テラーノベル
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収録前の楽屋で、さっきから不機嫌そうにうんうんと唸っている勇斗に俺は年下組を見渡す。太智は我関せずで携帯をいじり、柔太朗と舜太は互いに目配せをしながら話しかけるかどうか悩んでいる様子。冠番組の収録前だというのに空気の悪いこと。現場に持っていくタイプではないし、悩みの種も解決できるかはわからないがひとまず話しかけてみる。
「勇斗、どうしたのさっきから」
「……ん、へ、仁人? どうした?」
「や、どうしたのはそっちな」
当の本人はハッとした様子で、唸り声をあげていたことすら気づかなかったようだ。きょろきょろ見渡せば柔太朗も舜太もこくこくと肯首し、太智も真顔で目線だけ寄越すものだから、勇斗もごめんと縮こまる。
「なんか悩んでる? 俺らでよければ聞くけど」
グループの最年長は超がつくほど真面目で仕事の隙間の休憩時間にも仕事をするワーカホリックだ。精神的に追い込まれていないといいけど。
「お前らさ、」
目を左右に彷徨わせながら、小さい声でポツポツ話し始める。
「ライブ後ってテンション上がるじゃん?」
「うん」
「高揚感えぐいじゃん?」
「うん、」
なんか、悩んでるよりもちょけるときの顔になってきた気がする。他のメンバーもそう感じ取ったのか、返事も投げやりになってきた。
「それなかなか抜けないよな?」
「うん、だから何?」
「前置き長ない?」
「はよ言えや」
チームガキガキに詰め寄られて、勇斗はちょけようとした顔を引っ込めてまた真面目モードになる。
「うん、ん、……ちょ、寄って、」
「なんで」
「いや流石にでかい声で話すことじゃないなって」
仕方ないなと言わんばかりに、楽屋の端っこにいた太智が立ち上がって勇斗と舜太の隣に腰掛ける。俺が柔太朗と勇斗の間のスペースに収まればいい感じの円陣になった。
「で?」と先を促してやると、勇斗は小さい声で続ける。
「……ぶっちゃけ、勃たない?」
「「「「は?」」」」
「いやないない、ライブ中に性欲とか湧かないやろ」
「勇ちゃん、もしかしてテレパシーで俺らとかにキスしてこようとすんのそういうアレなん?」
「うわ次のツアー中近寄らんとこ」
「てか、ファンサ手厚いのって好みの女子見つけるためとか?」
各方面からブーイングが飛ぶなか、勇斗は慌てて否定する。
「違う違う、ライブ終わり! 流石にライブ中は勃たねーよカメラあるし。じゃなくて、終わってシャワー浴びるとき、ちょい勃ってることあって……え、俺だけ?」
「あーまあ、テンション上がりきってて下がんないときってそういうのあるかもなあ」
意外にも大智がそういうことなら……と同調する。
「冷水かければ萎えるんちゃう?」
「あ〜俺やったことあるよ」
「え、柔まじ?」
柔太朗も舜太もそれに関してはあんまり否定してない。逆に俺が一気に少数派になった気がする。その空気を察してか、めざとい舜太が話を振ってくる。
「仁ちゃんは?」
「え、俺ない、全部ライブ楽しい〜に昇華してる。終わったら虚無感、で、一気に食欲にシフト」
「あ〜ラーメン食いたいってよう言ってるな」
「そ。てかみんなもよくメシ行こって言ってんじゃん、あれ話してるとき実はみんな勃ってたの?」
他の四人を汚物を見るかのような目で見渡す。これ俺間違ってないよな? と隣を見ると、柔太朗は慌てて首を横に振る。
「まって勇ちゃんと一緒にしないで、俺はほんとたまによ」
「まって柔太朗、俺が毎回盛ってるみたいに言わないで」
「え、ちゃうんか」
「ちゃうちゃう。てか本題そこじゃなくて!」
勇斗がキリッと眉を吊り上げる。チームを引っ張るエースの顔になる。
「……ありがたいことに、今色々やらせてもらえてるじゃん俺ら。だからなんつーか、嬉しいんだけど、縛られることも多くなって、溜まってんじゃないかなって思うわけ」
「……どこかで発散せなあかんってこと?」
「そう。でもそういうのって表立ってできないじゃん。だからみんなどうしてんのかなって」
「どうしてんのかって、抜けばいいんちゃうの……?」
「ん、……でもなんか上手くいかないっていうか」
舜太が子犬みたいな声で、勇斗の言いたいことを汲み上げてゆく。こういう話題はそちら側の四人に任せようと、俺は視線を楽屋の壁掛け時計へ逸らして少しだけ輪から外れていく。
「これってオカズ不足? ねえ仁人どうすればいい?」
「ええ、なんで俺?」
勇斗にはお見通しだったようで、腕を掴まれてぐいっと迫られる。
「いやでも俺も気になるわ、仁ちゃんのオカズ」
「はあ?」
気になるって何、俺はお前らの普段のオカズとか死ぬほど聞きたくないけど。なんか生々しいし。いや、そういえば俺、そういうのって最後にしたのいつ? レベルでしてない。だから素直に答える。
「……わかんない、おれそんなしないから。別にライブ後もそんなんならないし」
「まじ? しばらく抜いてへんの?」
「うん、え、おかしいのこれ」
「まあ頻度って人によるよね。俺も結構よっしー寄りだよ。スポーツしたり服見たりゲームしたりとか、趣味とかに欲も動くし」
「そうそう!」
柔太朗が助け舟を出してくれる。やっぱり気が合うのは柔太朗しかいないなとこういう時に感じる。勇斗は何故か負けじと反対意見を主張する。
「太智は違うだろ?占いで女好きって出たし性欲あるよな」
「やめーやそれ蒸し返すの!! たしかにテンション上がって半勃ちはわかるけども」
「ほら〜」
「でも普通よ? あんなん生理現象なんやから、抜くなんて作業や作業」
舜太にも太智にも良い意見を貰えず、んー、とまた唸りだす勇斗に、仕方なく話を振る。さっき少し真面目に話していたのもあって、きっと踏み込みづらい話題なんだろうな、と察してはいた。
「……勇斗はどうしたいの? 彼女とか、そういうときの都合のいい女の子作りたいってこと?」
声をひそめて聞いてみれば、勇斗は速攻で首を横に振った。
「それは違う、その子にもファンの子達にも失礼だし、今の俺には必要ない」
「じゃあもう、そういうビデオに頼るしかないんじゃないの? いっぱいあるんでしょそういうのって」
俺はどちらかというと活字派だけど、とは言わないでおく。メンバーの性事情に口出しするとか、あんまりこういうことは言いたくないなと思っていたら、案の定舜太が絡んでくる。
「……なんや仁ちゃんがAVの話するん生々しいわあ、どんなん見てるん?」
「……舜太ちょっと黙れ、俺だってこういうことはなあ」
「いや、だから、そういうのでもう興奮できなくなっちゃったんだって!」
でかい声で話すことじゃないとか言ってた奴が一番でかい声で反論し始めた。太智が面白がって揶揄いのフェーズに入る。
「じゃあ詰みじゃん」
「だから。なんかさ、欲しいのよ」
「おすすめの動画とかってこと?」
「や、たとえば、……仁ちゃんのハダカの画像とか」
「は? ……ハァ〜〜?!」
「ちょ、よっしー声でかい」
他人事だからってwwwwwwを語尾に生やしまくりながら隣の柔太朗に口を押さえつけられるが、でかくもなるだろこんなん!!細っこく骨ばった手のひらを押しのけて、必死で反論する。
「は、え、だって! おまえ今なんつった?」
「仁ちゃんのえっちな写真とか撮りたい」
「うーわ、最悪、きしょい展開きた、ばかなの? それでお前抜けんの?」
「抜ける」
「即答すな! ねえ柔太朗助けてこいつ頭おかしい」
押しのける際に触れたままだった手を握り込んで、ぶんぶん振り回す。柔太朗は最早笑いすぎて目がない。
「えー? うーんまあええんちゃう写真撮らせてあげれば」
「やばいまって悪ノリしないで、ねえ舜太、」
柔太朗じゃ話にならないと切り捨てて真顔の舜太にロックオンする。太智は俺をいじるに決まってるし。舜太は真顔のまま、俺の出したヘルプにも気づかない様子で勇斗を見つめる。
「え、勇ちゃんそれってさ……」
「うん」
「……俺も貰ってええ?」
……んん? 舜太くん???
「あ、モチいいよ」
よくないよ?????????
「まじ? じゃあ俺も欲しい」
柔太朗? 何言ってんの……????
「オッケー多数決! 収録終わったら俺ん家な。太智〜、は流石に興味ない?」
「んーまあ暇やし行くだけ行こかな、吉田さんいじれるし」
「おい!! え、待って!!!! 俺の意見は!!?!?」
𐙚 花見 ໒꒱· ゚
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#YJ
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コメント
1件
うわっ、これめっちゃ面白かったです😂 最初は真面目な悩みかと思ったら、まさかの「ライブ後の勃ち問題」から仁ちゃんの裸写真を狙う展開にwww 勇斗くんのストレートすぎる要求と、それに便乗するメンバーの悪ノリが最高でした。仁ちゃんの「俺の意見は!?」で締めるのもタイトル回収になってて、笑いが止まらなかったです。続きが気になります!