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アイマスク
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ポン酢2さん、第7話読み終えたよ〜!😭💦💦 クロノアさんのトラゾーさんに対する執着、ヤバすぎて背筋ゾワゾワした…。「俺だけの神様」って言いながら、実は“堕とす”つもりだったなんて! 最初はほんわかした再会話かと思ったら、どんどん不穏な空気になってく構成が鳥肌ものだったよ…。特に「毎日毎日穢してあげれば」のとこ、怖いのに美しくて言葉失った…。らっだぁさんの警告も効いてるし、納涼祭がどうなるのか気になりすぎる!! 続きが待ちきれないよ〜🌸🔥
小さい時からずっと俺がいる神社に来てくれていた子供。
一度この街を離れてしまったけど再び戻ってきた。
随分と大人びて戻ってきたのを見た時は同一人物かと疑うほどだった。
けど、変わらない綺麗な翡翠色の少し垂れた目と柔らかい薄灰色の髪。
声は低くなってて、大人に近付いてるんだなとも思った。
笑う顔も変わってなくて、何より俺のことを覚えていてくれたことが嬉しかった。
子供を見守る大人のようだなと、人間のようなことを考えていた。
俺と彼とでは、住む世界が違う。
いつかは彼は命尽きる。
いや、命が尽きる前にここに来なくなるかもしれない。
そのことについて仕方のないことだと受け入れるしかない。
クロノアさんが俺をどう思ってるのかは分からないけど、人間界で言えば近所のお兄さん?的な存在と思ってるのかなと思う。
移り行くものを止めることは俺にもできない。
それはしてはならないことだから。
俺ももう永いこと生きてる。
いろいろな人と出会い、いろいろな人と別れてきた。
その度に深く関わるべきでないと分かっていても、人との縁を求めてしまう。
その人のその人生を見てみたいと、傲慢にも程があるような、ただの己の好奇心で彼ら彼女らとの関わりを求めているのだ。
「ねぇ、クロノアさんは飽きたりしないの」
なんとなく思ったことを呟いた。
「何が?」
「その、…俺のところに来るの」
そう言った瞬間、肌を刺すような強い視線に射抜かれる。
「……それ、トラゾーは俺に来てほしくないってこと」
「え、いやそうじゃなくて…」
猫のような瞳孔がきゅっと細くなり俺をじぃと見下ろす。
その瞳には戸惑ってる俺が映し出されていた。
「俺がトラゾーに飽きるわけない。…でも、トラゾーがもうここに来てほしくないって言うんだったら二度と来ないよ」
俺から視線を外して立ち上がるクロノアさんの制服を咄嗟に掴んだ。
どうしてそんなことをしたのかは分からない。
けどここで引き止めなきゃホントに彼は俺に二度と会いに来てくれなくなる。
それは、嫌だった。
「そう、じゃなくて…大変なのに、申し訳なくて…」
言い訳のような言葉を吐く。
こんな焦燥に駆られたことなんてないのに。
「言ったでしょ。トラゾーは俺だけの神様なんだよ。そんな神様に会いに来るのが大変なわけないじゃんか。それに頼って欲しいとも言っただろ?」
「う、ん」
「俺は俺がしたいようにしてるだけだよ。だから大変とかそんなのは絶対ない」
制服を掴んでいた手を取られる。
俺なんかよりもひんやりとしてるクロノアさんの手。
「トラゾーの方が嫌なの、俺が来るの」
「そんなわけない。…俺は嬉しいよ、忘れ去られてもいいような俺のところにいつも来てくれるんだから」
神は信仰されなくなったらその存在を保つことができずに消滅する。
俺、という存在を認識してくれてるクロノアさんがいるからカタチを保ったままでいられるのだ。
「だから、ある意味ではクロノアさんは俺にとってカミサマみたいなものなんだよ、」
「……カミサマ、俺が、トラゾーの…?」
「?、…ッぃ、」
弓道をしてるから手の力がすごく強いクロノアさんが俺の手を握ってそう呟いた。
「……〜、〜〜…」
低く掠れた声は全く聞き取ることができなかった。
「ぇ、なに、か言った…?」
「……ううん。ごめんね手、強く握っちゃって」
撫でる手つきに、刹那よくないものを感じて振り払ってしまった。
「ぁ、ごめんなさ…ッ」
「…いいよ、俺の方がごめんなさいだから」
子供の時から見ていた人間の子から、子供じみた執着のようなものを感じた。
霧散したそれは俺の気のせいだと言わんばかりに、クロノアさんは普段通りに柔和な笑みを浮かべる。
「…じゃあ、また明日来るね」
鞄を肩にかけて立ち上がるクロノアさんが鳥居をくぐって階段を降りていく。
胸を押さえてほぅと息を吐いて顔を上げる。
「今の?」
「ぅわ、…らっだぁさん、驚かさないでくださいよ」
「トラにご執心のガキって」
「ご執心って…クロノアさんのはそういうものじゃないでしょ。それにガキって…」
俺の隣に座る鬼の面を着けてたらっだぁさんがそれを外す。
「トラも今、一瞬感じ取ってただろ。あのガキのこと」
殺されるのではと思うほどの強い情念だった。
分類するには難しいような。
「人間で言う親しい人を盗られるような感情でしょう…クロノアさんが俺に対してそんなモノ持ってるわけないじゃないですか」
黒い面布を外して隣に座るらっだぁさんを見る。
「変なもの避けのために俺がつけた痕の上にあのクソガキのモンがこびりついてた」
「クソガキって……てか、やっぱそういう…俺にだって祓うことくらいできますってば」
「返り討ちに合いそうになってたくせに」
その痕を見つけたクロノアさんがらっだぁさんのつけたものを上書きするようにしてきたのだ。
流石にあれは驚いたけど。
「戯れっつてたけど、結構マジなやつだぜ?」
「クロノアさんに説明しても分からないでしょ。あなたのこと言うのも面倒くさいですし」
「トラひでぇ」
「酷くないです。お陰で気に入ってた着物も汚れちゃったんですよ」
「いいじゃん白も似合ってるし。なんか穢し甲斐あるつーの?」
もう何も言ってほしくなくてらっだぁさんの脛部分を叩く。
「変なこと言わないでください。そもそも穢すって…神同士にそんなんないでしょ」
「認識の差かぁ…純情純粋トラちゃんにゃあ分からんか」
「肩パンしましょうか?」
「あ、やめて。トラの肩パンとかガチのやつだからやめてください」
ふいとクロノアさんが降りていった階段に視線を戻す。
「(クロノアさんに限って、そんなんねぇよな…)」
外した面布を握る手が何故か震えていた。
その理由を知る為には、”人”になるしかない。
そして、その感情を知ることはできても本当の意味での理解はできない。
神は人のことを知ろうとしないから。
「なぁトラ」
「、はい?」
「気をつけろよ」
「…?、わかり、ました?」
らっだぁさんの真剣な声に頷く。
どういう意味かも分からないまま。
─────────────────
トラゾーにとって俺の存在をここまで刷り込むのに随分時間がかかってしまった。
咄嗟に掴まれた制服も、俺にとってのカミサマと言われた時も。
やっとここまで堕ちたと歓喜に満ちていた。
つい、あとちょっとと呟いてしまったけどトラゾーには聞こえていなくて安心した。
「でも足りないし。邪魔なのがいるな、やっぱ」
トラゾーにわけの分からない痕をつけた奴。
帰り際一瞬だけど認識できた存在。
俺にだけ向けられた殺気のようなもの。
「神様でいることができないなら、俺のところに堕としてあげるよトラゾー」
そうすれば離れることもないし、同じ刻を共に過ごすことができる。
怯えたように俺の手を振り払ったトラゾーも可愛いかった。
きっと”人”に堕とす時はもっと怖がって怯えて俺のこと拒絶しようとするだろうけどそうはさせない。
徹底的にあの身体に刷り込んで人として生きることの喜びを教えないと。
「いや、悦びかな」
毎日毎日穢してあげればいずれか俺にしか縋れない可哀想な神様になる。
握った手の冷たさ、それが人間のように熱を帯びるのを想像するだけで心が震える。
「俺とずっと一緒にいようね、トラゾー」
その為にも、もっと信頼を得て俺だけを信用する無知で無垢な神様にしないと。
顔を覆い隠すあの邪魔な布を剥ぎ取って、俺だけを映すようにしなければ。
「…トラゾー、」
そういえば神様の顔を見た人間って死ぬんだったっけか。
「まぁ、堕としてしまえば大丈夫か」
トラゾーで死ねるならいいけど、一緒にいられなくなるのは嫌だし。
顔を見るのは穢したあとでも充分見れる。
流れる時間が一緒になるわけだし。
未来永劫、俺のモノにできる。
「…だとしたら、納涼祭の日にしようかな」
神様を奉るのなんて建前だ。
お祭りなんて人間が騒ぎたいだけのものでしかない。
トラゾーに目が向くようで、1番目が離れる日。
その日は、本殿は誰もいなくなる。
中には何人も入ることができない禁域だ。
小さな頃から入っていたから知っている。
俺はその時から暇そうにしていたトラゾーの話し相手になっていたから。
その納涼祭の時はトラゾーは本殿から出られない。
出ることを許されていない。
だからその日は俺が来るのをトラゾーはきっと待ってるはずだ。
何も知らず、いつもみたいに面布を揺らしながら微笑んで俺を出迎える。
何をされるかも知らないで。
誰の助けも呼べない。
誰にも助けてもらえないあの中で。
神としての命を終えることも知らずに。