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「かわいい~」 今日もお気に入りの人形を愛でる。

「お嬢様は本当に人形がお好きですね」

「だって本当にかわいいんだもの」

「それは良いのですが……」

メイドは視線を私から人形に向けた。

「本当に罪な存在ですね」

「この子に罪は無いわよ」

「何を言いますか」

彼女は呆れたように言う。

「お嬢様は人形一体にお金を使いすぎです」

周りにはこの子のために私が買ったたくさんのお洋服が散らばっていた。

私はむっとして言い返す。

「自分の好きな物にお金をかけて何が悪いの?パパやママだってそうじゃない」

「確かにそうですが、お嬢様の場合あまり有意義な使い方でないと言いますか……」

「何よ!もういいわ!」

私は人形を手に立ち上がった。

「ど、どちらへ?」

「散歩よ散歩。この子を外に連れてってあげるの」

「は、はぁ……」

私は何か言いたげなメイドをそのままに、部屋を出た。


部屋に取り残された私は、溜め息を零す。

全く、お嬢様には困ったものだ。人形一つにあそこまでムキにならなくても良いじゃないか。

床に散らばった人形用の服を一着拾い上げる。よりによってどうしてこんな趣味にのめり込んでしまったのか。

これがお嬢様自身の服や靴だったら良かったのに。そう思いつつ出来心で人形の服を裏返してみる。

「あら、結構作りが良いのね」

細部まで丁寧に縫われており、思わず感心する。

「あなたも興味あるんじゃないの」

その声に思わず肩を震わせる。

「おっ、お嬢様、散歩に出掛けたのでは?」

「雨が降りそうだったから戻ってきたのよ。それで――」

お嬢様は怪しい笑みを浮かべながら近づいてくる。

「あなたはどうしてそれをじっと見てたの?」

「それはその……」

「隠さなくてもいいのよ?」

「……単に、服の作りが気になったんです」

「よく出来てるでしょう?一つ一つ手作りなのよ、それ。だから特別感があるの」

「そうなんですね」

「洋服だけじゃないわ。この子だって私自身がカスタマイズしたんだから」

「なるほど……」

自分でカスタマイズした人形。それをお嬢様が溺愛し、様々な服を買い与えるのも、今ならなんとなく理解できる気がした。

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