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出迎えてくれたフィーサが目覚めた理由のことでルティとシーニャは話しづらそうにしている。それもそのはずで、どうやらおれが知らない間に黙って目覚めさせたらしい。
別にそれ自体に怒るつもりも無かった。だが勝手に動いてしまったことで、自分たちが悪いことをしたのだと思い込んでいるようだ。
思い出すとルティのこぶし亭での着替えがそうだった。どこに行ってフィーサを回復させたのかまでは聞かないが、思い当たる場所は何となく分かる。
ルティが泣きじゃくっているだけで、場所が大体分かってしまった。
「アッグざばぁぁぁあ……」
「――わ、分かった。分かったから、もう泣くなって!」
結局泣きまくる展開になったので、この状態でルティの頭を撫でることになった。
撫でられたことでルティは落ち着いた。だが、シーニャの方も何とかしなければならない。
「ウウニャ……シーニャ、守った。でも破った……ウニャ」
シーニャは怪しい動きをしていたルティとミルシェを止めようとしたらしい。しかしフィーサの為にと、一緒に動いたことを悔やんでいる様子。
「ま、まぁ、シーニャもフィーサの為に協力したわけだし……よくやったな!」
「ウニャ……アック、怒ってない? シーニャ、褒められた?」
「よしよし……」
「フニャゥ~!」
シーニャのモフモフな耳と頭を撫でて、この場は何とか収まった。おれとしてもあまりモフれないだけに良かったと思うべきだろう。
しかし――。
「イスティさま!! わらわへ何か言うことがあるんじゃないの?」
「悪かったよ、ずっとほったらかして」
「それだけなの?」
フィーサに関してはおれ自身が反省しなければならなかった。彼女の言うようにどうすることも出来ずに放置していたわけで。
「まぁ、何だ……お帰り、フィーサ!」
「うんっ! しょうがないなの。許してあげるなの!」
機嫌を直してくれたのはいいが、眠っている間に片手剣を覚醒させたことはまだ黙っておこう。
「――で、アックのだんな。サンフィアは?」
全く|こいつ《ロクシュ》もそれが聞きたくて出迎えたのか。エルフ同士の結束のようだが、他にも別の想いがありそうだ。
「とある村で修行中だ」
「おいおい、聞いてねえよ! ……ん? いや、アレか? 例の幻霧の村ってとこか?」
「まぁな。エルフの下で学んでいるから安心していいぞ」
「そ、それならいいんだ」
分かりやすい男だ。だがサンフィアはしばらく帰って来れそうにないのだが、これも黙っておこう。
おれの言葉に安心したのか、ロクシュは持ち場へと戻って行った。ゲート前で立ち話をしていても意味がない――そう思って中へ進もうとすると、ミルシェが駆け寄る。
ヒューノストで話をつけてきたとみえるが。
交渉事をすっかり任せてしまっているが、それくらい頼りになる存在だ。
「アックさま。騎士たちには上手く説明してきましたわ!」
「話を聞いて青ざめていたか?」
「いいえ、その逆ですわ」
「どうしてだ?」
ガチャで出した装備のレベルはそこそこだが、彼らの強さはそこまで上がっていないはず。それなのにやる気があるとはどういうことなのか。
「アックさまがイデアベルクを取り戻してからすっかり魔物もいなくなって、退屈していると言っていました。ですので、守る理由が出来たとか」
都市を守るならいいが、魔物がいなくなって腕が落ちたんじゃないよな?
世話焼きになるが、召喚士の子供達にでも頼んでおくか。
「ふぅむ……」
「ところで、虎娘以外の小娘たちはどちらに?」
「ん? さっきまでそこにいたはずだが。ルティの行方は予想出来るが……」
シーニャはおれの言葉をずっと待っているようで、黙って立っている。しかしルティは頭を撫でた直後にいなくなり、フィーサも機嫌を良くしてどこかにいなくなった。
「――でしたら、アックさま。今のうちに行きたい所があるのですけれど、テレポートは使えます?」
「ああ、まあ……」
「どうせあのエルフが合流した時にはあたしはご一緒出来ずにここに戻ることになりますわ。その前に――」
「うーん……まぁ、いいか。シーニャもいるし、大丈夫だろ」
目覚めたてのフィーサもいなければルティもいない。相変わらず自由に動く娘たちだな。
それはそうと、おれとミルシェはそもそも一緒に動くことが少なかった。今のうちだけかもしれないし、彼女のわがままを聞いておくことにする。
フィーサがいない間に試しておきたいこともあるしな。
「シーニャ! こっちへおいで」
「ウニャッ!」
行き先が不明だが何とかなるだろう、たぶん。
「土でも風でも、どこでも構いませんわ」
「よし。それじゃあ、【土属性テレポート】を発動する!」