」

「大丈夫、ちゃんと元貴くんは貸してあげるからさ」


元貴を自分の所有物だと勘違いしている様子に、腸が煮えくり返る。絶望と諦めが入り交じった元貴の瞳。俺たちなら絶対そんな顔はさせない。許せない。


「何か、勘違いしてませんか?元貴は俺たちのボーカルで、指針です」

「僕たちの大事な人を傷付けるなら、容赦しません」

「だからはやく、返せ」


元貴の手を引いて、俺たちの背後に隠す。そのまま、世界から隠してしまうように俺の上着を掛けた。これ以上この男の視線に元貴を晒したくなかった。


「ふふ、守られてたのは元貴くんだったか。でもね、俺はこんな写真を持ってる」


男が取り出したのは元貴の裸体の写真。そんなもので、元貴の人生を縛ろうとしていたのか。本当にどうしようもない。ピッと高い音がして、涼ちゃんの手に隠されていた機械から音声が流れる。


『俺の人生潰しといて、無事でいられると思った?お前だろ、リークしたの』

『俺の人生パァにしといて、お前だけ日の目を浴びれると思うなよ』

『お前がどうしても無理なら、こいつらを使おうか……』


さっきまで下卑た笑いを浮かべていた男の顔に焦りが浮かぶ。元貴が使っているイヤリングに仕込まれた録音機器。俺たちの執着の証。番組収録の後にしっぽを出したのが運の尽きだ。


「取引をしましょうか。あなたの持っている写真のデータを全て消去してください。そしたら、僕らもこれを渡します」

「元貴を売るか、自身の保身をするか。賢いあなたなら分かるはずです」


悔しそうな顔を浮かべたあと、男はまた笑みを顔に貼り付ける。


「わかった。データは消す。だから、それを渡せ」

「ええ、もちろん」


男が自分の持っていた携帯から元貴の写真をひとつ残らず消去したのを確認して、涼ちゃんは録音機器を手渡す。そのまま男の腕をぐっと掴んで、耳打ちする。


「また俺たちの元貴に手出したら、この程度じゃ住みませんからね」

「こんな面倒臭い狼が控えてるやつ、こっちから願い下げだ」


歪んだ顔を隠そうともせずに男はそそくさと部屋を出ていく。もう二度と会いたくないと俺たちは息をこぼした。

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コメント

1

ユーザー

初コメ失礼します🙂‍↕️ こちょさんこちらの作品を全て拝見させて頂きました!! 内容と設定が物凄く好みで見つけれて嬉しいです🥹♥️ この物語はどこか悲痛で残酷なお話ですがそれと逆で、愛されている証やそれぞれの覚悟を感じられて大変おこがましいのですがお気に入りの作品になりました🫠🍏 引き続き更新の方を楽しみにしております!! 長々と失礼しました🙏🏻💧

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