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#溺愛
花畑の入り口に、女性たちの人だかりができていた。
「嘘……あれって……」
「レオン王子殿下よ!」
「本物? まるで神話から抜け出してきたみたい……!」
レオンが軽く手を振る。たったそれだけの仕草で、割れんばかりの歓声が響いた。
「きゃあああ! レオン様ー!!」
映像魔石を構えた記者たちが、一斉に前へ出た。
「殿下!この場所について一言――」
レオンは余裕の笑みを浮かべたまま、視線を花畑へ流した。優雅な所作で、チューリップを一本、指先で摘み取った。そして、その花を掲げた。
「この花畑で愛を誓った二人は、永遠に結ばれる。――そんな伝説が、ここから始まるんだ」
パシャッ!!
魔石の光が弾け、彼の一挙手一投足が「奇跡の一枚」として刻まれていく。
「素敵……!」
「なんてロマンチックなの……!」
興奮する群衆の中から、誰かが呟いた。
「ここ、あの人気小説『紅の真実』の舞台にそっくりじゃない?」
「本当だわ! 私もあんな情熱的な恋がしてみたい……!」
レオンは人々を惹きつける視線を楽しむように、さらりと続けた。
「近いうちに、ここにホテルとレストランができるらしいね」
わざとらしく肩をすくめる。
「実は僕も、オープンしたら一番に予約しようと思ってるんだ。……君たちに先を越されちゃうかな?」
「ええっ!?」
「殿下も来るの!?」
「それなら絶対行かなきゃ! 今すぐ予約はできないの!?」
記者たちが一斉にペンを走らせる。
『王子が注目の新名所!』
『恋が叶う聖地、誕生!』
レオンは私の姿に気づくと、ウィンクしてみせた。
「宣伝なら任せて。僕は社交界で顔が利くからね。明日にはこの記事が、王都中の話題を独占するはずだよ」
(……なんて頼もしいインフルエンサーなのかしら!)
――この場所は、もうただの花畑じゃない。“恋が叶う場所”になり始めていた。
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