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第13話「言葉にしなかった昼」
昼の光は、思っていたより優しかった。
宿のロビーの窓際。
らんはソファに座り、膝の上で手を組んでいた。
「……静かだね」
ぽつりと呟く。
「こういう昼、久しぶりかもな」
なつが、向かいに腰を下ろした。
他のみんなも、それぞれ近くにいる。
誰も急かさない距離。
「……らんらん」
みことが、少し迷ってから口を開く。
「昨日のあとさ……」
一拍、間を置く。
「……正直、どうだった?」
らんは、すぐに答えられなかった。
(……どう、だった……)
楽しかった。
怖かった。
苦しかった。
嬉しかった。
全部が重なって、言葉にならない。
「……っ」
喉が鳴る。
「……途中……」
息を整えながら、ゆっくり言う。
「……息、できなくて……」
一瞬、空気が止まる。
「……もう……」
視線を落とす。
「……倒れるかもって……思った……」
「……」
誰も、遮らなかった。
「……でも……」
らんは、指先をぎゅっと握る。
「……歌ってる間だけ……」
小さく、笑う。
「……忘れられた……」
「……らんくん」
こさめが、そっと声を出す。
「それ、強がり?」
「……半分」
正直に答えた。
「……半分は……本音……」
すちが、静かに頷く。
「……それでいい」
「……怖かった気持ちも……」
いるまが、低く続ける。
「……大事だ」
らんは、少しだけ顔を上げた。
「……俺さ……」
声が、震える。
「……終わりが……見えてから……」
言葉が、詰まる。
「……毎日……」
小さく息を吸う。
「……置いていくみたいで……」
「……置いてかれる、じゃなくて?」
なつが、静かに聞く。
「……うん……」
らんは、首を振った。
「……俺が……置いていく……」
その言葉に、みんなの表情が変わった。
「……何も……言えなくて……」
嗚咽が、少し混じる。
「……それが……一番……苦しかった……」
「……らんらん」
みことが、そっと近づく。
「置いてかれるよりさ」
「何も言われない方が、つらいよ」
その一言で、らんの目から涙が溢れた。
「……っ、ひ……」
声を抑えても、嗚咽が漏れる。
「……ごめ……」
「謝るなって」
なつが、すぐ言う。
「今、言ってくれてる」
「……うん……」
らんは、涙を拭った。
「……まだ……怖いけど……」
「……でも……」
顔を上げる。
「……一人で……抱えなくていいって……」
そう言って、少しだけ息を吐く。
「……思えた……」
沈黙。
でも、それは重くなかった。
「……昼飯、どうする?」
なつが、いつもの声に戻す。
「……軽めで……」
「了解」
そのやり取りに、少し笑いが混じる。
変わらない日常。
でも、確かに——
言葉にした分だけ、軽くなった昼だった。
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