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「いや、何も」と、チーフが首を振る。
「タクシーの中でも、眠っていただけだったしな」
「……ほんとに、それだけでしたか?」と、首を傾けて問い返す。矢代チーフのことだから、私に気を回して何も言わずにいてくれているようにも思えた。
「うーん、そうだな……、酔って寝言は、言ってたかな」
「ねっ、寝言って、一体何を言って……」
まさか、とんでもないことでも口走らなかったよね……?
「うん……」と、言いよどむ彼に、ますます不安感がつのってくる。
すると彼が私をじっと見つめて、にわかに口を開いた──。
「……あなたが、好きです。と、世界で一番好き、と……」
自分で言ったことなのにも関わらず、顔がボッと一気に真っ赤になった……。