「透子さん」
すると、またドアの外で女性の声が。
「麻弥です」
「あっ、どうぞ!」
そしてそのドアを開けて部屋に入って来る麻弥ちゃんの姿。
「うわ~透子さん素敵~!」
「麻弥ちゃんも来てくれたんだね!」
「透子さん。そのウエディングドレスやっぱりピッタリ。透子さんに似合うと思ってました」
「やっぱりって?」
「前にうちのブランドでドレスのサイズのサンプル資料集めたいからってお願いしたの覚えてません?」
実は麻弥ちゃんは今はウエディングドレスのブランドを立ち上げていて。
結婚した旦那さんがデザイナーさんで、麻弥ちゃんも自分の結婚を機にウエディングドレスに興味を持って、新たな才能を開花させた。
そして今私が新たな部署で今取り組んでいる新しいプロジェクトがブライダルメインのプロジェクトで。
それで麻弥ちゃんにもウエディングドレスをお願いすることになった。
その時に麻弥ちゃんがいろんなスタイルのウエディングドレスの資料集めをしたいからと、私やまたプロジェクトで同じになった三輪ちゃんの寸法を取ってた時が確かにあった。
私はそれなりに長身で三輪ちゃんは小柄だから、また全然違う資料として参考に出来るって言われてて、その中でいくつか出来上がったウエディングドレスを試着したのを思い出した。
確かにそのウエディングドレスを作る時、私たちが理想とするドレスも聞かれて三輪ちゃんとアイデアも伝えてた。
サンプルとは言え、出来上がったドレスを着せてもらった時、仕事とは言え、やっぱり女性として素敵なドレスを身にまとうのは素敵なことで嬉しかったな。
「これ、あの時に作ったドレスだよね?三輪ちゃんとも一緒に作ってたし、資料として作っただけかと思ってたからビックリ」
「はい。確かにうちの資料としてお二人にはお願いしたのは確かなんですけど。実はいっくんから透子さんのだけは特別に頼まれてたんです」
「えっ?樹から!?」
「ハイ。透子さんのだけ特別にこの日の為に一着作ってほしいって」
「そうなんだ・・・」
ビックリした。
まさか樹が直接お願いしていたなんて。
「ってことはそれそんなに前から樹がこの日のことを考えてお願いしてたってことだよね・・?」
「そうですよ。いっくん、すぐには結婚式挙げない理由はこういう色々な理由あったみたいですよ。いっくんってそういう特別なことを考えてくれる人なんで」
ウエディングドレスなんて特注で作ったら時間もかかるから確かにすぐには出来上がらない。
だけど、そんなに前から樹が内緒で計画してくれてたことを知って、また思いもよらないことが次々出てきて驚く。
「透子さんホントにいっくんにすごく愛されてるんだなぁってつくづく思いました。そりゃ私とは縁がないはずです(笑)でもそのおかげで私も旦那様と出会えて、こうやって今したいことが一緒に出来てる。今私はこうやってこのドレスを通じて幸せな女性たちが一番輝ける瞬間のお手伝いを出来てるというのがすごく嬉しくて。今回透子さんのこのドレスも手掛けることが出来てホントよかったです」
「麻弥ちゃん・・ありがとう・・」
麻弥ちゃんも今まで見たことないくらい今の旦那さんに出会えてこのお仕事をしてすごく綺麗で輝いていて。
仕事が充実してて同じ志を持った大切なパートナーと一緒にその夢を叶えられるのってすごく素敵だなと思った。
「いっくん。この透子さん見たら絶対ヤバいだろうな~。もうドレス作ってる時からずっと出来上がった時のこと想像してニヤケてましたもん(笑)」
「そうなんだ(笑)」
「ハイ。もうそんな時からいっくんノロケてて気持ち悪いくらいでした(笑)」
「なんか想像出来る(笑)」
樹はいつから私の知らないところで、そんな時間を過ごしていたのだろう。
こんなにも一緒にいたのに、近くにずっといたのに、知らないところで樹はこんなことをしてくれていた。
それも私の知らない気付いていないずっと何か月も前から。
私の知っている樹はどこまでなんだろう。
まだどれだけの顔を樹は隠しているのだろう。
もう随分樹のことを知ったつもりでいたけど。
でもまだまだ樹の知らないことがある気がして。
そしてそんな樹の姿を知る度に、またもっと愛しくなっていく。
「透子さん。式楽しみにしてますね。会場で待ってます」
「うん。ありがとね。麻弥ちゃん」
そして麻弥ちゃんはそう伝えて部屋を後にする。
「透子。これもREIKA社長から預かってた」
そう言って美咲がとても素敵なティアラを頭につけてくれた。
「これも透子の為にネックレスと一緒にこの日のために作ってくれたみたいだよ」
「これもすごいね・・綺麗・・」
「このティアラも綺麗になるような髪型にしたからこれでバッチリ」
お義母さんが用意してくれたティアラとネックレスで更に華やかになる。
あんなすごいブランドのデザイナーさんから特別に作ってもらったなんて、ホントになんて素敵な幸せな奇跡なんだろう。
まだ樹とも出会っていない時に、自分の心の支えになった運命的なネックレスから始まって。
いつの日かこんな素敵な日に、こんな幸せすぎる贈り物をしてもらえるなんて。
お義母さんと麻弥ちゃんからの気持ちが込めれたドレスとアクセサリーを身にまとって、すでに幸せに包まれて胸がいっぱいになる。
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