テラーノベル
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第12話「朝は、変わらず来る」
カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。
「……ん……」
らんは、ゆっくりと目を開ける。
一瞬、自分がどこにいるのか分からなくて、天井を見つめた。
(……あ、昨日……)
ライブ。
歓声。
息ができなくなった感覚。
思い出した途端、胸がきゅっとする。
「……は……」
無意識に、浅く息を吸う。
でも、昨夜ほどの苦しさはなかった。
「……生きてる……」
小さく呟くと、喉が少し震えた。
コンコン。
ドアをノックする音。
「らん、起きてる?」
なつの声だった。
「……起きてる……」
返事をすると、ドアが少しだけ開く。
「無理なら、まだ寝てていいぞ」
「……大丈夫」
そう言いながら、ベッドから起き上がる。
足に力が入るか、確かめるように床に足をつけた。
「……うん……」
立てる。
それだけで、少し安心した。
廊下に出ると、みんなが揃っていた。
「おはよ、らんらん」
みことが、いつもの調子で言う。
「……おはよ……」
声は少しかすれていたけど、ちゃんと出た。
「らんくん、顔色どう?」
こさめが、覗き込む。
「……昨日よりは……」
「なら、よし」
すちが、短く頷いた。
テーブルに座ると、コップが差し出される。
「水」
いるまの一言。
「……ありがと……」
両手で持って、ゆっくり飲む。
喉を通る感覚が、現実を連れてくる。
「……今日さ」
なつが、少しだけ声を落とす。
「何も予定入れてない」
「……え……?」
「休養日」
即答だった。
「昨日、約束しただろ」
——苦しくなったら、止める。
——無理はしない。
「……でも……」
らんは、言いかけて、止めた。
(……休んでいい、ってことか……)
「……わかった……」
そう答えると、胸の奥が少しだけ緩む。
沈黙の中、朝の音だけが流れる。
食器の触れる音、外の車の音。
——いつもと同じ朝。
でも、
残された時間を知っている朝。
「……らん」
いるまが、ふいに言った。
「今日、何したい」
「……え……」
考えたこともなかった。
「……何も……」
正直な答え。
「……何もしない、でいい」
その言葉に、みんなが小さく笑った。
「いいね、それ」
なつが、肩の力を抜く。
「今日は、“生きる日”な」
らんは、その言葉を胸の中で繰り返した。
(……生きる日……)
窓の外は、いつも通りの青空だった。
変わらない朝。
でも確かに——
昨日を越えた自分が、ここにいた。
♡150
コメント
1件
とりあえず♡500しか押せなかった自分を恨みます、 いい作品心に響きますわ。