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精神世界に来ちゃった酸素ちゃんのお話、前編。
『元素(省略)は今日も平和』の後時間軸です。
酸素「う、うーーん…」
酸素「こ、ここ…………」
気がつけば、ベッドや布団すらない、何もない真っ白な空間が目の前に広がっていた。
おかしい。前日はちゃんと自室で寝たのだが。
まさか拉致?いや、あたしを拉致できるのなんて…………
…フッ素がいるか。過去に実際やられたし。
いや、だとしても拘束具の一つとしてないのは……いやフッ素ならありえる⁇?
そんなことを思案していると、唐突に目の前に扉があらわれた。
歩いてすらないのに、目の前から突然扉が現れるという不可解な現象に多少頭を抱えたが、まぁそんなこと言っていても仕方がない。
そう思って、あたしは扉を開けた。
そこには、本がぎっしりと詰まった、所謂書斎だった。
しかしその書斎は限りなく広く、左右と向こう側の通路を覗いても、書斎の終わりを表す壁も本棚もなかった。
さらに異様なのは、詰められている本たちは、すべて同じような表紙の本であったこと。
何となく気持ち悪さを感じる。しかし、あたしはなぜか、それらがどこか懐かしく思えた。
中身が気になって、適当な本を持ってみる。
なかなかの厚みがあるその本のページを捲ると、それは手書きの物語…
いや、日記であった。
しかも著者は_____酸素。
あたし、だ。
内容は水素と初めてであった時のこと。
あたしは、今いる星___地球とは別の、生命体が宿っていた星で生まれた。
生命体たちが水を欲し、それはそれは小さな、けれど美しい湖で水を掬うと、その掬われた水が一人でに宙に浮かんだ。
やがてそれはだんだん液体から気体へと成り、その気体から、人型が__
…あたしが、生まれた。
そんな内容。
懐かしい、たしかにあたしはそうやってうまれてきた。その星の住民たちに「酸素」を与え、いつもより美味しい空気を吸わせてあげることが当時のあたしの生き甲斐だった。
…まぁ、今やもうそんなことしようなんて、思えないんだけれど。
ただ、こんな日記を書いた覚えなんて、あたしにはない。
そもそもこの書斎に見覚えもなければ、そもそも人生で日記など書いた記憶がないのだ。
だから著者があたし、なんてこともおかしいのだが。
不思議に思っていると、不意にあたしが閉したはずの扉が再び開いた。
思わず振り返ってみれば……そこには、“あたし“がいた。
酸素?「…ありゃ、来ちゃったかぁ」
酸素?「はじめましてー、あたし。あたしは酸素…酸素18、って言えばわかりやすいかな」
酸素18、酸素18。頭の中の辞書を引いてみる。
あたしは天然によくいる酸素____正式にいうと酸素16だ。
名前の後につくヘンな数字は、『中性子の数』を表す。
簡単に言うと、あたしたち元素は人間とはちょっと違って…『中性子』と『陽子』と呼ばれるものがある。
陽子の数を観測すると、それが一体どの元素なのかがわかる。
中性子は質量数から陽子を引いた数だけ持ってる。…けど、中性子は陽子と違って、増えても『その元素』であることには変わりはない。
まぁ、性格というか、性質はちょっとずつ違ってくるんだけど。
酸素16「…それで。どうしたの、酸素18」
酸素「いや…どうしたも何も」
酸素「気がついたら真っ白な空間にいて。気がついたら扉がでてきて、入ったらここにきたんだけど…」
目の前にいる”あたし”は、少し考える動作をしたあと、あぁ、と声を漏らした。
酸素16「なるほどね。君はね、多分、今夢の中なんだよ」
酸素「……夢?」
酸素16「そ、夢。なんかしらの影響で、君の精神世界…自我の核心になる場所に来ちゃったんじゃないかな」
酸素16「ここ、普通君が意識して入ってこれるようなとこじゃないから驚いてたんだ。よかった」
彼女は、そう言って1度安堵のため息をつく。
どうやらここは夢の世界…あたしの精神世界、らしい。
精神世界ってこんなんなんだ、と何故か変なところで感心した。
酸素「…せっかくだし、さ。」
酸素「目が覚めるまで、居ていい?」
酸素16「…ご自由に。ここは、君の世界なんだから」
そういった彼女は、近くにあった椅子に腰をかけて、本に文字を綴り始めた。
コメント
1件
うわああ第9話、ついに読んだよ〜!!🥺✨ 酸素ちゃんが自分の精神世界に迷い込んで、しかも自分自身(酸素18)と出会うって…めっちゃエモい設定すぎる😭💕 「ここは君の世界なんだから」ってセリフ、優しさと不思議さが混ざってて胸にきた… 続きがすごく気になる!次の話も楽しみにしてるよ〜🌸💫
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