綺麗で整った顔立ちだった。なぜ面の下に隠しているのかもわからないほどに、見ている人を魅了する翡翠色の目。生きているかすら怪しく感じる、普段は服に隠されている真っ白な肌。一人の天使を見ているかのようだった。
しばらくすると「もうええやろ。」ともう一度布をかけなおした。こんな顔の人が戦闘狂という理由だけで顔を隠すのは惜しいなと思ったが、俺自身の事ではないため口は出せない。そしてその空気を破るかのように、ロボロさんが口を開いた。
「なに俺の顔一つで静かなっとんねんキモイ。はよ飯食おか。」
そしてロボロさんが席に座り、他の人もどんどん座っていく。実は席にもちょっとしたルールがある。基本的に誰がどこに座ろうが構わないが、絶対なのは相棒と隣である事。ここまで一緒にいるのを、俺も初めは異常だと思った。だが時間が経つにつれて理解してきた。確かに、相棒というのは常にともにいた方がいい存在であると。実際に俺が居なかったあの一瞬にロボロさんが記憶を失った。俺だけの。一緒に行動してればなんて今更後悔しても遅い事は知っている。だから今からまた信用を得ることにしたのだが、実はもう命を預けてもいいと思われていることに気付いている。ロボロさんは人間観察能力が高い。だから少し俺といるだけで信用に値する人間だと思ったのだろう。正直俺からすればロボロさんは一切分からない人だ。仲良くなったと思えば突き放されたと感じる。きっと本人はそうやって俺を見極めていたのだろう。そう考えているうちに皿が空になっていることに気が付いた。いつもならゾムさんがもっと追加してくるはずやのに、と思っているとどうやらロボロさんが守ってくれたようだ。因みにほかの人は撃沈している。心の中でロボロさんありがとうと思いつつ、さらっと食器を洗い場に持っていき優雅に食事を終える。
「なぁなぁ!結局神がサイコロを振るってどういう意味やと思う?」
ゾムさんが発した言葉にまたかとロボロさんは面倒くさそうだ。かれこれ2か月間ずっと続いている質問である。だが今回はいつもと違った。
「確かにどういう意味なのだろうな。」
とグルッペンさんが言った。多分今日がジャスト流星群の1か月前であるからだろう。そんなグルッペンさんを筆頭に皆さんが考え始めていく。なんとなく暇なので俺も考えることにした。
「神はそのままよなぁ…。」
とシャオさん。
「サイコロってなんやねん!」
といつの間にか質問モードから考えるモードに切り替わっていたゾムさんが言う。全員で悩んでいると、一人がそれっぽい事を口ずさんだ。
「どっちに転がるか分からん事やろ。普通に考えたら。」
確かに。といった表情で全員がトントンさんの方へ向く。
「じゃあなんで流星群の日にだけ?」
「そこねんなー。」
と言って考える素振りをするチーノとトントンさん。どうして流星群の日にだけなのだろうか。その疑問に答えられる人はいなかった。すると皆が相棒と話し始めたので、俺もロボロさんの方を向き話そうとする。その刹那、ロボロさんが持っていたグラスを落として頭を抱えた。どうやら頭が痛むようだった。
「ロボロさん!大丈夫ですか!」
その声に他の人も反応し、ロボロさんは医務室に連れていかれた。
「ここは何処や?」
気が付けば真っ暗な所にいた。我々軍にこんな場所は無い。かといって攫われるはずもない。じゃあいったい?そう考えていると、聞き覚えのある声がした。
「だからもう流星群にはかかわらないほうがいいって言ったのに。」
気が付けばその声はかなり近くなっていた。
「結局あんさん誰や?」
そう言っても返事は無い。
「僕はずっと言ってるよ?このままだと君は不幸になるって。どうして聞いてくれないの?」
俺は先ほどからずっと気を張っていた。相手が何処にいるかわからない。そんなの初めてだった。変に刺激すれば暴走して殺しに来るかもしれない。そんな緊張感を持っていた。すると急に視界が暗転した。しまったと思ったが、それよりも気になる事をそいつは言った。
「どうかこのまま。忘れたままで。」
目を覚ますと医務室。あの時のようだがきちんとショッピの事は覚えている。それに少し安堵を感じつつ俺は立とうとした。そこで俺は目を見開いた。立てなかった。力が入らずに、立つことが出来ずベットに倒れた。どういうことだ?と頭が混乱する。何故立てない?それだけじゃない。明らかに力が落ちている。駄目な奴だと察し俺は声を出した。
「あ、誰、か?」
こちらも弱々しく前までの面影もない。誰かが来る気配がない。諦めようとしたその時
「ロボロさん!大丈夫ですか?!」
とショッピ君が病室に入ってきた。声は聞こえていなかったはずなのにここまでやってきた。これは俗に言う相棒の勘というものなのだろうか。まぁそんなものないのだが。俺はショッピ君に目覚めたときのことを説明し、何故立てなくなったのかなど質問した。
「あー。多分ですけど、約一か月寝込んでいたからじゃないですか?ロボロさんが倒れたのが、11月の14日で今日が12月の10日。まぁそんだけ動いてなかったから体が鈍ったんちゃいます?でも少し動けば大丈夫って、さっきインカムでしんぺいさんが。」
いつの間に連絡したんや?と思いつつ、一か月も寝込んでいたことに驚愕した。確かその時は、、、。
「神はサイコロを振らない。について話してたら突然倒れましたよね。」
そうそうそれそれ!と言ったその直後、頭に激しい頭痛。頭を抱えて唸る。しばらくすると頭痛は消えていった。そしてまるで嵐の後のように俺の頭の中はスッキリしていて、何よりも、俺はショッピ君の、いや、ショッピの事を思い出していた。今まで忘れていた記憶が全て戻ってくる。俺は冷や汗をかきつつも口角を上げる。猶予はあと4日か。
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