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ここはヴェレスアンツ最深層。このリージョンの創造神であるグレッデュセントが、ここまでたどり着いた猛者を歓迎し、戦う為の場所。

しかし永年辿り着く者がおらず、だだっ広い訓練所兼居住スペースとして活用されている。

そんな場所の主は、無数の青い星が瞬く白い空を見上げ、その中でも25個ある大きく輝く赤い星のうちの1つを見て、呆然と佇んでいた。


「ああぁぁ……またあんなに暴れて……」


原因は当然、アリエッタ達の蹂躙である。グレッデュセントは正面から殴り合う真っ向勝負が大好きなのだ。力が拮抗しているほど良い。だからこそ、人が自分と張り合える程まで強くなるよう、リージョンを層に分け、ヴェレストの強さを段階的に上げている。

しかしアリエッタには人に向けた強さがあまり通じない。ヴェレストが攻撃的な女神の力を浴びればひとたまりも無いのだ。

さらに隣には同じ神であるイディアゼッター、そして異常な魔力を持ったニオもいる。戦うのが大好きな女神といえど、子供にはさすがに本気で手を出しづらく、出したとしてもイディアゼッターによって無効化されるのは目に見えている。

今回正々堂々と迫ってくる相手は、グレッデュセントが望むような『戦い』にならないことが明白な集団なのである。


「どうしよう、どうしようもないわ、どうしようもないじゃねーかっ! 謝らなくていいから帰ってくださいませえええっ!」


戦闘狂の女神は別の意味で狂い始めた。初めて立ち向かいたくない相手に出会い、諦めて去ってくれる事を心の底から願うのだった。




2層は1層と違い、岩場の多い荒野となっている。空は相変わらず渦状の雲の中心に明るい星が輝いているだけ。

特殊な環境というわけではないので、一行は変わらずのんびり歩いていた。


「ところでゼッちゃん」

「はい」

「ここの神様の事、確か『筋肉野郎』って言ってなかった?」


ネフテリアは話が違うと思い、聞いてみる事にした。


”そうなのか。野郎ではなかったな”

”めちゃくちゃ美人だった”

「……ヒトが生まれて間もない頃は男神だったんですよ」

「えぇ……」

”どういう事だ、なんで女神に?”

「ファナリア人を中心に、性別関係なく強くなり始めると、なんか殴りづらい気がするとか言って、いつの間にか性別が変わってました」

”いや動機よ”

「手段の為には手段を選ばないって事ね」

「たたかうタメの、なぐるタメにヘンタイしたのか」

”性別変わった事には驚かないの!?”


性別が変わるのは、ニオの事もあって簡単に受け入れるネフテリアとピアーニャ。ただ違うのは、生まれ変わりではなく『変態』(※形態を変えること)であるという事。


「神様って、魚なの?」

「違いますよ!」

どっごおおおおん!

「はわっ……ぁ」

ぱたり

「ついに気絶したのよ」

”慣れるどころかビビりが激しくなってるんだが”


今回の目標について話をしている間も、一行は進んでいく。進むという事は、ヴェレストに遭遇するという事でもある。つまり、手加減知らずのアリエッタ達が暴れるのだ。

ニオが魔法を放てば、殲滅と同時にニオ自身にもある意味ダメージが入る。何度かやっていれば慣れて驚かなくなるだろう……と思って好きにさせていたら、だんだん耐えられなくなっていき、とうとう気を失ってしまったのだった。

これにはネフテリアも困り顔。


(いや魔王ちゃん? どれだけ乙女に磨かれちゃったのよ……)

”繊細な娘だな”

「いやゲンドってもんがあるだろ」

”あの繊細さで、なんであんな爆発魔法使おうとするんだよ”

”せめて音の出ない魔法使えばいいのに”

「まだちっちゃいから、そんな発想すぐに浮かばないのかもね」

”誰かちゃんと戦い方教えてやれよ……”

「……ほら、危ない事はしてほしくないじゃない?」

”じゃなんでヴェレスアンツこんなリージョンに連れてきたんだよっ!”

「申し訳ございません。本来は差し入れして帰るつもりだったのですが、なんとなく流れでこうなってしまい……」

”何をどうやったら子供が3人で最深層まで向かうって話になるんだ?”

「あの子達から同時に涙目上目遣いで懇願されて、断れる大人がいると思う?」

”気持ちは滅茶苦茶分かるけど、ドヤ顔で言うことじゃないと思うわ”


ネフテリア達が視聴者達とやり取りしている間に、子守り担当?のミューゼとパフィがニオを介抱。無事目を覚ましたニオが、慌てて保護者とアリエッタに謝り倒す。


(なんで僕いま謝られたん?)


2層に入ってからヴェレストは確実に強くなっている。だが、アリエッタとニオには分からない。


「次はいっぱいいるよー」

「はいっ!」


ミューゼが指差した先にヴェレストの群れを見たアリエッタは、空中に筆を滑らせる。大きな円を描き、その中に小さなデフォルメミューゼを描いた。何度も描いているのか、秒で絵が仕上がる。

絵に触れながら嬉しそうにミューゼの魔法名を叫んだ。


「【縛蔦網あいびーうぇぶ】ー!」

ずぞぞぞぞぞっ


ミューゼの絵から無数の蔦が生えてきて、迫りくるヴェレスト達を絡めとる。

さらに、


「【水の弾あくあばれっと!】


追撃で水の弾丸を絵から打ち出した。

弾丸は隙間が無い程無数に打ち出され、ヴェレストを蔦ごと粉砕し、砕かれた破片すらも残さない。ついでに周囲の岩場も残さない。

ヴェレストが1層よりも強くなろうとも、何かされる前に消し飛ばしてしまっては、その強さの違いは全く実感できないのだ。


「やたっ!」

「アリエッタちゃんすごいすごーい!」


常日頃、ミューゼの事を見て、魔法も見せてもらっているアリエッタは、ミューゼの魔法を描写コピーしていた。少しの準備時間さえあれば、ミューゼの魔法を何倍にもして打ち出すことが出来るのだ。

ちなみに魔法の威力が高いのは、ミューゼならこれくらい出来る!という過度な信頼じょうしきの表れである。

メレイズと一緒に喜ぶアリエッタは、嬉しそうにミューゼを見る。すると、アリエッタの頬がミューゼの手に摘ままれた。


「うぃー?」

「もう。ヴェレストはいいけど、周りまで消し飛ばすのは、めっ、だよ?」

うぇっ? あうはい……」

「ご、ごめんなさい」


怒られているのが分かり、アリエッタはしゅんとする。メレイズも一緒になって謝った。


”なんだろう。やってることは可愛いけど、言ってる事は可愛くない”

”そもそも約束に「消し飛ばす」とか入れちゃうんだもんなぁ”

”ちゃんと理由通じてんのかな?”

「あ、なるほど」


ここまで同じ注意を既に3回程しているが、手段を変えて毎回地形を変えているのだ。ここでようやく、消し飛ばすの意味が分かっていないのだろうと、ネフテリアとピアーニャが気づいたのだった。

これは急いで共有しないといけないと思い、ピアーニャが2人を呼びつける。


「アリエッタ、ミューゼオラ、ちょっ──」

「ピアーニャなにー」

「うわああっ!」


呼んだと思ったら即座に抱き着かれ、ナデナデされた。


”かわいい”

”かわいい”

「かわいいね」

「ええいたすけろっ!」


ギャーギャー騒いでいる姿を見て、メレイズは暖かい気持ちになっていた。メレイズはアリエッタが幸せそうにしているのを見るのが大好きなのだ。


「うふふ。楽しそうだねアリエッタちゃん。ね、ニオちゃん」

「うん……」


同意を求められたニオは遠巻きに見ているので、アリエッタを見る目が少しだけ優しい。もし近くにいたらガチガチで声にならない返事をしたかもしれない。


「丁度いいからお昼にするのよ。何か食べたい物あるのよ?」

「わぁ」

「わたし甘いのがいい!」

「りょーかいなのよー」


メレイズとニオにキラキラした目で見られながら、パフィはアリエッタの木(仮)の葉をすりつぶした調味料と食材を取り出し、食材を操って台など使わずに料理を始めた。


”ううむ、ラスィーテ人は便利じゃのう……”

”戦えるラスィーテ人は最強だな”

”飢える心配も毒の心配もないもんね”


料理中、アリエッタはちゃんと怒られていた。ネフテリアが擬音と身振り手振りでなんとか伝えていく。


「まほう、どかーん!で、まわり、なくなるの、めっ」

「まほう、めっ?」

「ああ違うの違うの。魔法はいいの。周り消すのがめっなのよー」

「ミューゼ、めっ?」

「あたしの事はたくさん描いていいからねー」


お説教は難航中。

少しすると、パフィの料理が完成。半分ほどしか理解出来ていないまま反省中のアリエッタは、お詫びにと誠意を込めてピアーニャの世話をした。


「ちょっとまてえええ!!」

「わたしもー。よしよし」

”和むわぁ”

”幸せな光景よのう”

「オマエら、はなれろっ!」


そんないつも通りの事がありつつも、食事を終えた一行は再び3層へのポータルを目指す。

頑張って説得したので、今度こそアリエッタも手加減をするようになるはず。そんな期待を持って見たものは、メレンゲゴーレム『ヴェリーエッター』の姿だった。


「なんでこうなったああああ!!」

「うん、殲滅も破壊もしてないね」

”いやあの子なんなの!?”


からケーブルのように伸びるメレンゲに繋がった巨大な『ヴェリーエッター』は、襲い掛かってくるヴェレストを殴りつける。すると、メレンゲの中にヴェレストが埋まり、動けなくなってしまう。

このダイナミックな蹂躙劇を目の当たりにし、メレイズは大興奮で応援し、ニオは青ざめ立ち尽くしていた。


「うおーいけー! そこだー! ぱーんち!」

「あわわわわわ……」

「ぱーんち!」


説教の甲斐あって、確かにアリエッタは破壊を控えた。しかし、で大暴れするというスタイルは維持したままである。

沢山の驚愕コメントを背に、イディアゼッターは本気で頭を抱えるのだった。




一方最深層でも、グレッデュセントが膝から崩れ落ち、頭を抱え続けていた。


「もういいから強引に連れ帰ってよイディアゼッタアアアアアア!!」

からふるシーカーズ

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