私の通っていた小学校は校区が広く、住んでいる地区によって中学校区が異なるところでした。
私と親友M子も小学校は同じところに通いましたが、卒業後は別々の中学に進学することになっていました。
私の進学する中学は卒業旅行先がディズニーランドで、ディズニーランドに行ったことがなくミニーが大好きだったM子は当時からそれをとてもうらやましがっていました。
あまりM子がそれをうらやましがるので、じゃあ私が卒業旅行に行ったら大きなミニー買ってきてあげると約束しました。
中学に進学してからも私とM子の関係は続き、1、2ヵ月に一度は必ず会って遊んでいました。
けれど、中2の冬に突然、M子は帰らぬ人になりました。
インフルエンザの菌?がまねく病気だったそうです。
お葬式では、久しぶりに会う懐かしい顔がたくさんいました。
その中でM子に、さよならを言いました。
お葬式に出るのが初めてだった私は、M子のお葬式だと言うのに死人の顔を見るのが怖くてたまらず、一人では通夜も葬儀の時もM子の顔を直視できませんでした。
女友達5人でぎゅっと手をつないで、やっと勇気を出して顔を見て、さよならを言いました。
泣きながら母に手を引かれて帰った帰り道、泣きじゃくる私をなだめるために母が買ってくれたポカリの味を今でも忘れません。
これが、人生で一番泣いた日です
私は中学3年生になり、卒業旅行先である○ィズニーランドに行きました。
クラスメイトの女子は皆違う小学校の子で、同じ小学校出身の子は男子が3人だけでした。
○ィズニーランド自体はとても楽しいところで、すっかりはしゃいで楽しい時を過ごしました。
私は、ミニーのぬいぐるみを買うつもりでした。
『亡くなったM子との約束を果たさないと』
なんて使命感にとらわれていたわけではなく、ただM子におみやげを買おうくらいの軽い気持ちでした。
お土産はかさばるので、最後に買おうと女の子同士決めていました。
集合時間を決めて、皆バラバラとおみやげを買いに行きました。
そして私もおみやげを買いに行きました。
でも、夜の○ィズニーランドはふしぎなところですね。
暗闇の中を横切るパレードや○ンデレラ城を見ながら、あんなに人がたくさんいるのにまるで自分が世界中に一人のような気持ちになりました。
そんな不思議な感覚にとらわれながら、友達数人とおみやげを選びました。
そして、ぬいぐるみ売場でミ○ーを選びました。
なぜかその時、目の前が涙でいっぱいになりました。
バババババっと、約束した時の小学生だったM子の顔がよみがえりました。
事情を知らない友達が私を心配してオロオロし、店内の好奇の目から守るように私を慰めてくれました。
けれど、その友達の中にM子を知る人はいません。
M子が亡くなったことも知りません。
色々なミニーがいる中、私は選ぶ気力もなく、一番スタンダードなミ○ーの赤い水玉のぬいぐるみを買いました。
泣いた理由を、特に友達は深く聞きませんでした。
何事もなかったかのように普通に接してくれました。
『人がいっぱいで疲れたんだよね』
と、特に仲良かったSちゃんとKちゃんが外のベンチに私を座らせて、買ったばかりのおみやげのクッキーまで開けてくれました。
他の女子グループまで、泣いていた私の心配をしてくれました。
申し訳ないやら気恥ずかしいやらで、頭がぼーっとして、しばらく立てずにぐずぐずする鼻をすすりながら、ボーっとしていました。
そしてその後、顔を真赤にした私はバスの中で担任に体の不調を気遣われ、夜は担任と養護学級の先生のところで寝ることになりました。
部屋で寝ようとしていた私に、担任から○ィズニーの大きな袋を手渡されました。
『なんのこっちゃ?』
と思い、中を見るとお菓子の缶やらシールやらぬいぐるみやらなんやら入っていました。
担任の話では様子のおかしい私(一番前の担任の横の座席で寝てた)は、バスの中でクラスの噂になったらしく、ミ○ーのぬいぐるみのくだりを誰かから聞いた同じ小学校出身のSくんとNくんが、ミ○ー好きだったM子のことを思い出し、それで私が泣いたんだろうと察したんだそうです。
友達には仲の良い子へのプレゼントだと言ってあったので、その後、ミ○ーとM子を結びつけたのかもしれません。
彼らはお葬式には来ていなかったはずで、M子とも特別親しいわけじゃありませんでした。
でも、ちゃんと覚えていてくれたんですね。
それでM子を知っているSくんとNくんが自分のお土産の中からミニーの入っているものを探し、担任に私に渡しておいてほしいと頼んだのだそうです。
同じ小学校とはいえ、普段交流のないSくんとNくんが私におみやげを渡すなんて変に思ったんでしょう。
『なんで?』と担任は、二人に聞いたそうです。
そしてその後、ホテルでSくんとNくんから事情を聞いたクラスの子達が協力しあい、自分のお土産の中からミ○ーのグッズやミ○ーの入っているものを、少しずつ出して集めてくれたんだそうです。
ありがたいやらなんやらで、夜中に号泣しました。
これが、人生で二番目に泣いた時。
その後、ミ○ーのシールやら個包装のクッキー、やたらでっかいバルーンやらミ○キーの耳やらを大きな袋に入れて、別の小学校に進学した友達と3人で、M子の家にお土産として持って行きました。
あまりに多いお土産を不審に思ったM子のお母さんに質問され、こうなった経緯を話しました。
おばさんはぽろぽろ泣いて、後日うちのクラスに担任あてにジュースの差し入れをしてくれました。
あの日見ず知らずのM子のためにたくさんのミ○ーをくれた優しい中3のクラスメイト。
ミ○ーが大好きだったM子。
今でもミ○ーを見ると思いだします。
○ィズニーランドの夜の光のパレードと一緒に。
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