「あ、あかん…っ!」
つい、制止の声をあげてしまう。
パンッパンッパンッ、と一定のリズム
ホテルの一室では、水分を含んだ肌を打ち付ける音が響き渡る。
「寺家くんのここ、凄い締めつけてくるよ。」
気持ち悪い、クサい言葉を囁くな。
あの後、お約束通り俺は先輩に抱かれていた。
ほら見ろ、結局はこれが目当てやったんやろ。
「せんぱ、い、俺もう限界でっ、」
「大丈夫?一旦抜こうか?」
「はい、すんません…」
一旦ちゃうねん、もう疲れたから解放しろってこと。
分からへんのかなコイツ。
しかしそんな本心を言えるはずもなく、 先輩のモノを咥え込んでいた俺の後孔は一時の休息を与えられる。
「寺家くんて、名器だよね。」
「なにがですか?」
「分かってるくせに、才能があるってこと。」
「だから、何の…」
「抱かれる才能だよ。」
「…それって喜んでええんかな。」
「気持ち良いなら、良いじゃん。」
よく言えたものだ。
こっちは気持ちよくなんてない、ただ耐えてるだけ。
馴れてしまったから身体が快楽を拾うことがあっても、心が悦びを感じとることなんて無い。
ずっと、この先もそれは同じだ。
ふと、数時間前、食事後に角と別れた時のことを思い出す。
先輩が俺の肩を抱き、この後二件目行くから、と角の返事を聞くこともなく足早に歩き出した。
後ろを振り返った俺は、立ち尽くす角の表情がよく見えなかった。
でも、こちらをずっと見ていたのは分かった。
角、あの時のお前、どんな顔してたん?
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!