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植まどか
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#能力者
紅優
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「……誰ですか?」
拓海はフードを被った怪しい人物に言った。
「ただの通りすがりの旅人さ。顔色が悪いけど何かあったの?」
若い男の声だった。男も拓海の隣で同じように石畳の橋の柵に腕を乗せて川を眺め始めた。
「……なんでもない、ただ一人になりたかっただけです」
「へぇ……そんなことより、君は不思議な感じがするね」
(そんなことよりって……あんたから聞いてきたんだろ、なんかの勧誘か?)
男は拓海に更に近づき、上半身を上から下へ匂いを嗅ぎ始めた。
「ちょっ!?なにしてんの!?」
拓海は咄嗟に上半身だけ男から離す。
その時、男の顔が少し見えた。
「君、どこから来たの?」
「えっ?……えーと」
この世界のことを知らないからどこから来たなんて言えない。ありもしない答えを教科書から探し出すように必死に考えていると、また匂いを嗅がれる。
「君、別の世界から来たの?」
「……っ!?」
予想外の質問に拓海は瞬時に警戒する。
(こいつ、なんで匂い嗅いだだけで分かったんだ……!?)
「警戒しなくていいよ。別世界の人間なんて初めて会うからね。珍しいと思っただけさ」
「……何者なんですか?」
男はフードを下ろして顔を見せた。黒髪には金色のメッシュが入っていて、黒色の瞳はハイライトがなく、感情が抜け落ちたような目をしていた。
「人々は僕を”勇者”と呼ぶ」
この出会いをきっかけに、元の世界を辿るはずの運命のレールは大きく変わることになった。
「勇者……!?本当か!?」
「嘘はつかない」
「だったら!俺の世界を救ってください!今、俺の世界に魔王が来てっ世界が終わりそうなんです!だからっ元の世界戻ってっ──」
勇者ならなんとかしてくれるかもしれない。拓海は自分が焦っているとは思っていなかった。その焦りのせいで早口に、自分勝手に勇者に頼んだ。
「……悪いけど、それはできない」
「な、なんでっ……?勇者は魔王を倒すのが目的なんだろ……?」
想像とは違う結果に拓海の頭は書き換えられるように真っ白になりかける。
「君は”勇者”になるには、どうすればいいか知っているかい?」
「……勇者は誰にでもなれるのか?」
「うーん。そう言われればなれるね。”勇者”になる方法は1つ。スラム街の幼い子供になればいいのさ」
「……?」
なぜスラム街の子供になれば”勇者”になれるのか分からず、拓海は次の話しを待つ。
“勇者”を生み出すためのプログラム、そしてその施設”ホーリーエッグ”。あらゆる場所から子供を集めて”勇者”に育て上げる。そこでスラム街の子供が狙われる。拓海の前に現れた勇者もその出身だ。
“勇者”候補の子供は記憶を消され訓練されれ、国のため世界のために戦う勇者にされる。
しかし、時が経つにつれ勇者には疑問が増え続けた。 自分が誰だったのか、親はいたのか、なぜ自分はここにいるのか、これが生きるということなのか。その疑問を抱いたまま勇者は旅立つ、そして世界を知った。人々は勇者に期待し、尊敬する。この生き方も悪くないと思った。しかし気づいてしまった、これは一時的なものだと。
魔王を倒せば”勇者”としての役割は終わる。つまり自分は無価値になってしまう。期待も尊敬の眼差しも名誉も地位も、魔王を倒せばいつかはなくなってしまう。
魔王を倒した”勇者”には何も残らない。過去の人として永遠に称えられるだけ。それは生きていなければ優越感に浸ることすらできない。全て、自分には興味がなく、不必要な事だ。そして、自分が何者さえ知らずに一生を終える。
「だからそうならないために、僕は魔王を倒すわけにはいかないんだ。僕と同じ “勇者”のためにも」
「……なら、俺はどうしたらいい?どうすれば世界を救える?」
「他の勇者なら助けてくれるかもしれないけど、僕がそれを許さない。君の世界を巻き込んだのは謝るけど、もう諦めるしかないんじゃないかな?」
勇者の気持ちも理解できる。理解してるはずなのに、なぜか怒りが湧いてくる。その目、その目にはなにも映っていない。なにも見ていなかった。
「お前、他人事みたいに言ってんじゃねぇよ!」
「なら見せてよ君の世界を。本当に僕の命を人生を賭けてでも救う価値があるかどうか、天秤に賭けて見ようじゃないか」
勇者は着ているローブから美しい白く輝く剣を取り出し、その柄頭を拓海の額に押し当てた。